印刷品質の安定化のために、日々の管理やメンテナンスはとても重要です。「今さら聞けない刷版・印刷の基礎知識」として、前回は湿し水の正しい管理方法をご紹介しました。今回は印刷機ローラーに焦点を当て、メンテナンスのポイントを解説します。
水を絞っているはずなのに……
水を絞って印刷することはオフセット印刷の基本ですが、次のような経験はありませんか?
印刷機ローラーメンテナンスの失敗&NG例
・過乳化して印刷トラブルに発展した。
・納品後に色の指摘や印刷汚れの指摘を受けた。
・給水部のニップ調整や親水化処理(保水処理)などのメンテナンスをしているはずなのに、水を絞り切れていないと感じる。
水を絞るためにはインキングに着目してください。絞り切れない原因は、実はグレーズにあるのです。
グレーズとは?
グレーズとは、難溶性のカルシウム化合物の総称です。イメージとしては、水や洗い油では落ちない、インキングローラーの表面に堆積した“かさぶた”。表面に親水性があり、印刷中のインキに含まれる水(乳化水)を引き寄せ、ため込むことで表面に水膜を作ります。
印刷中に突然、インキングローラーに部分的にインキが付かなくなったことはありませんか?
ローラー剥げやローラーストリッピングと呼ばれるこれらの現象は、グレーズが作った水膜とインキが反発し、グレーズの部分にインキが付かなくなったために発生します。
ローラー剥げが発生した様子
なぜグレーズが発生するのか?
印刷中、紙やインキが湿し水に溶け込み、H液と化学反応が起きることで、水にも洗い油にも溶けないカルシウム化合物であるグレーズが作り出されます。したがって、湿し水を使う印刷においてグレーズの発生は避けて通れません。
逆に、湿し水を使用しない「水なし印刷」ではグレーズは発生しません。インキングローラーにグレーズが堆積していても、印刷中のインキに湿し水が含まれていないので、ローラー剥げなどのトラブルは起きないのです。
グレーズ除去の効果的な方法は?
水を絞り切るためには、グレーズを定期的に除去することが重要です。それに必要なのがグレーズ処理剤ですが、その効果を最大化するには、研磨剤フリータイプのグレーズ除去剤を使うのがおすすめです。
研磨剤含有タイプはグレーズ除去能力がありますが、グレーズがない部分、特に銅メッキローラーの銅メッキを傷付けて剥がしてしまう恐れがあります。
研磨剤フリータイプはその心配がなく、さらに難溶性のグレーズを化学反応で水溶性のカルシウムに変化させるので、白濁したものがドクターにたまり、グレーズ除去処理を視覚的に確認できます。
研磨剤フリータイプのグレーズ除去剤
「グレーズ除去ゲル PRESSMAX GR」
※ご使用の際はFFGSにご相談ください(使い方によっては効果が出ません)。
除去剤によってグレーズが白濁化した様子
POINT
•水を絞り切るためにはグレーズ除去が大事。
•グレーズはゼロにはできないため、定期的な除去が必要。
•グレーズ除去剤は研磨剤フリータイプがおすすめ。
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