いよいよ最終回となりました。
これまで2回にわたって、DMの可能性とその考え方の基本となるお話をさせていただきましたが、今回は魅力的な印刷技術をベースに、「顧客の感情を刺激するDM」について私のアイデアをいくつかご案内しようと思っています。
人は「特別扱いされる」のを喜ぶ。
DMの写真を見て、思わず驚く仕掛けとは?
行きつけのレストランで、「あなただけへのサービスです」と言われて、特別な一皿を出されて喜ばない人はいないでしょう。DMもまさに同じです。
写真の中の文字を宛先に合わせて変えられる「イメージバリアブル」を可能にする富士フイルムの技術がありますが、これを活用するのも面白いアイデアです。
例えば、アンティーク腕時計のショップが、誕生日を迎える顧客にDMを送ったとします。封筒は窓あきになっていて、そこから見える写真にはアンティーク腕時計と共にバースデーケーキとカードが添えられています。
写真を見た瞬間、受け取った方は急いでDMを開封することでしょう。
その理由とは、ケーキに「HAPPY BIRTHDAY 紘一」と自分の名前が入っているからです。さらにカードには「田中紘一様 最高のギフトをご自身へ贈られてはいかがですか」と、メッセージが書かれています。これを見た顧客は「自分のためにここまでしてくれたのか!」と喜び、お店への好感度は爆上がりするのではないでしょうか?
このクリエイティブには2つのメリットがあります。一つ目はDMの開封率が上がること。そして、顧客を特別扱いすることで気持ちを高揚させて、クロージングへのステップを容易に進められる点です。
「Form Magic」によるイメージバリアブルサンプル
さらにもう一つ、こんな面白いアイデアもご紹介します
昔、教科書にパラパラ漫画を書いた方もいると思います。バリアブルソフトとデジタル印刷機を活用すると、宛先ごとに小冊子の各ページに異なる画像や文字が印刷できます。
例えば「田中紘一様 35歳の誕生日を祝して。最高のギフトをご自身へ贈られてはいかがですか」という文字を数ページにわたって、パラパラ漫画のように「動く文字」として印刷することも可能です。
「動く文字」サンプル動画
印刷会社の皆さんからは常識的な技術と思われるかもしれませんが、一般の人には「印刷物が動く」こと自体が特別なクリエイティブと受け止められるでしょう。受け取った方は気持ちを高揚させるだけでなく、友人や家族、またはSNSでこの小冊子を見せる可能性も高いのです。
当然、見せられた方もこのDMを送った企業へ関心を持つに違いありません。つまり、ブランディングを高める効果があるわけです。
ブランディングの効果は、時が経つほどにボクシングでいうボディブローのように、見込み客の心にジワジワと効いていきます。
リストがなくても紙DMが送れる日本郵便のサービス
既存顧客へのアプローチが売り上げを伸ばす一番の近道であり、だからこそ「顧客リスト」には価値があるというお話をしました。
しかし、「顧客リストがなく、どうしても新規顧客へアプローチしたい」というクライアントもいるでしょう。
その要望を叶えるのが、日本郵便の「かもめタウン」「年賀タウン」「タウンプラス」というサービスです。その大きなポイントは、宛先がなくても「○○○○町の○○丁目」または、「特定のマンションなどの集合住宅」というふうにエリアを指定することで、そこの住民へ一斉にハガキDMを配布することが可能なことです。
つまり、街の商店などが特定エリアの住民をターゲットとして狙う場合、新規顧客獲得に効果が高いサービスと言えるのです。
例えば、ある焼き肉店ではこのサービスを使って、事前に見込みの高いエリアを特定して配布したこともあり、なんと20%の来客を実現したそうです。
つまり、ハガキを送った10人のうち2人が来店したのですから大成功と言っていいでしょう。しかも、この2人は一度だけの来店ではなく、今後も継続して来てもらえる常連客になりえます。
もし複数店舗を持つレストランなら、店舗のエリアごとにお勧めのメニューや来場特典を変えるのも効果的でしょう。
例えば、イタリアンレストランチェーンで、「○○地区の皆さま限定メニュー登場。ハガキをご持参の方にデザート無料進呈」という特典をシズルある写真と共に送るのです。
そこで活用できるのが富士フイルムのデジタル印刷です。これはオフセット印刷と同等のクオリティーを実現しながら、小部数印刷でコストが抑えられます。
一度に何万部も同じ内容のDMを印刷するのではなく、最も効果的なクリエイティブを小ロットで印刷するわけです。特に、富士フイルムのデジタル印刷はゴールドやシルバーなどの特殊色印刷も可能であるため、ハガキなどチープになりがちなデザインを、クオリティー高く見せることにつながります。
デジタル印刷(Revoria Press™ PC1120 )によるDMサンプル。
ゴールドやシルバーを活用した特殊色印刷により、手に取った瞬間華やかな印象を与える
デジタルミックスによる、紙DMの新たな可能性
本連載の第1回でもお話ししましたが、紙DMを見た後に「問い合わせをした」「来店した」といった何らかの行動をした人は22.4%※もいることがわかっています。そして、行動したという方の中で一番多いのが「ネットで調べた」であるという結果が出ています。
今ならスマホで調べる人が多数派ですから、「紙DM⇒スマホ」という行動パターンが読み取れるわけです。
そこで、デジタルミックスの手法をご紹介します。
例えば、住宅展示場への集客を図るハガキDMに「ご来場プレゼント」として、QRコードを印刷しておきます。このQRコードをスマホで読み込むと、来場特典で何が当たったのかがわかります。コインを入れておもちゃを当てる「ガチャガチャ」のように、顧客の高揚感を上げて来場へのモチベーションを高めることができるのです。
店舗イベントでの集客をもたらす方法にゲームを取り入れるのは有効な手段です。BMWのショールームイベントでも、よく抽選会をゲーム方式にして集客のフックにしていました。
しかも、最近では上記に加え、DMの効果測定ができるという利点を持つサービスもあります。
その他にもQRコードをDMに入れ、LINE公式アカウントへの登録を促したり、YouTubeにつなげたりすることで、商品やサービスの詳しい情報をお知らせすることも可能です。
しかも、それらSNSは無料のサービスも多く、顧客とのコミュニケーションコストを抑えることも可能になります。
※JDMA(一般社団法人 日本ダイレクトメール協会)調査
最後に
さて、本連載も今回で最終回となりましたが、いかがだったでしょうか?
第1回では、「デジタル全盛の時代にあって、実は紙DMは高いポテンシャルがある」ということをご説明しました。そして、第2回では「マーケティングの基本的な考え方」や、「コピーライティング」についても、多少ですが触れてみました。第3回では、「具体的な紙DMのアイデア」もご紹介しましたので、今後、御社がクライアントへご提案する際にお役立ていただければと考えています。
3回にわたって執筆してきましたが、書ききれないことも多く、よろしければ私の著書『小さな会社だからこそ、DMは最強のツール!』をご覧いただき、内容を補完していただければと思っています。
また、10月には現場の方にとってより参考になるウェビナーも予定しています。私の性格上、堅苦しい感じではなく、「ちょっとお茶でもしながら、お話ししましょう」という雰囲気のセミナーになると思いますので、お気軽にご参加ください。
それから営業的な話で恐縮ですが、個別のコンサルや企画・コピー制作などもお受けできますので、ご検討いただければ幸いです。nakamurabrown@gmail.comへご連絡ください。
中村ブラウン氏講師による「秘密厳守のシークレットセミナー」
10月21日に開催決定!
優れたDMには方程式があります。本セミナーでは、DMに造詣の深いマーケティングコンサルタントの中村氏を迎え、実際のお仕事におけるDM活用の法則についてご紹介いたします。印刷会社の皆さまが現場で抱えている悩み事を題材に、改善策をセミナーで直接ご教授いただきます。現場の悩みが浮き彫りになり、まさに自分事としてDMを考えるきっかけになることでしょう!
なお、本セミナーでは、各社のクライアント様に関係することもお話しいただく可能性があるため、秘密厳守でのシークレット開催としています。お申し込み時にセミナー内容を口外しない旨をご同意いただきます。あらかじめご了承ください。
著者紹介
中村ブラウン
電通グループの広告代理店等にて、シニアコピーディレクターとして、25年以上にわたってBMWのブランディングを支えてきた。全日本DM大賞などの受賞歴を持ち、ダイレクトマーケティング全般に深い造詣を持つ。著書『小さな会社だからこそ、DMは最強のツール!』(WAVE出版)はネット全盛のマーケティングに斬新な切り口を与えている。本記事を深く理解する上でも、一読をお勧めする。
DMなど集客のご相談は、nakamurabrown@gmail.comへ。
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DMは最強のマーケティングツール』シリーズ
【第1回】デジタル全盛の今、なぜ紙DMが注目されているのか? プレゼンを勝ち取るヒントとは?
【第2回】DMの企画プレゼンで注意すべき点とは? 優れたDMには方程式がある