今さら聞けない刷版・印刷の基礎知識③
印刷機ローラーメンテナンスの重要性
(給水ローラー編)

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印刷品質の安定化のために、日々の管理やメンテナンスはとても重要です。「今さら聞けない刷版・印刷の基礎知識」として、初回は湿し水の正しい管理方法、第2回はグレーズ除去の重要性をご紹介しました。今回は印刷機の給水ローラーに焦点を当て、メンテナンスのポイントを解説します。


水を絞っているはずなのに……

水を絞って印刷することはオフセット印刷の基本ですが、次のような経験はありませんか?

印刷機ローラーメンテナンスの失敗&NG例

・刷り出しの色や見当合わせに時間がかかり、損紙もたくさん必要。やっと本刷りに入ったのに、濃度が安定してこない。

・過乳化して印刷トラブルに発展した。

・給水部のメンテナンスをしているのに、すぐにインキが付着して汚れてしまう。

水目盛りを汚れる直前まで下げて「水を絞っている」と思っていると、落とし穴にはまってしまいます。「水を絞っている」と「水を絞り切れている」には決定的な違いがあるのです。でもご安心を。その違いを理解すれば、明日からの印刷が変わります。


給水ローラーの役割とは?

オフセット印刷では、非画像部にインキが付着しないよう、給水ローラーを介して湿し水を版面へ供給します。連続給水(水舟あり)の印刷機の場合、湿し水をためた水舟の中にある水元ローラーから、版面に湿し水を供給する水着けローラーまで、2~4本のローラーがあります。これは、湿し水をローラー間に通過させることで物理的に薄膜化し、版面への到達水量の幅を制御しやすくするためです。

では、なぜ薄膜化が必要なのでしょうか?
インキ制御とは異なり、連続給水機では絵柄面積に応じて湿し水の供給量を制御できないからです。湿し水の供給は全体の上げ下げしか制御できず、「ここだけ水を増やしたい!」と思ってもできません。そのため、全体の上げ下げを水目盛りで制御したときに薄膜化できていないと、1目盛り上げただけで過剰給水になってしまうリスクがあるのです。


水を絞り切れているとは?

まず、「水を絞っている」とはどのような状態でしょうか?例えば、下図のように、給水ローラーの一部にインキが付着しているとします。

水を絞っている状態の図

このとき、印刷汚れを防ぐために必要な量の湿し水は供給できています。しかし、インキが付着した部分の給水ローラー上では水とインキの反発が起こり、湿し水の通過量が急激に減少。通過量にバラつきが生じてしまっています。これを「給水バラつき」と言います。

給水バラつきの様子

印刷汚れを防ぐための水量を幅方向で確保できていると思っていても、実際には余剰水が生じています。この余剰水こそが「水を絞り切れていない水」の正体です。

次に、「水を絞り切れている」とはどのような状態かを考えます。水を絞り切れていない状態の逆を考えれば簡単です。幅方向で湿し水の通過量が一定になるように、湿し水の通過を阻害するものが排除されている状態を指します。幅方向で湿し水の通過量が一定になり余剰水が生じず、刷り込んでもインキと水の消費のバランスが取れているので、過剰乳化しにくい印刷が可能となります。

水を絞り切れている状態の図

水を絞り切れている状態を維持するには?

正しいメンテナンスが必要です。給水部のメンテナンスは日々実施されていると思いますが、ただやるのと理解してやるのとでは大きな差が出ると考えています。ぜひ、このコラムをきっかけに理解を深めてください。

正しいメンテナンス① 定期的なローラーニップのチェック

ローラー間のニップは湿し水の薄膜化に重要なファクターとなります。印刷機種ごとに設定されている管理値内になるよう、操作側、中央、駆動側でバラつきがないか確認してください。

※給水部のゴムローラーは劣化すると硬度が上昇し、ニップ幅が管理値内であっても実際のニップ圧は過剰になってしまいます。ニップ圧が過剰だと、耐刷不良や給水量のバラつきが生じ、安定しません。定期的な硬度チェックと交換をおすすめします。

硬度チェックを行っている画像
表図①

正しいメンテナンス② 日々の親水化処理(保水処理)

保水処理図解

給水ローラーに油分を含むインキが付着しにくい状態にするために、専用の薬品を使用した3ステップでのメンテナンスがおすすめです。

メンテナンス内容 おすすめの薬品
Step1 ローラーの脱脂
(油分を徹底的に取り除く)
「PRESSMAX FC-2」
Step2 ローラーへの親水化剤塗布
(ローラーへのインキ付着を抑制)
「PRESSMAX CD-2」
Step3 親水性キープ 「GU-7」
※20%程度に薄めて使用してください
親水化作業Before・After画像

親水化作業Before・After

ローラー表面の親水化状態をチェックする一つの方法として、霧吹きスプレーの使用があります。霧吹きスプレーに湿し水タンク内の湿し水を入れ、親水化作業の前と後で同じ量の水をローラー表面に吹きかけます。親水化状態がよければ、水滴が少なく、きれいに均一な水膜が作られます。親水化処理が不十分な状態では、水滴が多く作られます。今のローラーの状態をご自身で体感しながら把握することができ、おすすめです。ぜひお試しください。

アイコンキャラクターPOINT

•水を絞り切るためには湿し水の薄膜化が重要。

•湿し水の薄膜化にはローラーニップや硬度の定期的なチェックだけでなく、日々の薬品を使ったメンテナンスが大事。

•給水ローラーの状態のよしあしを目で見て確認する習慣付けが、水を絞り切る印刷への第一歩。


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