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印刷の基礎知識2024

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はじめに

新入社員の皆さま、ご就職おめでとうございます。本コラムは、新入社員の方や、新たに印刷業務に携わる方向けに、印刷の基礎知識についてご説明します。
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1. 印刷物とは

社会のデジタル化が進んだ現代においても、私たちの生活には印刷物があふれています。印刷物には、書籍、雑誌、新聞をはじめ、チラシ、カタログ・パンフレット、ポスター、パッケージ、容器に貼られたラベルなど、さまざまな種類があります。

図版1
さまざまな印刷物の例(チラシ、カタログ・パンフレット、書籍)

これらの印刷物は、基本的にシアン(C)マゼンタ(M)イエロー(Y)・ブラック(K)の4色で構成されています。CMYの3色を塗り重ねることによってさまざまな色を表現し、塗り重ねのみでは表現が難しい黒をKで表現します。金や銀など、これら4色で表現しきれない色は、特色という専用の色を使って表現します。
印刷物で色を表現するために、「網点」という小さな点が用いられています。網点の大きさは変えることができ、それらが連続的に並ぶことで色の濃淡を出すことができます。

図版2

印刷方式にはいくつか種類があり、大きくは「アナログ印刷」と「デジタル印刷」の2つに分けられます。これらの違いは、「版」と呼ばれるハンコを使用するかどうかです。また「版」を使用する「アナログ印刷」には使用する「版」の種類により、オフセット印刷(平版)、フレキソ印刷(凸版)、グラビア印刷(凹版)、スクリーン印刷(孔版)があります。
この中でもオフセット印刷は、デジタル印刷と比べて印刷解像度が優れており、効率的に同じものを大量に印刷できることから、現在の商業印刷・出版印刷の主流となっています。
一方、「版」を使用しないデジタル印刷には「電子写真方式」と「インクジェット方式」があり、一部ずつ違う内容で印刷するバリアブル(可変)印刷をはじめとした小~中ロットの印刷で主に使われており、近年では印刷量や目的によって、オフセット印刷とデジタル印刷を併用するケースが増えています。

図版3

2. 印刷物ができるまで

印刷物ができるまでには、複数のステップがあります。

図版4

①企画・編集:製作する印刷物の企画立案・デザイン作成
②DTP(Desk Top Publishing):パソコン上で印刷用のデータを作成
③校正:印刷をする前に行う品質確認
④製版:パソコンで作成した印刷データを基にした版の作成(アナログ印刷のみ)
⑤印刷:適切な方式で印刷
⑥製本・加工:印刷物を完成させるための加工

これら一連の流れを経て、印刷物が完成します。

4. オフセット印刷について

アナログ印刷には使用する版の種類により複数の印刷方式がありますが、商業印刷や出版印刷で主流のオフセット印刷は、水とインキの反発を利用した印刷方式です。インキが付く画像部と、水が付く非画像部があり、色を出したい部分にのみインキを付けることで絵柄を印刷することができます。

図版5

オフセット印刷では、「刷版」というアルミの版を使用します。「刷版」から紙に直接印刷せず、ブランケットに転写して(Off)から紙に印刷(Set)するため、オフセット印刷と名付けられました。

図版6

富士フイルムは、このオフセット印刷で使用する「刷版」を製造する国内シェアNo. 1のメーカーです。
現像液による現像処理が必要な有処理版「SUPERIA XP-F」、現像処理が不要で環境性の高い無処理版「SUPERIA ZX」など、豊富なラインアップでオフセット印刷を支えています。

4. デジタル印刷について

「版」を使わず、データを直接プリンターのサーバーへ送るデジタル印刷には「電子写真方式」と「インクジェット方式」があります。

■「電子写真方式」
粉末状のトナーを帯電させたドラムに付着させて画像を形成し、紙などの印刷媒体へ転写することで印刷する方式。コピー機などで多く使用されている。

■「インクジェット方式」
微細なインクを直接紙に打ち出して画像を形成する印刷方式。ノズルから吐出するインク滴のサイズを調整することで高精細な画像を印字できる。

オフセット印刷は効率的に大量の印刷ができる反面、ジョブごとに「刷版」を作成する作業や印刷機の前準備が必要なため、小ロットの印刷には向いていません。
一方、デジタル印刷は「版」の作成や機材の前準備が不要です。また、近年印刷品質の再現性や安定性が向上したことにより、これまで品質の問題でオフセット印刷でしかできなかった印刷もデジタル印刷で十分対応できるようになりました。近年ではオフセット印刷との併用が急速に増えています。

図版7

5. カラーマネジメントについて

カラーマネジメントとは、デザインや写真、イラストなどをイメージしているとおりの色で印刷するために、印刷物を製作する全工程にわたって色を維持・管理することです。カラーマネジメントを徹底することによって、「同じデータでも表示するモニターによって色が異なる」「印刷機によって色の仕上がりが異なる」といった、「色が合わない」というトラブルを軽減することができます。

■「色が合わない」代表的な原因
1. CMYKとRGBの違い
印刷機やプリンターは、色の三原色と呼ばれるCMYにKを加えた4色のインクを主に使って出力しています。一方パソコンのモニター上では、色は光の三原色と呼ばれる赤(R)、緑(G)、青(B)のRGBで表現されます。RGBの方がCMYKよりも再現できる色の領域が広いため、モニター上で見えている色を印刷の色で完全には再現できない場合があります。

図版8

2. 印刷機やプリンターといったデバイス間の色の違い
印刷機やプリンターは、インクの色材の違い、機械自体の個体差やコンディションになどにより、印刷した色が変わることがあります。特にアナログ印刷機は色が変動する要因が多いため、日々のメンテナンスが重要になります。

図版9

■カラーマネジメントを実践するポイント

カラーマネジメントの実践には、以下の3つの構築が必要です。特にオフセット印刷においては「色基準の策定」が最も重要な項目です。

①色基準の策定
印刷工程にかかわるさまざまな機器の色再現の基準となる色を決めます。一般的にはJapan Colorのような「業界標準」を採用するケースが多いですが、ブランドオーナーが基準の色を決めている場合などは、「自社基準」を設定することもあります。

②色の標準化
印刷機やプリンター、モニターといった機器は、それぞれ色の表現方法が異なります。策定した色基準で印刷した基準印刷物を目標にして、各機器の色合わせ(カラーマッチング)を行います。

③色の維持・管理
色基準を定め、色の標準化を行ったら、それを維持するための管理が必要です。
デジタル印刷機の安定性は向上しており、オフセット印刷機と効率的に併用するためには、変動要因の多いオフセット印刷機を日々メンテナンスすることで、安定稼働させることが重要です。

富士フイルムでは、色基準作成や各分野の色再現が合わないなどのお困り事を支援するサポートメニューを用意しています。
ご興味のある方は、ぜひ関連メニューもご覧ください。

以上、印刷の基礎知識を解説しました。本コラムを通じて、印刷に対する理解が深まりましたら幸いです。
なお、本コラムの詳細版は下記からダウンロードいただけます。

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