社会全体におけるデジタル化の急伸、ライフスタイルや働き方の多様化などの影響により、印刷製品の小ロット・多品種化はますます加速しています。また、慢性的な人手不足や資材の高騰など、印刷ビジネスを取り巻く経営環境は先が見通しづらい状況が続いています。
これに対応する手段の一つとしてデジタルプレスの活用が注目されており、導入がさらに加速していくことが予想されます。
そこで、今注目されているデジタルプレスの効果的な活用について解説する新シリーズ、「今さら聞けない デジタルプレス活用編」をお届けします。第1回となる今回は、デジタルプレスの効率的な運用に不可欠な「印刷品質の管理」について解説します。
オフセット印刷の課題
小ロットのジョブが増えると、オフセット印刷機では印刷時間に対して準備時間の割合が多くなったり、損紙率が高くなったりと、無駄が増えてしまいます。さらにオフセット印刷機の習熟には時間が掛かるため、製造業全般で人手不足が深刻化する中で印刷オペレーターの確保や育成も課題となってきています。
これらの課題に対しては、デジタルプレスとオフセット印刷機の併用が効果的です。最新のデジタルプレスはオフセット印刷と遜色ない印刷品質を実現しているため、中ロット以上のジョブはオフセット印刷機、小ロットのジョブはデジタルプレスと使い分けることで、印刷工程全体の効率化が図れます。
また、デジタルプレスはオフセット印刷機と比べて操作の習得が容易で、印刷オペレーターの育成も短期間で行えるため、オペレーターの人手不足解消にも有効です。
オフセット印刷とデジタルプレスの併用による最適な生産体制を実現するには
オフセット印刷とデジタルプレスを効率よく併用するために重要なポイントの一つが、印刷品質の管理です。ジョブに合わせて印刷機を柔軟に運用するためには、オフセット印刷・デジタルプレスを問わず、どの印刷機でも安定して一定の印刷品質を出せるようにする必要があります。
では、印刷品質を安定させるにはどうすればよいでしょうか。
1.共通の色基準の策定
オフセット印刷機・デジタルプレスを一定の色品質で印刷するためには、全ての印刷機が共通の色基準で統一されている必要があります。オフセット印刷機は基本的にベタ濃度とドットゲインによって色を合わせますが、それは簡単な作業ではありません。それに比べてデジタルプレスの色合わせ(カラーマッチング)は、ソフトウエアによりプロファイルを作成することで行うため、容易に高い精度で行うことができます。そのため、色基準の策定はオフセット印刷機を基準とし、デジタルプレスをそれに合わせることが望ましいと言えます。
また、基準を作成するオフセット印刷機が安定した品質で印刷できるように、事前に調整することも重要です。基準となる印刷機のドットゲイン形状や網点品質、面内ムラなどが安定しないと、色合わせの精度が悪くなり、色の統一が図れません。
そして、調整されたオフセット印刷機で作成した色基準となる印刷物を元に、デジタルプレスでプロファイルを作成して各デバイスの色を合わせることで、オフセット印刷機とデジタルプレスの印刷品質の統一が可能となります。
2.印刷品質の維持・管理
策定した色基準を安定して再現し、印刷品質を維持するには、オフセット印刷機のメンテナンスはもちろん、資材や生産現場環境などの管理も不可欠です。まずは印刷品質維持の土台となるオフセット印刷機を日々のメンテナンスで安定させ、その上で、策定した基準で色を数値管理することで、安定した色基準を繰り返し再現することが可能となります。
もしオフセット印刷機が安定していない状態で印刷を行うと、刷り出しで色合わせに時間が掛かるのに加えて、クレームや刷り直しにもつながる場合があります。コストや時間の無駄が生じるだけでなく、最悪の場合はクライアントからの信頼を損なうことになりかねません。
オフセット印刷機のメンテナンスを土台として、良好な印刷品質を実現するための要素を積み上げていく管理方法を、富士フイルムグラフィックソリューションズ(FFGS)では「品質管理のピラミッド」と呼んでいます。
オフセット印刷は、まだまだ印刷会社の売り上げの主力です。しかし小ロット化が進む中で、利益を確保していくには、先述のとおりデジタルプレスの活用による生産性の向上や無駄の削減が有効です。オフセット印刷機とデジタルプレスを効果的に活用できる最適な生産環境の構築や、構築した環境の維持のためにも、オフセット印刷とデジタルプレス両面での印刷品質管理が重要となります。
FFGSではお客さまの生産環境に合わせて、品質管理においてもオフセット印刷からデジタルプレスまでトータルにサポートしています。お気軽にご相談ください。