「デジタル印刷の可能性、魅力を発信!」
Jet Press 750S × クリエイターコラボ企画 第一弾 いえだゆきな(イラストレーター)【前編】

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いえだゆきなさんコラボ企画MV

愛知県名古屋市出身。
武蔵野美術大学日本画科卒業後、奈良に2年間滞在し寺社仏閣巡りをする。
その後、愛知の広告制作会社でデザイナーとして勤務しながら、フリーランスイラストレーターとしても活動。イラストを用いたデザインを多く制作した。
2022年独立。どこか懐かしく幻想的な風景画を得意とし、クライアントワークではそのものの本質を捉えることを心がけている。

プロフィール

1.企画会議 コンセプトは「伝承」、テーマは「千年の恋」。

デジタル印刷機「Jet Press」だからできる作品を、クリエイターと生み出し、印刷の新たな可能性を探る新企画がスタート。トップバッターは四季の風景や優しい情景を鮮やかな色彩で表現する、今注目のクリエイター・いえだゆきなさん。まずは名古屋のアトリエからオンラインで企画会議に参加いただいた。

【企画会議 参加者】
> いえだゆきなさん
> FFGS 広報宣伝部 藤井 渚
> 編集スタッフ

オンライン画面
画像①
作例①
小倉百人一首・9番 小野小町
「花のいろは うつりにけりな いたづらに、
わがみよにふる ながめせしまに」
作例③
作例④
作例⑤

藤井:私たちがいえださんに注目したきっかけは和菓子メーカーの梅林堂さんとコラボレーションで展開しているパッケージのイラストです。四季折々の情景を描いた色彩の美しさが目を引きました。

いえだ:梅林堂さんは埼玉県で江戸時代に始まった歴史ある和菓子メーカーです。店舗だけでなくギャラリーも持っていらして、芸術支援のような形で若手のアーティストとコラボレーションでパッケージを開発しているんです。私も昨年、1年間担当しました。企画担当の飯田美枝子さんは日本文学に造詣が深く、日本の古い歌に詳しくて、パッケージ制作の際、和歌などを例に出してイメージを擦り合わせたことがとても印象的でした。

藤井:今回のコラボレーションでは、いえださんの今関心のある創作意欲を発揮できるようなテーマを相談しながら、Jet Pressでできることも知っていただき、デジタル印刷で新たな作品を生み出したいと考えています。制作過程や仕上がった作品を通じて、デジタル印刷の面白さや価値、可能性を発信できればと考えています。まずはテーマを決めていきたいのですが。

いえだ:私が今関心のあるテーマは日本の古い歌(古典詩歌・歌謡)です。梅林堂の飯田さんから「日本の古い歌をテーマに、いえださんの色彩で絵を描いたら絶対に素敵」とアドバイスをいただき、いつか制作したいと考えていました。飯田さんからはさまざまな歌を教えていただきましたが、中でも特に“恋の歌“に強く興味を惹かれました。1000年以上の時を経て、本当に今でもキュンとくるような想いが歌われているんです。楽しい歌に乗せて、当時の名もなき人々の切ない想いが残されていて、今も私たちの胸を打つということにすごく心を動かされました。

藤井:なるほど。古典から今の私たちにつながる想いを表現したいということですね。

いえだ:そうですね。恋そのものには形はないけれど、その歌には情景が浮かび上がるようなものが表現されています。今の私たちの言葉で言うとエモいんですよ。

藤井:いいですね。昔からの想いを現代に伝えるという意味で「伝承」をコンセプトにしてはどうでしょうか?後世に伝えるための技術を進化させながら長く伝承してきた“印刷”とも親和性があると感じます。恋をテーマにいえださんに歌を選定していただき、その言葉から連想した情景を絵に描き、最新のデジタル印刷技術を使って作品にする、というストーリーで進めていきましょうか。

2.「Jet Press」を知る。

後日、Jet Pressのショールーム「Jet Press SQUARE」に参画メンバーが集合しキックオフ。いえださんは印刷の基礎知識やJet Pressの特長などを頭に入れ、たくさんのサンプルを見て、作りたいモノのイメージを膨らませる。

【企画会議 参加者】
> いえだゆきな さん
> FFGS 広報宣伝部 藤井 渚
> FFGS 技術二部 主任 吾郷 裕之
> 編集スタッフ

取材風景1
取材風景2
取材風景3

吾郷:Jet Pressはデジタル印刷ならではの高画質、特にくすみのないクリアな色表現を特長としています。オフセット印刷では難しいRGBの色域が鮮やかに再現できるとご評価いただいています。
いえださんはどのように作品を描いているんですか?

いえだ:私は基本、デジタルツールを使って絵を描くのでRGBの方がなじみがあります。でも印刷だとなかなか表現できず色あいで苦労することがよくあります。作品でよくピンクを使うのですが、どうしても紫がかって出てしまうことが多いのが気になっていました。Jet PressはCMYKで印刷しているのにRGBが出せるというのが不思議ですね。

吾郷:そうですね、オフセットに比べてはるかに鮮やかに再現できます。サンプルをご覧いただけば一目瞭然だと思いますよ。

いえだ:すごく大きい豪華版の写真集もあるのですね!

藤井:蔦屋書店で限定版1部50万円で販売した三島由紀夫氏の写真集ですね。篠山紀信氏の写真に、デザインを手掛けたのが横尾忠則氏ということで、話題を呼びました。

吾郷:B2判なので、Jet Pressで印刷できる最大の大きさです。この扉の黒一色の印刷をここまでムラなくできるのもJet Pressならではです。

いえだ:紙はどんなものを使えるんですか?

吾郷:厚いものから薄いものまで、用紙の自由度は高いですよ。テーマは決まっているということなので、この後どんなサイズのどんな形状のものを作るか考えていきましょう。

3.どんな形がいいか?コンセプトを表現するための仕様とは……

コンセプトが決まり、Jet Pressの特長をつかんだいえださんが制作物を検討、
4つのプランを提案してくれた。

取材風景5
取材風景6
取材風景11
取材風景7
取材風景8
取材風景9
取材風景10

いえだ:Jet Pressについてレクチャーいただいて、作品の仕様を考える上で、私は3つのポイントに注目しました。
1つ目がバリアブル印刷(可変印刷)(柄を1部づつ変えられる。1枚から印刷可能)。
2つ目がRGBの色彩表現(CMYKでは表現できない、色鮮やかな現代的な表現が可能)。
3つ目が紙の汎用性(さまざまな紙への印刷で新しい表現が可能)。
その上で考えた制作物の案が、「掛け軸」「絵巻物」「短冊」「かるた」の4つです。

いえだ:やはり和の要素を感じさせるものがいいなと思っていて、歌をモチーフにするということで、短冊、かるた、後は物語的に時系列を表現できる絵巻物なんかがいいんじゃないかと思いました。ただ、B2サイズの紙ということは、細長いものを作るイメージではないですよね。

藤井:でも、B2の幅を生かし、さらに横につなげていって巻物にするというのも面白いですよね。

吾郷:そうですね。Jet Pressは広い色域を再現できるため、異なる用紙でも色味を近づけて印刷できます。違う紙を後加工でつなげるという手はありますね。

いえだ:実は今回の企画にあたり、飯田さんに相談して素敵な恋の歌をたくさん教えてもらいました。その中から使いたい歌もいくつかピックアップしています。企画内容や仕様にふさわしい歌を選びたいと思っていたんですが、ひとつ、絵巻物にふさわしそうなのがあるんです。『梁塵秘抄』という平安時代末期に編まれた歌謡集の中にある、

君が愛せし綾藺笠 落ちにけり落ちにけり
賀茂川に川中に それを求むと尋ぬとせしほどに
明けにけり明けにけり さらさらさやけの秋の夜は


というものです。
「あなたのお気に入りの笠が風に吹かれて飛んでいってしまった。たいへんたいへん、と二人で追いかけて探して走って……そうしているうちに秋の夜がしらじらと明けてしまったの」
ということを歌っていて、実際には解釈はいろいろあるようですが、私には恋する二人の笑い声と鴨川のさらさらとした美しい秋の夜明けが浮かびました。川の流れと時間の流れがあって、いくつかのシーンを描けたら面白いなと思っていて。

藤井:情景が思い浮かぶ素敵な歌ですね。夜から朝へ、時系列を絵で表すなら絵巻物は良さそうですね。シーンごとに紙を変えて印刷してつなげてみるのも面白そうです。デジタル印刷の特長も出せそうですね。

いえだ:絵巻物なら、合わせて箱も作れるといいですね。一緒にプランを考えてみたいです。

藤井:そうですね。では、作品の仕上げは絵巻物でいきましょう。用紙や加工方法も検討しながら進めていきましょうか。
いえださんは作品の構想をスタートしていただけますか?

いえだ:承知しました。いろいろな紙を試せるのも楽しみです。まずラフスケッチを進めていきますね。
<9月公開予定の後編へ続く>

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