刷版・印刷現場のトラブル対策集!
第4回 無処理版編

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印刷トラブル④メイン画像

今回は、印刷会社各社で導入が進んでいる完全無処理刷版について、富士フイルムグラフィックソリューションズ(以下FFGS)へ実際に問い合わせがあったトラブルの事例と、その対策をご紹介します。
本記事を通して、無処理版の導入を検討している方々にとっては不安の払拭になり、また、すでに導入されている方々にとっても、あらためて無処理版の特性を知っていただくことで、「安心・安定・安全」なご使用につながればと思います。


CASE 1 機上現像不良による刷り出し時の汚れ

〈機上現像不良とは?〉
無処理版では、自動現像機の代わりに印刷機上で現像が行われます。印刷機上で現像を行うことから、機上現像と呼ばれています。
機上現像のメカニズムについて、こちらから動画でご覧いただけます。

機上現像不良とは、この機上現像が失敗し、感光膜が剝離せず非画像部に残る現象です。
インキが付着し、印刷物の汚れの要因となります。

〈どんな特徴があるの?〉

現像不良時の印刷物

現像不良時の印刷物
刷り出し枚数が浅いことで、片側のみが汚れた様子

現像不良時の版面

現像不良時の版面
機上現像不良により、非画像部に感光膜が残った様子

無処理版は、印刷機のコンディションの影響を印刷物上で再現するため、印刷機のコンディション低下を早期に発見することができます。それにより、印刷機の状態も最適化することで、日々の紙面品質が向上するとともに、トラブルが重症化する前の早期対策も行えるようになります。

〈発生メカニズムは?〉
機上現像不良と印刷品質不良は、いずれも印刷機のコンディションの悪化が原因なので、要因の切り分けをしっかり把握することが重要です。

機上現像のプロセスは、
1.湿し水の浸透により、感光膜と支持体との密着性が低下
2.インキのタックにより密着性が低下した感光膜を剝離
となり、上の2つの事例は、給水量不足で機上現像不良が発生しています。

また、下記の2つの要因でも、機上現像不良が発生する場合があります。
①機上現像開始前に、版面に水分/油分が付着する
例:印刷室での水分や薬品の付着
②機上現像途中で印刷機が停止する
例:フィーダストップによる中断

〈対策は?〉
印刷機の適正化と、機上現像前の版面への水分/油分の付着、機上現像途中での停止にご注意ください。また、トラブル発生時には、機上現像不良かどうかの切り分けを行うと、後の対応がスムーズにできます。

CHECK

  • 印刷機状態の適正化……次のポイントで適正化を行います。
  • インキングイメージ図
  • 発生原因の特定……
    機上現像不良かどうかを切り分けるために、まずは洗い油での洗浄を推奨します。
  • ・洗い油で拭くと、画像部と同色の汚れが現れる ⇒機上現像不良
  • ・洗い油で拭くと、砂目が現れる ⇒印刷汚れ

CASE 2 刷り出し時の着肉不良

〈刷り出し時の着肉不良とは?〉
印刷開始時、通常よりも濃度の立ち上がりが遅く、基準濃度まで上がるのに損紙が増えてしまう現象です。

〈発生メカニズムは?〉
・一時給水の過剰供給/プレインキングの不足
一時給水や印刷開始前の手動水着けが過剰となり、版上に水が余ってしまいます。

・機上現像剝離成分の印刷機外排出不良
極小画像のジョブについて、小部数での版交換を頻繁に行うと、剝離した感光膜が十分に排出しきれません。無色透明な樹脂成分がインキ中にコンタミし、過乳化状態と同様の現象(濃度不足)等が発生します。

右側の濃度立ち上がりが遅い印刷物

右側の濃度立ち上がりが遅い印刷物

〈対策は?〉
印刷機の機械的な適正化に合わせて、給水方式、湿し水量、インキ量を最適化することで、抑制効果が見込まれます。また、UVインキは、過乳化しやすいインキなので注意が必要です。

CHECK

  • 一時給水/プレインキングの最適化
  • 印刷機の左右バランスの最適化
  • 極小画像を多品種行う場合には、適宜インキのリセットや刷り減らしを実施

困ったときにご活用ください!
SUPERIA Plate Trouble Shooting
(スーペリア プレートトラブルシューティング)

FFGSでは、刷版・印刷現場の課題解決を支援するポータルサイト「FFGSサポートタウン」をご用意しています。今回、その中に新しく、SUPERIA Plate Trouble Shootingを開設しました。サイト上のガイドに沿って、トラブル発生時の症状や状況などをご回答いただくと、要因を切り分け、トラブルの原因や対策例などをその場で確認することができます。
ご利用いただくにはIDとパスワードが必要となるため、FFGS営業担当までお問い合わせください。
※現在リリースしているのは有処理版用のPTSのみです。無処理版用PTSは近日リリース予定です。

〈サイトトップ画面〉

plate trouble shooting スタートページの画像

〈トラブルシューティング画面〉

トラブルシューティング画面

第1回 有処理版編①(薬品付着による膜抜け、圧カブリによる膜抜け)
第2回 有処理版編②(耐刷不良、着肉不良)
第3回 有処理版編③(露光阻害、印刷汚れ)

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