「POD」と「デジタル印刷機」って違うの?

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PODとデジタル_MV

「page2022」でFFGSは、生産改革で生み出す「余力」を企業独自の成長戦略に再分配することで、印刷会社の持続的な成長につなげる「最適生産ソリューション」を提案しました。中でも、印刷工程の最適化という観点で注目を集めた「オフセット印刷とデジタル印刷の共存」については、提案にご賛同くださる印刷会社も多い一方、「そもそも、POD(プリント・オン・デマンド)ではオフセット印刷の代わりになり得ないのでは?」という疑問の声を第一声としていただくこともありました。
そこで今回は、「POD」の歴史をひもときながら、経営変革に寄与する「デジタル印刷機」について解説します。


日本市場へ浸透した「POD」

日本におけるPODの歴史は1993年、アメリカ・XEROX社の高速電子印刷・出版システム「DocuTech Production Publisher M135」の発売から始まりました。「必要なものを、必要な時に、必要なだけ、必要な形で、必要な場所で」というコンセプトの下、プリントするだけでなく、ドキュメントをスキャンしてデジタル化し編集・保存・検索できる機能、テープ製本して出力する機能、オプションとしてインラインフィニッシャーによる中綴じ製本機能まで備えた、最初の完全に統合されたオンデマンド印刷システムで、主に多品種・小ロットのマニュアルや絶版本などの一部の出版分野で市場に受け入れられてきました。
その後、2000年の富士ゼロックス(現:富士フイルムビジネスイノベーション/富士フイルムBI)による「Color DocuTech 60」の登場で、PODのフルカラー化が本格的にスタートし、在庫レス・ジャストインタイム、バリアブルという顧客ニーズに対応することで市場を拡大してきました。

とはいえ、印刷の現場では、大ロット時の生産性の低さや使用できる用紙が限られること、オイルによるテカリ感がオフセット印刷との違いとして指摘され、PODはあくまで多品種・小ロットに特化した“隙間を埋める”サービスという位置付けにありました。


オフセット印刷に迫る性能を実現。PODは「デジタル印刷機」へ

2010年、富士ゼロックスが“Press”という言葉を冠して発売した「Color 1000 Press」は、それまでPOD機が提供できなかった高画質、高生産性、安定性・信頼性を実現、市場からオフセット印刷機に代わる「デジタル印刷機」として一定の評価を得ることができました。特に、EA-Ecoトナーの採用により、オフセット印刷に近い品質での出力が可能となったことで、印刷会社内の使用部門を制作部門から生産部門へ変更する会社も多く見られ、トナーによるデジタル印刷の扉が開かれました。

その後、「Color 1000 Press」の後継機として登場した「Iridesse™ Production Press」では、特殊色やメタリックカラーに対応し、デジタル印刷に新しい付加価値を提供しました。

「『Iridesse™ Production Press』は仕上がり品質が、それまでのデジタル印刷機に比べて格段に向上し、オフセットとまったく遜色のない水準になったので、これならフルデジタル化が可能だろうと確信しました」

株式会社コームラ 鴻村社長

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「『Iridesse™ Production Press』は背骨になるマシン。クオリティや安定性については、『Color 800/1000 Press』で実証済みなので、優れていることはわかっていました。(中略)今までオフセット機でしかできなかった仕事もPODに移行できるようになりました」

あさひ高速印刷株式会社 岡社長

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この流れは、2021年に富士フイルムBIが発売した「Revoria Press PC1120S」に継承されると同時に、新たにインラインの除電装置をオプションに加えたことで、多様なマテリアルへの出力が可能となり、デジタル印刷の活用領域がさらに広がりました。

下の図1のように、従来はオフセット印刷機が生産機としての役割を単独で担っており、800部程度の小ロットの仕事(領域A)や、2000部程度でも特色使用や丁合などの後加工が必要な手間のかかる仕事(領域B)に関しても、利益率が低いにも関わらずオフセット印刷機が担っていました。この領域A・Bでデジタル印刷機を活用することで、オフセット印刷機は利益率の高い大ロットの仕事に注力でき、生産工程全体の効率を高めることができるのです。

図その①

デジタル印刷機の力で経営変革までも実現

このようにして、徐々に市場に受け入れられるようになったトナーによるデジタル印刷。東日本大震災後にBCPの観点で必要性が注目されたことや、最近では働き方改革、DX対応、SDGsへの取り組みといった新たなニーズを捉えるため、デジタル印刷を経営戦略に積極的に組み込む企業が増えました。今日では、ジョブの一つひとつを見て「PODは儲からない」と考えるのではなく、印刷工程にデジタル印刷を組み込んで生産工程全体を最適化することで、業績を伸ばし、会社の変革を推進している企業が多数登場しています。株式会社コームラ様も、デジタル印刷の活用で経営変革を実現した印刷会社のひとつです。

※Business Continuity Plan(事業継続計画)の略

株式会社コームラ様

■導入事例
株式会社コームラ様
自社の持つ課題と、今後の成長戦略を見据え、社内コミュニケーションの改善、デジタル印刷機の活用による生産改革などに取り組まれました。これにより、部門最適でなく、会社全体で目標に向かっていくという「全社最適」の姿勢が定着し、業績回復も達成されました。
→事例記事はこちらから

2014年当時、富士ゼロックス社員として、株式会社コームラ様の生産改革に携わったFFGS デジタルソリューション営業部 部長 鈴木 重雄は、以下のように振り返ります。

「オフセット印刷とデジタル印刷とを共存させた生産環境、あるいは特定ジョブをデジタルに移行し、運用の最適化が進んだ環境が会社経営にもたらすメリットについて、当時私たちは断片的にしか理解できていませんでした。しかし、コームラ様との協業が『投資の原資を抽出し、利益を生み出すメカニズムを解明する』という視点を生み、その答えが『足元の改善』にあるということにたどり着いたのです。このコームラ様との協業が、現在私たちが提案する『最適生産ソリューション』のベースになっています」

「最適生産ソリューション」についての詳しい資料はこちらから

「最適生産ソリューション」資料の内容
・利益を生み出すメカニズムとは?
・外部支払い原価の適正化とは?
・付加価値(加工高)経営とは?
・稼働率と可(べき)動率の違いとは?
・表面原価と正味(トータル)原価とは?
・経営資源の分配とは?

「最適生産ソリューション」資料のサンプル

資料サンプル

目指すのは「印刷会社の持続的な成長」

これまで述べてきたように、1990年代から日本市場に広がったPODは、現在でも主に制作部門が中心となり、特定の用途で活用されています。一方、2010年に富士ゼロックスが市場投入した「Color 1000 Press」以降、デジタル印刷機と見なされるようになったハイエンドトナー機は、主に生産部門でオフセット印刷機と共存しながら活用が広がっています。それらは共に、印刷会社の変革を実現するにあたって強力な武器となります。

FFGSでは、10年近く積み重ねた「最適生産ソリューション」の経験と、生産工程の上流から下流までをカバーする製品ラインアップ、さらに、富士フイルムBIの豊富なPOD・デジタル印刷機製品ラインアップをベースに、今後もお客さまの持続的な成長に向けて、支援を続けてまいります。


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