印刷会社にとって、進行中や過去のジョブデータの管理やクライアントとのデータ授受など、データの管理運用は普遍的なテーマです。特に、セキュリティーに関しては年々そのニーズが高まるにつれ、クライアントから新たな対応が求められ、印刷会社側の負担が大きくなっています。弊社でも、お客さまより「データ管理」や「データ受け渡し」などについてご相談を受けた際、現状の運用や課題を確認すると、システムや設備の入れ替えだけでは解決できず、運用の改善まで必要になるケースが増えています。
今回は、印刷会社の「よくあるお困りごと」を基に、「印刷会社のデータ管理/運用」について解説します。
印刷会社が抱えているお悩みごと
こんなお困りごとはありませんか?
- ・在版データを保管しているメディアが増え続けていて何とかしたい
- ・無償でクライアントのデータを保管し続けるのは限界がある
- ・万が一に備えて、さらなるバックアップを検討してBCP対策をしたい
- ・自社の資産なので、デザイン/制作データはできるだけ保存しておきたい
- ・クライアントや委託先とのデータ受け渡しを安全に行いたい
- ・定期案件のコンテンツデータをクライアントとセキュアに共有したい
- ・サーバーのフォルダ管理運用でミスや事故が発生してしまう
これらのお困りごとは、以下の用途に分類して検討することをおすすめします。
①データの受け渡し・共有
②アクティブデータの管理・保管
③データの長期/永久保管
「①データの受け渡し・共有」について
メールや無料ファイル転送サービスは簡易的で便利ですが、セキュリティー面で懸念があります。2020年11月、デジタル改革担当相が、PPAP(Password付きZIPファイルの送付、Passwordの送付、Angoka(暗号化)、Protocol(プロトコル)の略)について中央省庁での廃止の方針を発表し、内閣府と内閣官房においてPPAPが廃止されました。今後、よりいっそうセキュアな受け渡し方法が求められます。
●FTPサーバー
インターネットが一般に普及したころから活用されている歴史ある方法ですが、一方でセキュリティーが確保されていないサーバーも多いため、クライアント側からFTPの利用を制限される場合があります。
●クラウド型ファイル管理・共有サービス
データ容量やアカウント数により金額が変動する料金体系が多いですが、セキュリティー面での安全性が高いサービスが多いです。また、ファイル属性の管理や申請の機能などがあるサービスであれば、クライアントとのコンテンツ共有としても利用可能です。
「②アクティブデータの管理・保管」について
進行中のジョブに関わる画像や文書データなどのアクティブデータを管理および保管するには、「クラウドストレージ」を契約するか、自社にサーバーを設置する「オンプレミス」があります。FFGSが印刷会社に導入をご提案する際の考え方を基に、それぞれの特徴を項目ごとにご紹介します。
●コストとデータ容量
クラウドは設備導入の必要がないため、初期費用を抑えることができます。データ容量については無制限のケースが多いですが、一般には契約容量を増やすに従い、月間や年間の利用費用が増加します。
一方、オンプレミスでは設備導入費や保守費用が主なコストです。データ容量については、HDDの大容量化などにより、大容量のサーバーが構築しやすくなっています。
弊社にご相談いただいた印刷会社では、大容量データの管理でコストメリットが出るオンプレミスをベースに導入し、必要に応じてクラウドを追加契約されるケースが増えています。
●保守/管理
クラウドは委託管理できる内容に制限がありますが、管理の手間を低減できます。
オンプレミスは管理担当者が必要ですが、自社に置いた設備を自社で管理でき、業務を完結できます。
●運用/セキュリティー
クラウドでは多くの場合セキュアなサービスが用意されていますが、サーバーが自社にないため、データのアップロード・ダウンロードをする際には、その都度インターネット経由でアクセスしなければいけません。回線の契約状況によっては時間がかかる懸念があります。
オンプレミスの場合は、自社でセキュリティー対策をしなければいけませんが、外部公開をせず、ローカル環境で運用するのであれば、セキュリティー面の対策に比較的取り組みやすいといえます。
「③データの長期/永久保管」について
多くの印刷会社では、納品後のデータを数年~半永久的に自社保管しているのではないでしょうか?
これまではDVDやHDDなどのメディアで保管している印刷会社が多かったのですが、近年はデータ量が肥大化していることもあり、メディアの管理や保管についての相談が増えています。
長期/永久保管では、前述のアクティブデータの管理の場合よりも大容量のデータ保管が必要となるため、オンプレミスを選択することが多く、さらに容量によっては、長期保管が可能な磁気テープへの保存も注目されています。価格面からクラウドサービス上に保管する印刷会社もいらっしゃいますが、クライアントにアクセスを許可した場合やクラウドロックインのリスクについても検討することをおすすめしています。
※クラウドロックイン:企業内のシステムにおいて、単一のベンダーが提供するクラウドサービスにより、自社の環境が縛られている状態
まとめ:印刷会社向けデータ管理のご提案例
ここまでの情報を基に、「①データの受け渡し・共有」「②アクティブデータの管理・保管」「③データの長期/永久保管」の各用途に向けて、一般的なご提案例を紹介します。
①データの受け渡し・共有
→
クラウド型ファイル管理・共有サービス
②アクティブデータの管理・保管
→
ローカル環境でのデータベースサーバー
③データの長期/永久保管
→
磁気テープで保存
さらに、下記のように各種サービスやサーバーをAPI連携し、運用する事例もあります。
今回は、多くの印刷会社の「よくあるお困りごと」に基づいて解説しました。具体的に導入を検討している印刷会社には、個別の状況をしっかり整理することで、さまざまな選択肢の中から最適なソリューションをご提案しています。ぜひFFGSへご相談ください。
印刷会社が抱えるデータのお悩みにお応え! 補足資料はこちらから
●補足資料の内容
データのお悩みを3つの用途に整理し、実際の運用イメージをお伝えします。
①データの受け渡し・共有
②アクティブデータの管理・保管
③データの長期/永久保管
●補足資料のサンプル
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