「デジタル印刷の可能性、魅力を発信!」 クリエイターコラボ企画 第二弾
Revoria Press PC1120 × おと(イラストレーター)編

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「デジタル印刷の可能性、魅力を発信!」 クリエイターコラボ企画 第二弾Revoria Press PC1120 × おと(イラストレーター)編

おと Illustrator
お花をモチーフに煌めく女の子を描く。本物を見ながら描くという繊細な植物と、人物のストーリーを感じさせる視線や肌の艶、メイクの煌めきなど丁寧に描かれたイラストがSNSで話題を呼び、2021年よりフリーランスのイラストレーターとして活躍。(Instagram @ototoi3046

作品「 爽籟 」
作品「 爽籟 」
作品「 春の陽 」
作品「 春の陽 」

1. デジタルクリエイターおとさんのアナログ作品づくりへの想い

FUJIFILMのデジタル印刷機ならではの作品をクリエイターとコラボレーションして生み出し、印刷の新たな可能性を探る企画の第二弾。今回は、植物に人物を絡めたモチーフで、大胆な構図でありながら細かい花びらの質感まで繊細に再現した作品がSNSで話題となり、若い世代から支持を集めているイラストレーション作家のおとさんが参画。「印刷はあまり詳しくない」というおとさんを、まずはショールームにお招きし、「Revoria Press PC1120」で作ったたくさんの作品やサンプルからRevoriaでできることを知っていただいた。併せてディスカッションすることで、これから作るモノのイメージを膨らませていく。

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参加者
おとさん
●富士フイルムグラフィックソリューションズ株式会社 広報宣伝部 藤井 渚
●富士フイルムグラフィックソリューションズ株式会社 技術本部 技術二部 課長 早川 貴之
●富士フイルムグラフィックソリューションズ株式会社 技術本部 技術二部 西 和哉
●富士フイルムビジネスイノベーション株式会社 グラフィックコミュニケーション事業本部 バリューイノベーショングループ グループ長 鎌形 明

おとさん

藤井:今回の企画へのご参加ありがとうございます。

おと:こちらこそ、こんな大きな企画にオファーいただけて恐れ多いくらいです。ありがとうございます。

藤井:今日はまず、デジタルでイラストを制作している、おとさんの作品を印刷するデジタル印刷機「Revoria Press PC1120」とそのサンプルを見ていただきました。印象はいかがですか?

おと:金・銀のほかに、ピンクやクリアーなど、今まで使ったことのないカラーが使えるので、普段よりも個性の出た作品が作れそうで期待が高まっています。使える紙の種類もとても多いので、絵柄に合った質感の紙を選べたら表現の幅も広がりそうで、楽しみになりました。

藤井:おとさんはデザインのイベントなどにも出展なさっていますが、作品の印刷はどうしていますか?

おと:ネット印刷しか利用したことがないんですが、仕上がりを見て、色のイメージが違うことがよくありました。とくに人物の肌色のくすみが気になったり、限られた種類の用紙の中から直感的に選んで失敗してしまったり……。デジタルをアナログにするのって、とても難しいですね。
それでもアナログの形にしたいという気持ちはすごくあって、個展を開きたいと思っています。いま、デジタルのクリエイターの間でも個人で個展を開く方が増えています。以前は出版社さんとかギャラリーさんから声をかけられて開くのが普通だったのが、今は自分で場所を借りて開く方も多いんです。

藤井:そうなんですね。コロナが明けてSNSやオンライン以外でコミュニケーションができる場を求める人が増えているのでしょうか。

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おと:はい、最近はデジタルのクリエイターが増えているじゃないですか。ただ、デジタル作品は画面で見られて終わり……みたいなところもあって、自分の絵を見てくれる人がどんなふうに感じたかとか、あまり伝わってこないんです。絵を描いている人って、こもって一人で描いているので、やっぱり個展みたいなリアルな場に来てくださる方や、他の作家の方に意見や感想を言っていただき、交流がしたいっていう思いがあると思います。

藤井:そうすると、デジタル作品を表現する印刷の役割は重要ですね。作品に込めた想いや意図が伝わるように、こだわりたいところですよね。

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おと:そうなんです。ちょっと逆の例なんですが、以前一度、ギャラリーさんから声をかけていただいて、グループ展に出品したことがあるんですが、データだけ提供してあとは先方でプリントや展示などをしてくださったんです。会場に見に行ったら、全作家の全ての作品が、同じキャンバスで同じ大きさで飾られていました。ギャラリーさんのコンセプトがあったと思うので仕方ないのですが、やっぱりこの人の作品はこの紙じゃないなとか、キャンバスの大きさも色見もこの作品に合わないなと感じてしまうものが結構ありました。そのあと、好きな作家さんが開いた個展では、作品によって紙も額装の仕方も、変えていて。やっぱり作品によって表現したいことが違うから、作品に合わせて変えるというのは重要なんだなと改めて思いました。なので、私が自分で個展を開く時は、紙やキャンバスの大きさも1つずつこだわって作りたいですね。
それから、デジタル作品は複製できるから唯一無二感がないじゃないですか。でもアナログの作品なら希少価値みたいなものが出せますから、そこに特別感が欲しいなって思います。

早川:なるほど。先ほどネットから印刷をしているとおっしゃっていましたが、個展用の作品を作るにあたっては、どんな会社に依頼する予定ですか?

おと:ネットで探すと、いろいろなことができる印刷会社さんがたくさん見つかるのですが、逆に「これだ!」という会社を見つけるのが難しくて。印刷会社さんにどこまで頼っていいのか、細かい相談するにもハードルを感じるので、困っています。なので、基本はSNSや知り合いの口コミで良さそうな先を見つけて、そこにお願いする予定です。まだ利用はしたことがないんですが、好きな作家さんの個展で依頼した先をSNSで知ることができたので、今度個展を開くときにいいなと思っています。そこは、ネット印刷ではないんですが、紙以外にアクリルとか立体も作れたり、額装や展示の設置にも対応してくれるサービスをしていて、料金もネットで見ることができます。実例の写真もたくさん載っていてわかりやすいです。

早川:なるほど、プリントだけじゃなくて、個展のために作家さんが必要とすることをまとめてソリューションとして提供してくれるような会社なんですね。ありがとうございます。今回は私たちがおとさんのデジタル作品から、唯一無二のアナログ作品を作り出すお手伝いをさせていただきたいと思います。


2. 企画会議 テーマは「唯一無二の植物図鑑」

藤井:それでは、どんなテーマで何を作るか?を検討していきましょうか。
前回、いえだゆきなさんとテーマや仕様を決めるときは、いえださんの興味のあることが日本の歴史や和歌だということで、古い歌のストーリーを絵にした絵巻物を制作しました。今回も、おとさんの興味のあることなど伺いながら検討していきたいと思います。

作品「 素朴 」
作品「 素朴 」

おと:ありがとうございます。普段から植物をモチーフに描いているので、植物、お花が好きですね。

藤井:小さいころから好きだったんですか? 何かルーツがあるんでしょうか?

おと:もともとお花が好きなのですが、おばあちゃんがお花をめっちゃ好きで、庭に常に季節ごとのお花が咲いていて、自然と名前も覚えていました。おばあちゃんは描くのも好きなので、葉書などにも必ずお花を描いていましたから、その影響が大きいかもしれません。

藤井:お花のどういうところが好きですか?

おと:私、個性がある人が好きなんですが、お花も同じです。一見全部同じに見えるんですけど、一輪一輪個性があって、同じ種類でも全部違う形をしてるっていうのが面白いし、あとはすごくきれいだけど毒があったりとか、見た目だけでなく、性質や特徴も含めて個性だと感じられるところが好きです。

藤井:おとさんの絵は植物と人物を絡めることで、そのお花の個性を表現しているんですね。

おと:はい、なので、植物図鑑みたいなものが作れたらいいなと思います。

藤井:いいですね。一つひとつの個性を表現するために紙などを変えることもできるので、PC1120が活躍してくれると思います。

おと:はい、作品に合った紙で、色や印刷方法もご相談しながら唯一無二の植物図鑑を作りたいです。

藤井:サイズや仕様はどうしましょうか? イメージしていることはありますか?

おと:以前から仕掛け絵本など立体感のあるものが好きなんですが、シャドーボックスを作ることってできるでしょうか? 何枚かの絵を立体的に重ねて奥行のある絵にするものです。

藤井:シャドーボックス、すごく面白いですね。先ほどのお話しにもありましたが、デジタル作品を、手に取れるアナログ作品に落とし込むときの特別感、希少感が出せそうですね。加工方法が今は思い浮かびませんが、早川さんと鎌形さんになんとかしてもらいましょう(笑)。

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鎌形:絵柄を印刷して、上の層を抜き加工して、下の層の絵が見えるようにするんですよね、できると思いますよ。

藤井:シャドーボックスもすごく面白いんですけど、植物図鑑がテーマなので、もうひとひねり、おとさんの絵をしっかり見せられるモノにできないですかね。

鎌形:そうですね、例えば、シャドーボックスを低い高さで作って、それを表紙にしておとさんの絵をいろいろな用紙に刷ったものを、冊子にして綴じるっていうのはどうですか?

おと:表紙をシャドーボックスにできるんですか?

藤井:鎌形さんと早川さんが、何とかしてくれると思います(笑)。

このあと、仕様についてディスカッションし、サイズはおとさんが追求している植物のリアルな質感や細かいタッチが表現できるようにA3判を選定、おとさんには5種類の絵を描いていただき、それぞれ違う用紙を使って印刷すること、おとさんにラフスケッチを作っていただき、使う用紙については株式会社竹尾のショールームで実物を見せていただいて検討することなどを合意した。


3. ラフスケッチの共有と用紙選定

株式会社竹尾が運営するファインペーパーのショールーム兼ショップになっている見本帖本店にお邪魔して、おとさんが作ってきたラフスケッチを共有いただき、ページごとに細かく用紙や仕様を検討していく。

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藤井:まずご用意いただいたラフ案を共有いただいてもいいでしょうか?

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おと:はい、先日の打ち合わせで伺ったPC1120でできることから発想を広げてみました。「こんなことできるかな?」という内容ですが、見ていただけますか?

藤井:花の中でも個性の強い“ネイティブフラワー”を人物と絡めて描いて、それぞれの植物の個性や特長を表現するために紙とプリント手法と加工方法を掛け合わせた表現で考えてくださったんですね。

おと:フィルムやトレーシングペーパーを使って紙を重ねるとか、シールにもプリントできるとか、先日の打ち合わせで藤井さんがおっしゃっていたアイディアも、ちょうどお花の個性を表現するのに合っていたので盛り込んでみました。

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紙のショールームは初めてだというおとさんに、今回の企画にご協力いただく、株式会社竹尾 東京本店 営業開発部 新規開発チーム 次長の三瀬様、大橋様から、白い紙でも多くの種類があり、印刷適性・発色が違うこと、使われている素材により風合いが異なることなど、見本帖を使ってレクチャーいただいた。

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また、おとさんの作品の意図に合わせて、コンシェルジュのように次々と紙のサンプルをご提案いただき、具体的な検討を進めていった。

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藤井:竹尾の三瀬さん、大橋さん、本日はお忙しい中ありがとうございました。おとさんもだいぶイメージがわいてきたのではないかと思います。ここからは、おとさんには実際のイラスト制作をスタートしていただきつつ、私たちFFGSの方では具体的な製本の方法について検討していきましょう。

(後編につづく)

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