新 今さら聞けない印刷の基礎知識②
プリプレス(製版)の基礎知識

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新今更聞けない2_コラム

オフセット印刷物を製作する工程のひとつであるプリプレスとは、字のごとく印刷(Press)の前(Pre-)の工程を指し、「製版」とも呼ばれます。昨今では刷版が不要なデジタル印刷機も普及していますが、ここではデザインデータをもとに、オフセット印刷で使用する刷版を作るまでの工程を、新シリーズ第2弾「プリプレスの基礎知識」として解説します。

1.印刷工程と説明箇所

※本記事ではプリプレス工程の中でもDTP編集、面付け、CTP出力に関わる部分について記載しています。

(1)DTP

DTPとはDesk Top Publishingの略で、机上(Desk Top)のコンピューターで印刷物を制作し、プリンターから出力して出版(Publishing)するという発想から生まれた言葉です。DTP以前はフィルムを切り貼りして作業していましたが、現在はコンピューターを使っての作業がほとんどです。主にWindows PCやMacintosh上で、Adobe社などのソフトを使用して文字入力や画像処理(色調補正、画像修正、切り抜き)、イラスト作成、レイアウト作業を行います。

2.DTPソフト一覧

また、DTP作業では、印刷物を製作するために必要な処理や設定を行います。墨文字(黒い文字)やイラストの輪郭に白のフチがでないようにする「オーバープリント」や「トラッピング処理」、紙面端にも色がある場合に行う「塗り足し処理」などがあり、「トンボ」と呼ばれるマークの配置もその一つです。
カラー印刷物の製作では、CMYKなど複数の色版を重ねて印刷するので、印刷時の目印としてトンボを印刷物の周囲に配置します。トンボは、全ての色版に配置されるように「レジストレーション」という色で描画します。

3.M見当ズレ
印刷時にトンボを見るとずれている版が分かります
4.裁ち落とし
トンボに合わせて断裁したり折ったりします

Point!

最近はMicrosoft Office(WordやPowerPointなど)のデータの入稿も増えていますが、印刷用のCMYKカラーではなくRGBカラーで作成されていたり、塗り足しがないデータが入稿されることも多く、注意が必要です。

(2)PDF

異なる部門や会社間でデータの受け渡しをする場合、PDF(Portable Document Format)やアプリケーションデータを用いますが、MacやWindowsといったプラットフォームや作業ソフトウェアに制限がなく、同じレイアウトを再現できるPDFが幅広く利用されるようになりました。元データと比較してデータサイズが小さく、フォントや画像が含まれており、添付忘れやリンク外れなどの問題もありません。
もともとPDFはモニター画面での閲覧を前提にしたフォーマットのため、印刷に利用する場合には、印刷機からの出力に適したフォーマットで作成する必要があり、誕生したのがPDF/Xです。PDF/Xには主に以下の3つがあり、PDF/X-1aとPDF/X-4が使用されています。

5.PDFフォーマット一覧

(3)プリフライト

データの不備で品質不良が発生することも珍しくありませんが、全てのデータをチェックするのは手間と時間がかかるため、データの不備を自動的に検出してくれるプリフライト処理を行うソフトやシステムがあります。
印刷事故の要因となるような「低解像度画像」、「フォント埋め込みがされていない」、「細すぎる罫線」などを瞬時に判別できるため、外部から持ち込まれたデータのチェックには特に便利なシステムです。

6.低解像度ひまわり
モザイク状になってしまう低解像度画像
7.線幅
Adobe Illustratorでの線幅設定値が小さすぎる例
(0.1mmか0.25pt以上で作成が一般的)

Point!

データの不備によっては自動的に修正が可能なシステムもあり、修正業務の効率化が図られています。


(3)面付け

印刷後に製本する場合、面付け設計が非常に重要です。冊子や本のデータを印刷する場合、1枚の紙に1ページずつ印刷するのではなく、大きな紙にページを並べて印刷し、紙を折って製本します。そのため、印刷用紙にはページ順を工夫して配置する必要があります。印刷後の断裁や折りの順番、方向によって適正なページ順と向きが決定されます。ページ面を付け合わせることから面付けと呼ばれます。面付けの中でも同じ物を並べることを殖版と呼びます。

8.面付け画像
折って断裁するとページが順番に並びます
9.殖版
ペラ(端物)などは殖版して印刷します

Point!

冊子の面付けは向きや配置順が複雑なので、専用の面付けソフトや面付け機能を持っているRIPを使用することで間違いを防止します。


(4)RIP・CTP

RIPとはRaster Image Processorの略で、DTPで作成したさまざまなデータをCTPに出力できるビットマップのデータに変換する処理(装置)のことです。オフセット印刷ではCTP(Computer To Plate)による刷版作成が主流となっています。DTP工程で作成されたデータを直接版に出力して印刷版を作るシステムのことです。

10.RIP、CTP

オフセット印刷ではDTPデータをRIPで下図のようなスクリーン(網点)データに変換しています。点の大・小によって濃淡を表わします。スクリーンには規則正しく網点が配置された「AMスクリーン」や、微小ドットをランダムに配置した「FMスクリーン」などがあります。AMスクリーンでは、1インチ(2.54cm)あたりにある網点の数をスクリーン線数と言い、一般的なカラー印刷ではスクリーン線数175線で印刷されており、300線以上で印刷されたものを高精細(印刷)と言います。FMスクリーンではディティール再現が向上し、モワレやロゼッタパターンの発生を抑えて使用インキ量が削減できるなどのメリットがありますが、印刷機のメンテナンス状態に影響を受けやすくなるため、印刷機の管理をしっかり行うことが重要です。

11.網点

Point!

近年は現像処理が不要な「無処理版」が普及し、自動現像機の管理負荷や廃液などによる環境負荷の低減が進んでいます。


以上「プリプレスの基礎知識」をお届けしました。
オフセット印刷だけでなく、デジタル印刷機による印刷物製造も増加しています。オフセット・デジタルの両方に活用できる知識も多く、この記事が皆さまの業務の一助となれば幸いです。

※ MacintoshはApple社、Adobe社製各ソフトウェアはAdobe社、Windows、Office、Word、PowerPointはMicrosoft社の登録商標です。

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