2月5日(水)~7日(金)に開催された「page2020」(JAGAT主催、東京・池袋サンシャインシティコンベンションセンター)において、富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ(以下FFGS)は「昨日までの営業スタイルを変える。」をテーマに掲げ、その取り組みの一つとして、FFGSが印刷会社となりクライアントへプロモーションの提案活動を行い、モデルケースとしてご紹介しました。
クライアントはオペラ歌劇団Kamite(カミテ)様で、3月の公演を前に、観客の高齢化という課題を抱えていました。そこでFFGSは、印刷物を主軸に置いたプロモーションを提案し実践。公演後、Kamite様からは、「魅力的な内容で品質の高い印刷物は、新規顧客の獲得やリピーター客の定着に大きな期待が持てる。今後はグッズ販売も検討したい」と評価をいただきました。観客の皆さまからも、「お礼状をもらってうれしい」「グッズがほしい」などの具体的な感想があり、効果を裏付ける結果を得ることができました(詳細は後述します)。
また、提案活動の内容と効果的な提案型営業についても考察します。
※歌劇団Kamite(カミテ)
2014年より、東京・多摩地域を拠点にオペラの楽曲を中心とした舞台活動を行う。企画は若手演出家の舘亜里沙氏が務め、現在は年度に1本を目標としたオペラ公演と、若手アーティストを中心としたコンサートシリーズを開催している。
印刷提案でクライアントの課題解決と目標達成を実現する
提案においては、クライアントの課題解決や目的達成を念頭に置き、オペラ業界全体の課題を調査するとともに、Kamite様にヒアリングを実施。今回の公演では、いかに効果的なプロモーションを打ち集客に結び付けるかが大きなテーマとなりました。集客については、若年層を中心とした新規顧客の獲得とリピーター客の定着(固定客)の2つを柱に置きました。
公演の規模は大きくはないことから、プロモーションは印刷物を中心に構成。課題の重要性や大きさ、効果などを考え、次のように段階を踏みながら提案の幅を広げていきました。
Step 1:新規顧客の獲得
ポスター、チラシ、パンフレット、チケットなど、公演の集客に必要な基本的なツールを制作
Step 2:リピーター客の定着
VIPのお客さまに対して、会場でのグッズ販売と公演後のお礼状(手紙)を送付し、顧客満足度を向上
Step 3:グッズ販売による収益アップ
会場で購入できるおみやげとして、クリアファイルやオペラグラスなどのグッズを制作して販売し、主催者の収益アップと顧客のリピーター化を促進
※Step 2、Step 3のグッズ販売については、今回は見本の展示のみとなりました。
Kamite様へ提案したさまざまなプロモーションツール(「page2020」での展示風景)
Stepを踏みながら提案を広げていくことで、最終的に当初の目的にはなかったStep3までの受注拡大につながりました。
小ロット・多品種の多彩な提案を実現するために
小ロット・多品種のツール展開は、納期や費用の面から断念せざるを得ないケースもあります。しかし、デジタル印刷を活用してその問題をクリアし、多彩なツールを提案することで、クライアントの満足度向上につなげることができます。
今回はFFGSや富士ゼロックスのショールーム機や、協力ベンダーの設備を活用して制作を行いましたが、印刷会社が提案する場合は、自社の設備をはじめ、協力会社の設備を最大限に活用することが重要だと考えます。クライアントの要望に応じて、大ロットから極小ロットまでさまざまな商材を生産できることが、柔軟な対応力の鍵となるからです。
デジタルデバイスを活用したワークフローを構築し、
スピーディーかつ円滑な制作環境を実現
デザイン制作においては、若年層の新規顧客を増やす目的から美術大学生8名でチームを結成。フレッシュな視点で制作を行ってもらいました。
制作環境は、Webで校正や修正指示ができる「XMF Remote」を中心にワークフローを構築。進捗の見える化、デザインデータの一元管理、Web会議を併用することで全体の効率化を図り、企画開始から実践まで約1カ月半という中で、多彩なツールの制作をスピーディーかつ円滑に進めることができました。
印刷の表現力ときめ細かな提案・対応が高く評価
充実したプロモーションツールを携え、期待とともに公演日を迎えました。新型コロナウイルスの影響で開催が危ぶまれましたが、VIP層のお客さまからの強い要望もあり、3月8日に制限付きで催されました。5%程度のキャンセルは出たものの、目標の約90%の集客を得て、公演は大盛況のうちに幕を閉じました。
■プロモーションの効果を検証
公演の後日、一部の来場者に対して、今回のプロモーションに関するアンケートを実施。集客やリピーター客の定着に効果があることを確認できました。
■Kamite様のご感想
「今回のプロモーション企画を進めるにあたり、初めて行うものばかりで当初は不安もありましたが、公演を迎えるとそんな気持ちは吹き飛びました。魅力的な内容と品質の高さ、そして集客の面において、印刷物の可能性を感じたからです。
例えば会場に掲示したポスターは、お客さまが一緒に記念撮影をするなど、関心を集めていました。ホールの運営者からも、良い雰囲気が生まれたと好評でした。
ポスターだけでなく、チケットやチラシなどのさまざまなツールも、公演を盛り上げてくれたと思っています。特に、チケットは演者が手売りすることもあるのですが、チラシと一緒に手渡すことでお客さまにさらに興味を持っていただくことができ、集客をひと押ししてくれました。公演当日は、若い方を含めさまざまなお客さまがいらっしゃいました。
グッズの見本展示については女性のお客さまからの評判が良く、今後、グッズ販売の展開に期待が持てると思いました。
今回の一連の活動から、集客やお客さまの満足度向上につながる印刷物の効果を感じるとともに、今後の活用を検討する良い機会になりました。」
公演当日の様子
提案型の営業スタイルの可能性
今回の活動から、クライアントへ新たな提案活動を行うことは、具体的であるほどクライアントも前向きに検討することが分かり、継続受注や他案件の新規受注につながる可能性も見いだすことができました。
また、印刷会社側としても、クライアントの課題に即した提案となるため、その提案力・対応力こそが他社との差別化につながる利点があると考えられます。
■提案型営業を実現するためには
①「印刷営業が提案内容を検討し、実施するための時間創出」と、②「短納期・小ロット・多品種などクライアントの要望に応えられる生産体制の構築」の両方が必要です。
限られた予算や時間の中でも、提案型の営業スタイルへと変えていくために──FFGSでは、提案型営業をサポートするさまざまな製品やソリューションを提供しています。ぜひお気軽にご相談ください。