この先の10年を見据え
今取り組むべき企業変革とは?

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時代の変化に立ち向かえ
課題が増えれば商売のチャンス

中森 最近の社会環境の変化やお客さまのニーズの変化については、どのように感じているのでしょうか。

松岡 小ロット・多品種・短納期化が急激に進んでいるのはもちろんですが、今回のコロナショックによって、印刷会社にしてもお客さまにしても、リモートワークをはじめとする「デジタルシフト」「働き方改革」が一気に加速しています。仕事のやり取りも対面が少なくなり、大きく様変わりしてきました。この流れの中で、「XMF Remote」でお客さまにWebリモート校正やWeb発注システムの環境を提供できるのは大きな強みです。「働き方改革、リモートワークを推進していきませんか?」という切り口で営業をかけていくことは有効でしょう。

中森 印刷業界に大きな影響をもたらす環境変化としては、5G通信も挙げられますね。

印刷物の画像松岡 昨年、中国の深センを2回訪れる機会がありましたが、深セン空港に、コート紙135キロぐらいのA4サイズの液晶か有機ELのようなディスプレイがあって、木の葉が何百枚も風にそよいで動いているんですよ。後で調べたところ、これは厚さ0.01mmという業界最薄のフレキシブルディスプレイで、そこに高速動画が流れていたわけです。ディスプレイは曲がるし持ち運べるし、これから値段もぐっと下がっていくらしい。通信環境が5Gになればこうした動画化はさらに加速していくと思います。

中森 5Gが印刷業界にどのような影響を及ぼすのか、われわれも強い関心を持っています。

松岡 ありきたりな言い方かもしれませんが、こうした劇的な変化によって市場が動くとき、ピンチがチャンスにもなります。今までお取り引きできなかったような中堅・大手のお客さまも、今ならみんな等しく、迷ったり困ったりしているわけです。アンテナは常に高く上げ、役立つ情報を誰よりも先にキャッチし、果敢にチャレンジしていく。チャンスは、向かってくるときにしかつかめません。少しでも通り過ぎたらもう手が届かなくなる。幸運の女神には前髪しかないのです。

欧州視察で刺激を受けた
デジタル印刷とネット通販

中森 松岡社長は昨年、欧州の印刷会社を視察されましたが、印象に残っていること、参考になったことなどがあればお聞かせください。

松岡 デジタル印刷機を活用した先進的なビジネスモデルやネット通販システムは非常に参考になりました。Webからの受注システムと、入稿データを効率的に生産側に流していけるワークフロー、そしてネット広告などによって絶対量の仕事を集められる仕組みをつくれるかどうかが最大のポイントですが、それができているのは、ほんの一部の会社だけでした。

中森 先日、欧州の大手オンラインプリンターのCEOと面談する機会があったのですが、生産効率を最大化するためには、個々の生産機器の自動化と、それら全体を束ねて効率的に生産するためのITシステムの両方が重要だと言っていました。その会社は従業員が1000名を超える大企業で、1日のジョブが、繁忙期では2万件に迫ります。生産を効率化するために、時には用紙の種類やサイズなどをある程度絞り込むこともありますが、彼らが言うには、発注者に充分な選択肢を提供しなければいけないと。オンラインプリンターも、製造に特化した分野でどんどん変わっていこうとしているわけです。

「幸せな事業継承」のために
息子たちとしっかり向き合う

株式会社アサプリホールディングス代表取締役社長 松岡祐司中森 最後になりましたが、松岡社長自身はこの先10年を見据えて、具体的にどんなことに取り組んでいこうとお考えですか?

松岡 まず一つは「幸せな事業承継」ですね。そして社員の雇用を守るための「多能工化」。情報産業での多角化連邦経営を行うための次の「M&A」。そのための「人材育成」。どれも弊社の普遍的なテーマだと思っています。
現在、三重大学大学院の地域イノベーション学研究科の後期博士課程で論文を作成していますが、そのテーマが『中小企業のM&Aと幸せな事業承継』なんですよ。

富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ株式会社 取締役 常務執行役員 中森 真司中森 全国の中小印刷会社のこの先10年の課題といえば、「事業承継」を挙げる会社が多いと思いますが、松岡社長の場合、すでにグループ内で活躍なさっているご子息がいるのですから、安心なのではないですか?

松岡 いやいや、課題は山積みです。彼らとはそんな課題を話し合うため、毎年欠かさず正月に家族会議を開いていますよ。

中森 今年の会議も、いろいろなテーマで議論をされたのでしょうね。本日はたくさんの貴重なお話をいただきまして、ありがとうございました。

※本対談は2020年3月13日に行われました。


株式会社アサプリホールディングス/アサプリグループ

1978年に「アサヒプリントセンター」として創業。従来の社風・独自性を尊重する「和の心を重んじた日本式M&A」により2002年にプリンター、2005年にオリエンタル(旧オリエンタル印刷)を子会社化。その後クリエイティブエージェンシーのバロック、映像制作会社のナナメほか、計7社が加わり、アサプリグループ10社合計で連結売上高55億円超へと成長。先進的な発想でお客さまのさまざまな要望に応えながら、さらなる業容拡大をめざす。

●代表者/代表取締役社長 松岡 祐司氏
●創業/1978年7月
●所在地/三重県桑名市安永926(本社)
●従業員数/344名(グループ全体)

URL: http://asapri-hd.jp

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