今さら聞けない刷版・印刷の基礎知識④
水なし印刷のメリットとは

記事をシェアする

今さら聞けない刷版・印刷の基礎知識④MV

50年の歴史を持つ水なし印刷は、環境面や印刷品質の高さといったメリットがある半面、導入にはさまざまな課題があると考えている方もいらっしゃるかもしれません。しかし最近では、印刷機自体やインキの性能が上がったことにより、導入のハードルも下がっています。今回は、水なし印刷のメリットや基礎知識、最新情報をお伝えします。


水なし印刷のメリットとは?

水なし印刷の採用は、さまざまな経営課題の解決に貢献します。

アイコンキャラクター赤色POINT

♦環境対応

  • ・刷版工程では、環境負荷が少ない「水」現像のため、産廃物となる高アルカリの廃液が発生しない
  • ・印刷工程では、湿し水を使わないことで産廃物となる廃液が発生しない。また、H液を使用しないためコストダウンが図れる
  • ・印刷物へバタフライロゴを付加することで、消費者へ環境性能をアピールしたいクライアントへ提案できる

♦印刷品質向上

  • ・用紙が水を吸わないので見当精度が良い。有効紙への立ち上がりが早く、ヤレが少ない

♦人材活用

  • ・これまで印刷オペレーターの経験に頼っていた見当合わせのスキルが不要
  • ・湿し水を使用しないので印刷機のメンテナンスが簡易に

環境負荷低減や、これまで色合わせや見当合わせに苦労していた印刷オペレーターの作業負荷が低減され、印刷品質も安定します。


水なし印刷方式の導入による環境貢献

湿し水を使用しない水なし印刷方式は、品質向上、人材活用のメリットもありますが、近年では環境貢献としてのメリットに改めて注目が集まっています。

①SDGsへの貢献
水なし印刷の普及に取り組む一般社団法人日本WPA(日本水なし印刷協会)は、「水なし印刷により環境配慮印刷を推進する」との理念のもとに、SDGs(Sustainable Development Goals)の17目標のうち、8つの項目に対して貢献をすることを宣言しており、会員企業110社、協賛企業18社を擁しています。

水なし印刷を採用している都道府県一覧画像②グリーン購入法に採用
2019年4月1日には、「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(略称:グリーン購入法)」の改定で、環境保全の優れた技術として、水なし印刷が採用されました。環境省の「グリーン購入法」の改定を受けて、東京都・大阪府をはじめとして、30の都道府県で水なし印刷の設定が続いています(2021年4月時点)。

テスト③バタフライロゴの付与による環境対応の証明
水なし印刷方式で作成された印刷物には、社会的な環境責任を果たした証明として、バタフライロゴが紙面上に掲載可能となります。このバタフライロゴは、環境保護印刷の代名詞といえるロゴマークであり、このマークを印刷物に掲載することは、企業の環境保護に対する積極的な姿勢を示し、環境保護活動のステータスとなります。

水なし印刷のSDGsへの貢献について詳細な資料をご用意いたしました。

水なし印刷 詳細資料ダウンロード

<TIPS:水なし印刷と刷版無処理化。環境以外の効果の違いは?>
印刷の生産工程でできる環境対応としては、水なし印刷のほかには無処理版もあります。環境以外の面では、それぞれどのような効果があるのでしょうか?
●刷版の無処理化:自動現像機が無くなり、処理工程の管理が不要。刷版室の省人・省スペース化を実現します
●水なし印刷方式:印刷現場のスキルレス化・メンテナンス負荷軽減・見当精度向上など、印刷現場の課題を解決します


水なし印刷の基礎知識

一般的な印刷工程である有処理および無処理(以下、「水あり」と呼称します)に比べ、水なし印刷では刷版~印刷工程の設備を一部改修または入れ替えることが必要となります。

今更聞けない4_図01

これから水なし印刷方式を導入される場合は、現在の設備と比べ、刷版工程ではアルカリ現像から「水」現像に変わり、印刷工程では専用インキへの変更と、水棒の冷却装置への入れ替えがあります。また、費用面では、導入時の設備費は必要となりますが、ランニングコストでは印刷薬品や湿し水を使用しないことで、メンテナンス費用を抑えることができます。

今更聞けない4_図02

ランニングコストのイメージ


水なし印刷の歴史と最新情報

水なし印刷方式は、米国3M社が1968年に水なし平版材「ドライオグラフイー」を発表したことに始まり、1976年東レ社が水なし平版を発表しました。2007年にはFFGSが「東レ水なし平版」の国内総代理店となっています。長い歴史を持つ水なし印刷ですが、過去にはさまざまな課題によって導入を断念されたケースも聞かれました。
特に印刷機の冷却が導入障壁となることが多かったものの、現在では水なし対応インキの技術的な改良により温度の管理幅も広がっていることや、印刷現場の管理手法が確立されてきていること、その他印刷機周辺の技術革新により、導入障壁が下がってきています。

また、最近は、印刷現場の技術継承に悩まれているお客さまが、老朽化した印刷機をリノベーションし、水なし印刷方式に取り組まれるケースも増えてきています。
株式会社プラルト様 導入事例

水なし印刷の詳細な資料(性能面やコスト面、印刷オペレーションなど)の資料をご用意いたしました。

水なし印刷 詳細資料ダウンロード


■関連ページ
・印刷発注時に水なし印刷を採用された企業様の声をご紹介!
・水なし印刷方式を導入された印刷会社様の声をご紹介!

記事をシェアする

コラム一覧へ戻る