富士フイルムビジネスイノベーション(以下富士フイルムBI)主催、FFGS共催のイベント『経営変革セミナー2021 Winter Add Value from DX ~アフターコロナのディレクション~』が、昨年12月2日・3日の2日間にわたり、富士フイルムBIショールーム(東京・仙台・大阪・福岡)およびオンラインにて開催された。
このセミナーは、印刷業界の経営者向けに、アフターコロナを見据え現状を打破するためのヒントを提示する情報提供の場として企画されたもの。初日冒頭には、富士フイルムBIグラフィックコミュニケーション事業本部 グラフィックコミュニケーション営業部 部長・青木稔が、2日目にはFFGS社長・辻󠄀重紀がそれぞれ開会の挨拶を行なった。2日間でオンライン含めて約400名が来場し、DXの実践・戦略策定などに関する充実した講演・展示内容で好評を博した。
東京会場(中野坂上)では、展示コーナーも設け、『Revoria Press PC1120』をはじめとする最新のプロダクションプリンターのほか、ワークフローの効率化・自動化を実現するソフトウェア、各種後加工機などを、実演を交えて紹介した。FFGSは、最新のバリアブルソフトウェア『FormMagic5』の自動組版・バリアブル処理機能を実演したほか、販促DMなどにおける活用事例も紹介。さらに、ジョブプランニング・面付けソフトウェア『Phoenix』を活用したジョブ設計・面付けの自動化、製造コストの最適化といった、新たな生産スタイルを実現するソリューションも紹介した。
セミナーは、2日間で計20本を開講。今後重要な経営課題となってくるDXについて理解・活用するための講演や、具体的なソリューション・事例の紹介など、実践的な情報を提供した。
その中から、2日目に行なわれた富士フイルムBIによるソリューションセミナー「オープン化と全体最適で印刷ビジネスに変革を! ~統合型スマートファクトリーの実現へ~」について、要約して紹介する。
富士フイルムBI真茅社長による基調講演
展示コーナーでの『Revoria Press PC1120』の出力実演
『FormMagic5』の実演および事例紹介
【セミナーレポート】
オープン化と全体最適で印刷ビジネスに変革を!
~統合型スマートファクトリーの実現へ~
講師:富士フイルムBI グラフィックコミュニケーション事業本部 システムエンジニアリング部 SE技術グループ グループ長・丸林一憲
■3つの視点で印刷会社の持続的成長を支援
このセミナーでは、当社が考えるスマートファクトリーの姿と、その実現に向けて印刷会社の皆さまにどんな価値を提供していくのか、お話しさせていただく。
当社は2021年4月に、富士ゼロックスから富士フイルムビジネスイノベーションへと社名を変更した。富士ゼロックス時代は、デジタル印刷の領域を中心に皆さまのご支援をさせていただいていたが、これからは、富士フイルムブランドのもと、MIS・プリプレスなどの上流からオフセット印刷、デジタル印刷、そして加工まで含め、印刷会社の皆さまの課題解決をより総合的にご支援させていただく。そのために、富士フイルムグループのみならず他社ともアライアンスを組みながら、オープンイノベーションという考え方で個々のお客さまに最適なソリューションをご提供していく。
昨今、印刷業界においては、生産人口の減少といった従来からの課題に加え、コロナ禍がもたらした7割経済の中でいかに労働生産性を上げていくかが重要なテーマになっている。小ロット・多品種化が進む中でいかにフレキシブルな生産体制を整え、無駄なコストを抑えて利益を上げていくか。そして、いかにデジタルに強い人材を確保するか。
こうした課題に対して、私どもは大きく3つの視点で価値提供に取り組んでいる。一つは、「生産体質の改革」すなわちスマートファクトリー化。自動化・可視化・清流化された生産性の高いワークフローの構築を支援する。もう一つは、デジタルメディア連携。さまざまなデジタルメディアと印刷物とのシームレスな連携による、新たなマーケティングコミュニケーションを支援する。そして働き方改革。リモートワークなど、ニューノーマルに対応したインフラ整備を支援する。
■自動化によって実現する最適な生産環境=スマートファクトリー
現状、入稿から出荷までの印刷物製造工程の大部分は、人の手が介在している。そこでまず、各工程を繋ぐ部分を自動化していく。たとえば、面付けや校正、資材の搬送などである。その上で、ワークフローソフトウェア『Revoria One Production Cockpit』を活用してすべての工程を統合的にマネージメントすることにより、「最適生産」を実現する。これが、私どもが提案するスマートファクトリーの姿である。単純に自動化することを目的としているのではなく、あくまで「最適な生産環境」を実現するための手段として自動化を進めていくという考え方だ。
スマートファクトリーのお話をさせていただくと、お客さまから、「オペレーターを削減して省人化することなのか」「自動化すると生産性は上がるのか」といった質問をいただく。省人化や効率化、自動化は、手段として重要だと考えているが、目的は、最適生産を実現することである。
では、何をもって最適生産と言うのか。当社は次の3つの視点で考えている。
- ●最適なタイミング…フレキシブルなオーダーに迅速に対応できる効率的な生産体制。MA(マーケティングオートメーション)との連携によるタイムリーな生産体制。
- ●最適な量と品質…大ロットにも小ロット多品種にも対応できる、オフセット/デジタルのハイブリッド生産体制。自動化・省人化と作業品質の両立。
- ●最適なリソース…人手に依存しないフレキシブルな生産体制による、最適なコストでの運用。生産性を考慮した最適なリソース配置による印刷工程全体のマネージメント。
富士フイルムグループが考えるスマートファクトリー
■「人協働」「自律分散型」が自動化の重要ポイント
スマートファクトリー実現にあたっては、重要なポイントが2つあると考えている。
一つは、「人協働による自動化」。私どもが考える自動化は、機械化して人を減らすことが目的ではない。最適生産のための自動化なので、たとえば、品質を担保するための作業などは、人の力を活かした方がいい部分もある。また、人の作業を支援するための機械化という選択肢もある。自動化のレベルが上がっていったとしても、全体をマネージメントするスーパーバイザーとして人が必要になる。当社では、皆さまの作業品質を担保するために、各工程での実運用を考慮した最適なレベルの自動化をご提案している。
もう一つのポイントは、「自律分散型システム」。入稿から出荷・配送までワンストップで流れる一体型の自動化システムになっていると、ある機器が停止してしまった場合に全工程がストップし、生産性が下がってしまう。そのリスクを回避するため、工程ごとに自律したシステム化を行なうことによって、たとえば印刷工程で何か問題が起きても、プリプレスやポストプレスで流れているジョブを止めずに生産を継続できるようになる。
具体的なシステムのイメージとしては、Production Cockpitというワークフローソフトウェアを、各工程の自動化システムと連携させ、Production Cockpitから各工程に指示を送り、作業が完了するとそのステータスをフィードバックするという考え方。工程ごとの実績データもProduction Cockpitに蓄積できるので、そのデータをもとに、どの工程が非効率なのかを分析し、改善していくことが可能になる。
■スマートファクトリーがもたらす効果
最適生産の考え方は、お客さまのお仕事内容や設備環境などによって異なるので、まず当社がお客さまの現状を分析・可視化させていただく。その結果をもとに、どこに非効率な部分があり、どこを省力化できるのか、人・設備・工程などの観点からアセスメントした上で、どこを自動化するべきかをご提案する。
スマートファクトリー化がもたらす効果としては、大きく3つの要素があると考えている。
- ●リードタイム…工程間の歩留まりや待機時間の削減によるリードタイムの短縮。搬送などの単純作業の自動化による人作業の削減。
- ●生産の品質と効率性…自動化によるミス防止、作業効率・機器稼働率の向上。品質の向上・安定化。労災リスクの最小化。
- ●コスト…省人化による人手不足の解消や、フレキシブルな生産体制の実現による長期視点でのコスト低減。
スマートファクトリー化の取り組みステップ
次のページではスマートファクトリー化の提案事例を解説します。
(1)AGVを活用した省人化・無人化(工程間の無人搬送)
(2)協働ロボットを活用した省人化・無人化
(3)デジタルピッキングを活用した資材・在庫管理の省力化
(4)梱包・宛名ラベル貼り付けの自動化
(5)プリプレス(面付け)の自動化
(6)古い印刷機、加工機からの稼働状況の自動取得
(7)新工場設立における全体コーディネート
以下のページから提案事例の詳細をダウンロードしていただけます。
2ページ目の記事とあわせてご確認ください。
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