第1回 有処理版編①(薬品付着による膜抜け、圧カブリによる膜抜け)に続き、第2回となる今回は有処理版編②として、耐刷不良と着肉不良についてトラブルの事例とその対策をご紹介します。
印刷物上では、耐刷不良も着肉不良も正常にインキがのらない症状ですが、版で起きている現象は異なります。そのため、まずはしっかりと版の状態を観察し、トラブルが発生した版をきちんと保管しておくことが大事です。
そして、版の症状に適した対策を行うことによって、耐刷枚数を伸ばせる可能性が高くなります。具体例を挙げながら、一つずつ解説していきます。
刷版・印刷現場の
トラブル対策集
CASE 3 耐刷不良
〈耐刷不良とは?〉
耐刷不良とは、印刷中に、刷版の画像部にインキが徐々にのらなくなる現象です。洗い油等でインキを除去した際に、感光層のダメージが見られます。
〈発生メカニズムは?〉
印刷中に印圧、ローラーニップ、インキ、紙粉などの影響を受けて、感光層が物理的に摩耗します。ブランケットやローラーの洗浄後に薬品が版面に付着することで、より顕著に摩耗しやすくなる場合もあります。
〈症状別の発生メカニズムと対策〉
症状別に発生メカニズムと対策をご紹介します。
症状① 感光層が不均一に摩耗している
発生メカニズム……紙粉が版面に付着し、その箇所が摩耗しています。
対策
•インキを軟らかくする
•水を絞る
•ブラン洗浄の頻度を増やす
•紙粉抑制タイプのH液を選定する など
症状② 左右方向に等間隔で感光層が摩耗している
発生メカニズム……ローラー目などの影響により摩耗しています。
対策
•印圧、ローラーニップを調整する
症状③ 刷版の左側と右側で、同じ画像の網点に摩耗の差がある
発生メカニズム……左右でのローラーニップのバラつきにより、右側が摩耗しています。
対策
•ローラーニップを調整する
そのほかに、「ある時期から」「ある印刷機で」「特定のJOBのみで」発生するという特徴があれば、考えられる変化点や差異点について、条件を変えた場合に良化するかを確認してみてください。原因の絞り込みや対策ができます。
CASE 4 着肉不良
〈着肉不良とは?〉
着肉不良とは、印刷開始時または印刷中に、刷版の画像部にインキがのらなくなる現象です。先の耐刷不良と異なり、洗い油などでインキを除去した際に、感光層のダメージは見られません。
〈発生メカニズムは?〉
版面への薬品付着、紙粉堆積、インキの過乳化などの影響により、版-ブラン間もしくはブラン-用紙間でインキが転移しなくなります。
〈症状別の発生メカニズムと対策〉
症状別に発生メカニズムと対策をご紹介します。
症状① 液体の付着跡がある
発生メカニズム……親水性の薬品が版面やブランケットに付着することで、インキの転移が阻害されます。
対策
•薬品を使用後、版面やブランケットを乾拭きする
症状② ブラン洗浄すると良化する
発生メカニズム……ブランケット上に紙粉が堆積することで、インキが用紙に転移しなくなります。
対策
•インキング部のグレーズ除去や、給水部の親水処理をする
(水上がりが安定することで水を絞れ、紙粉の溶出量が低減される)
•紙粉抑制タイプのH液を選定する
症状③ 版面をプレートクリーナーで拭くと良化する
発生メカニズム……版面に紙粉が堆積することで、インキがブランケットに転移しなくなります。
対策
•先の②と同様です
症状④ 数分から数十分停止させた後、再スタートすると良化する
発生メカニズム……インキが過乳化することで、インキがブランケットに転移しなくなります。
対策
•給水部の親水化処理頻度を増やす
•給水ローラーを定期的に交換する
•過乳化抑制タイプのH液を選定する
困ったときにご活用ください!
SUPERIA Plate Trouble Shooting
(スーペリア プレートトラブルシューティング)
FFGSでは、刷版・印刷現場の課題解決を支援するポータルサイト「FFGSサポートタウン」をご用意しています。今回、その中に新しく、SUPERIA Plate Trouble Shootingを開設しました。サイト上のガイドに沿って、トラブル発生時の症状や状況などをご回答いただくと、要因を切り分け、トラブルの原因や対策例などをその場で確認することができます。
ご利用いただくにはIDとパスワードが必要となるため、FFGS営業担当までお問い合わせください。
〈サイトトップ画面〉
〈トラブルシューティング画面〉
第1回 有処理版編①(薬品付着による膜抜け、圧カブリによる膜抜け)
第3回 有処理版編③(露光阻害、印刷汚れ)
第4回 無処理版編(刷り出し時の汚れ・着肉不良)