新 今さら聞けない印刷の基礎知識①
デジタルカメラの基礎知識

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高品質な印刷物を制作する場合、印刷適性に優れた高画質な写真原稿を用意する必要があり、写真撮影の段階で注意すべき点があります。現在はデジタルカメラによる写真原稿の入稿が主流となっていますが、ここでは「今さら聞けない」新シリーズ第一弾として、「デジタルカメラの基礎知識」をお届けします。撮影についてのワンポイントアドバイスもありますので、ぜひご活用ください。


(1)デジタルカメラの基礎知識

① 一眼レフとミラーレス
レンズ交換が可能で詳細な撮影設定が可能なデジタルカメラには「一眼レフ」と「ミラーレス」があり、これらを総称として「デジタル一眼」と呼んでいます。
一眼レフの特徴は、実際に撮影するイメージ(像)を光学ファインダーで見られることで、レンズを通った光を導くためのミラー(レフ)があります。
一方、デジタルカメラではセンサーからの画像情報を直接液晶モニターに表示できるので、光学ファインダーの代わりに背面液晶モニターや電子ファインダーで撮影イメージ(像)の確認が可能になりました。ミラーレスはミラーやペンタプリズムといった一眼レフの機構をなくし、軽量小型化されているのが特徴です。

<一眼レフの基本構造>

一眼レフの基本構造図解

② センサー(撮像素子)と画素数
デジタルカメラの画像は小さな点の集まりでできており、この元になるのがセンサーにある「画素」です。たくさんの小さな画素が被写体からの光を受けて画像の点を作っています。このセンサーの画素の数を「画素数」、画像を作っている点の数を「ピクセル」と呼びますが、一般的には同じ意味で使われています。センサーには主にCCDとCMOS(シーモス)があり、光を受けて画像を作る役割は同じですが、データの伝達方式などが異なっています。

画素数の表記と単位について
画素数≒ピクセル(pixel)
100万=メガ(M:MEGA)
例)2,600万画素=26メガピクセル=26M(6,240×4,160ピクセル)

センサーの大きさは一般に使われる写真フィルム(35㎜判)と同じ大きさの「フルサイズ」、少し小型のAPSサイズ、さらに小さい4/3型(フォーサーズ)などがありますが、富士フイルムにはフルサイズよりさらに大きい「ラージフォーマット(デジタル中判)」という大型センサーを採用したデジタルカメラ「GFXシリーズ」もあります。

画素数のフォーマット図解

同じ焦点距離のレンズでもセンサーサイズが違えば画角(どの範囲が写るか)が変化します。さまざまなセンサーサイズが存在するデジタル一眼では35ミリフィルムサイズの焦点距離に換算した35㎜判換算:○○㎜相当という表現が用いられています。

画角の変化による焦点距離のイメージ図

③ 露出
露出とは「写真の明るさ」を決めることです。カメラのシャッタースピードと絞り、そしてISO感度の組み合わせで露出は決まります。シャッタースピードは被写体の「動き」を、絞りは「ボケ(ピントが合う範囲)」をコントロールする役割を持っています。
シャッタースピードと絞り値の組み合わせを工夫することで、撮影者の意図を表現した写真(画像)を作ることができます。シャッタースピードは1秒、1/1,000秒など秒単位で設定、絞りはF2,F16などの数値を調整し、露出を決めます。

シャッタースピードと絞りとISO感度の組み合わせ図解

ISO感度は「光に対する感度」を表したもので、数字が大きいほど光を効率よく取り込むことができます。薄暗い室内で撮影する際にISO感度を高く設定すると、シャッタースピード・絞りの組み合わせは変えなくても明るく撮影することができます。ただし、感度を上げ過ぎるとノイズや画像低下が起きてしまいますので、最適な感度を選択することも大切です。

写真撮影のワンポイント

(1)ポートレート(人物)撮影
ピントは顔(特に目元)に合わせ、絞りを開け(F値を小さく)、シャッタースピードを速く設定することで背景をぼかし、人物が浮き上がるような写真ができます。目にキャッチライトを入れるといきいきとした表情の写真になります。使用するレンズは背景がぼやけて人物が浮き立つ効果を出せる中望遠レンズがお薦めです。

(2)風景写真
風景撮影では高角レンズを使い、絞り値を絞って(F値を大きく)、シャッタースピードは遅めの設定にすることで、全体的にピントの合った写真にすることができます。また、望遠レンズを使って広大な景色から自分なりの景色を切り取ることも写真表現のひとつです。シャッタースピードが遅い時は三脚を使い、ブレ防止を忘れずに。

(3)物撮り(印刷原稿などの撮影)
反射原稿などを撮影するには、左右から投射するLEDライトが付いた専用撮影台を使用して、原稿を真上から撮影する「俯瞰(ふかん)撮影」がお薦めです。撮影状況(結果)の確認をするために、パソコンを使った「テザー撮影」が採用されています。

さらに詳しくお知りになりたい方には、さまざまなシーンでの写真撮影のポイントについて、以下で解説しています。ご参照ください。

デジタルカメラ撮影ガイド

④ 画像のファイル形式
撮影した画像は、「ファイル形式」と呼ばれるいくつかの方式で保存されます。
ファイル形式にはJEPG、TIFF、BMP、PNG、GIF、PSDなどがあり、ファイル形式ごとに画像の圧縮や容量などが違うため、使用用途によって保存方式も変わってきます。
また、「RAW画像」と呼ばれる、カメラのイメージセンサーが感知した情報のままの画像データもあります。これはJPEGなどのファイル形式にした際に起こる色情報の減少や画像劣化を避けるために、加工前の「生データ」として使用されます。
RAW画像は撮影された状態のままですので、メーカーやカメラごとに統一されていません。調整して使用できるようにすることを「現像」と呼び、RAW画像現像ソフトが各カメラメーカーやソフトメーカーから提供・販売されています。

(2)印刷で使うにあたって

①撮影画素数
撮影後に画像処理を行う際の画質の劣化を抑えるため、撮影はカメラの最高画質モード(最大画素数)で行うことが基本です。
一般的なカラー印刷(175線、350ppi)の場合、写真の印刷サイズごとに必要な撮影画素数は、次のようになります。

印刷サイズ ピクセル換算(350ppi) 必要な撮影画素数
L(89mm x 127mm) 1,220 x 1,750 200万画素
2L(127mm x 178mm) 1,750 x 2,450 400万画素
B5(187mm x 257mm) 2,580 x 3,540 900万画素
A4(210mm x 297mm) 2,890 x 4,090 1,200万画素
B4(257mm x 364mm) 3,540 x 5,020 1,800万画素
A3(297mm x 420mm) 4,090 x 5,790 2,200万画素

➁画像データの保存形式
撮影時の画像データは、RAWデータかTIFF形式で保存します。ファイルサイズは大きくなりますが、一般的に利用されているJPEG形式のように保存時の画質劣化がありません。ただし、RAWデータは印刷への入稿時には現像済みの画像ファイル(TIFF形式など)に変換しておきます。

③カラーモード
デジタルカメラで撮影された画像はRGBカラーモードですが、オフセット印刷で使用される場合はCMYKに変換されます。CMYKで表現できる色域はRGBより狭いので、変換時に色見が変わる場合は調整が必要になります。この際、モニター画面・プリンタ・照明などのカラーマネジメント環境が適切に管理されていることが重要となります。
また、最近のインクジェットデジタル印刷では、表現できる色域がオフセット印刷より広いため、上述のようなCMYK変換をすることなしにRGBモードのまま入稿し、印刷するケースもあります。

カラーモードグラフ図

以上、「デジタルカメラの基礎知識」をお届けしました。デジタルカメラによる写真入稿が主流となった今、この記事がお客さまの業務の一助になれば幸いです。

富士フイルムは、「総合写真メーカー」として写真画質を追求し続け、独自の画像・光学技術でデジタルカメラの概念を変えてきました。そんな「高画質へのこだわり」をご紹介する記事はこちら。

デジタルカメラ 高画質へのこだわり


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