刷版メーカーのこだわりの「水」
<湿し水>

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コラム第49回MV

印刷しやすい魔法の湿し水はあるのか?

水とインキの反発を利用するオフセット印刷において、「水=湿し水」の正しい管理が印刷品質安定化のために非常に重要だということは、過去のコラムでもご紹介していますが、「刷版メーカーおすすめの湿し水は何?」「『これを使えば大丈夫』という湿し水を教えて!」といった素朴なご質問、ご要望をいただく機会も増えてきました。今回はその声にお応えしたいと思います。

キャラクター

まずは結論。「これを使えばオールOK」という魔法の湿し水は存在しません。今印刷している印刷機の特性やお困り事に合わせて必要な湿し水を選ぶことが、湿し水選定の悩みから解放される最短ルートになります。
「これという一品を知りたかったのに~」とちょっと肩透かしな感じになってしまったと思いますが、皆さんにとって大好物の食べ物がいろいろあるのと同じで、全ての印刷機や印刷現象にマッチする、魔法のような湿し水は残念ながら存在しないのです。
だからこそ、魔法の水はなくても、それぞれの一番好きなものを見つけていただけるよう、今日のコラムは皆さんの新しい大好物を探すためのヒントを盛り込んだ内容になっています。

富士フイルムの湿し水(左:枚葉機用「S-Z1」、右:輪転用「W-P1」)

富士フイルムの湿し水(左:枚葉機用「S-Z1」、右:輪転用「W-P1」)

富士フイルムがつくる湿し水とは?

富士フイルムはご存じのとおり、オフセット印刷で欠かせない刷版をつくっている刷版メーカーです。同時に、湿し水をつくっているメーカーでもあります。「えっ!意外!」と感じたあなたも、「知ってるよ」というあなたも、もう一つ踏み込んで知っていただきたいことが、「印刷機の特性と印刷現象のメカニズムの理解なくして、刷版の改良はできない」ということです。
富士フイルムでは、これまでスタンダードとして幅広くご愛顧いただいている「SUPERIA XP-F」をはじめ、環境対応省人化アイテムとして注目いただいている「SUPERIA Zシリーズ」の無処理プレートを開発してきました。これらのプレート開発においては、印刷機ごとに違う水上がり性や刷り込み時の水・インキバランスの安定性といった各性能にフォーカスし、「刷版」として何ができるのか、どのように改良すべきかを一貫して考え、製品という一つの形にしてきました。同時に、印刷性能を左右する湿し水にも着目し、刷版ポテンシャルを引き出すための最適な湿し水とは何かを考え続けて、一つの答えを出しました。

それは、「最適な湿し水というのは、必要性能が全体的に高いものではなく、刷版だけでなく、印刷機の組み合わせで総合点を高められるもの」ということです。
湿し水の性能を高めるとき、実際は「こちらをよくしたら、あちらが悪くなる」というシーソーゲームになってしまい、そのバランスを取り過ぎると、どちらの性能もイマイチな状態になってしまいます。逆にポジティブに考えれば、「ここは足りないけれど、あちらはズバ抜けてよい」というものも作れるということ。それが特徴を持った湿し水を生み出す極意です。
印刷機ごとに水上がり性や発生しやすい印刷現象(トラブル)に個性があるのであれば、そのよいところは印刷機に任せて、ネガティブな部分を湿し水で補っていく。印刷は、あくまで組み合わせでの総合点をどこまで高められるかが大事になります。例えば、性能D、E、Fに強みのある印刷機で、湿し水タイプ2を活用すれば、お互いの長所を生かすことで印刷性能の全体的なバランスを保ち、高めることができます。
つまりは、「湿し水の持つ個性+印刷機の持つ個性=高い印刷性能」になるということ。印刷機の持つ個性をよく理解し、この足し算を最大化していくことが重要です。

図1

それぞれの特徴を持った湿し水

図2

印刷機の特徴と湿し水の性能とで総合点を高める

各印刷性能に対する湿し水性能評価レーダーチャート

富士フイルムでは、湿し水を多彩なラインアップで展開しています。これは冒頭でお伝えしている「魔法の水」を目指してつくっているのではなく、皆さんの好みにあった一番を見つけてもらうためです。こだわりの「一品」ではなく、メニュー豊富なそれぞれ個性を持った「逸品」を提供しているレストランのようなイメージですね。
「でも、どれがいいのか分からない~」となると思いますので、まずはこれを試してみて!というものをご案内します。

( )内の%は希釈率

表1
表3
表2

最後に今回のコラムのおさらいです。

ポイント

湿し水は印刷機の特性や発生しやすいトラブルに合わせて選ぶことが大事。
どの印刷機でもマッチする魔法の水はないということ。

富士フイルムでは、皆さんのお困り事に合わせて湿し水を多彩なラインアップで展開しています。ぜひお試しいただき、自分の一番を見つけてください。

今回のコラムが、皆さんの印刷でのお困り事を解決するヒントになれば幸いです。最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!


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今さら聞けない刷版・印刷の基礎知識② 印刷機ローラーメンテナンスの重要性
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