page2020 FFGSセミナーレポート vol.2
デジタル印刷の世界的な本格普及が始まった!
ITをフル活用しデジタル時代を勝ち抜く
印刷会社の営業戦略

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印刷メディアビジネスの総合イベントpage2020期間中の2020年2月6日に、「page2020 FFGSセミナー」の一環として「デジタル印刷の世界的な本格普及が始まった!ITをフル活用しデジタル時代を勝ち抜く印刷会社の営業戦略」と題するセミナーを開催しました(会場:サンシャインシティワールドインポートマート5F)。事前に定員を上回る申し込みがあり、約160名のお客さまにご参加いただきました。

本セミナーは以下2つのセッションで構成され、セッション1では当社がデジタルプレスを活用する欧州の先進的企業を視察し、各社のビジネスモデル研究を行なった結果をご紹介しました。またセッション2では、デジタル時代に備え営業展開にインターネットをフル活用されている東洋印刷株式会社(以下東洋印刷)工務部 部長代理 加藤雅章氏を講師に迎え、重要インフラ『Toyo Online System(TOS)』の活用戦略についてご紹介いただきました。


セッション1:
日本の先を行く欧州デジタルプレス導入企業5社のビジネスモデル研究
英: Paragon/Emmersons 仏: Dupliprint 独: Ebrocolor/Straub
ーデジタル印刷ビジネスモデル研究会 衝撃の海外視察レポートー
講師:富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ株式会社 営業本部 部長 中林 鉄治

セッション2:
新規顧客の開拓、あらゆる印刷業務でインターネットをフル活用する
東洋印刷の重要インフラ『Toyo Online System(TOS)』の全貌
講師:東洋印刷株式会社 工務部 部長代理 加藤 雅章氏


セッション1:欧州デジタルプレス導入企業の視察報告

FFGS 中林部長FUJIFILM Dimatix社製SAMBAヘッドを搭載した枚葉型インクジェットデジタルプレス『Jet Press』は、ワールドワイドで高い評価を得ており、日米欧での導入は200台に迫っています。
Jet Press導入各社は、“オフセット印刷を凌駕する高画質”、“デジタルならではの活用領域の広さ”を活かし、新しいビジネスモデルへの取り組みを進めており、いよいよ世界的にデジタル機の本格的な普及が始まっています。
今回視察したのは、デジタルプレスを導入・活用している欧州の印刷会社5社(イギリス2社、フランス1社、ドイツ2社)です。会社の規模・仕事内容・営業方法・所有デジタル機などが大きく異なる個性的な5社でしたが、「デジタル機の特性を生かし、印刷の価値を高めるジョブ開発を行っている」、「工程全体での効率的なジョブフロー構築に取り組んでいる」といった点で共通しており、大変参考になりました。サマリーをご紹介します。
Paragonグループ(イギリス)は、年商約1,000億円、従業員数約6,000名、英国以外に欧州各地、米国、中国、豪州などに計165オフィス、35工場を所有する英国最大規模の印刷会社です。商業印刷以外に、データ解析、マーケティング支援、デジタルコンテンツ制作、RFIDカード制作、各種BPOなどのサービスも提供しています。英国大手小売業のバリアブルDMなどを数多く手掛けており、グループ全体のデジタル印刷量は約70億シート(ロール紙約40億シート、カット紙約30億シート)です。
Emmerson社(イギリス)はイングランド中部にある個人経営印刷会社で、地元の企業やデザイナー、写真家などに対して品質にこだわったサービスを提供しています(年商約7億円、従業員数約20名)。同社は高品質の印刷物を安定して提供するため、 湿式トナー方式の機種をJet Press 720S(英国1号機)に置き換えました。「デジタル化を進めることは、クライアントにはメリットしかない」とデジタル印刷に積極的で、その理由として「印刷物の内容をタイムリーに変更できる」「在庫を削減できる」などを挙げています。
DupliPrint社(フランス)は年商約23億円、従業員数100名の印刷会社です。Web to Communicationというコンセプトの元、クライアントとそのお客様のコミュニケーションを強化するために、データ分析に基づくセグメンテーションやOne to Oneソリューションを提供して売上を伸ばしています。印刷量全体の90%がデジタル印刷で、月間デジタル印刷量は約4,000万ページ(A4換算)です。主な仕事としてカーディーラー向けパーソナライズドDMなどがあり、最近はブックオンデマンドにも注力しています。
Ebrocolor社(ドイツ)は、年商約8億円、従業員数32名の印刷会社で、Jet PressなどB2サイズ以下の機材を活用して、大手が手掛けない小サイズ・小ロットのパッケージやPOPに特化したサービスを提供しています。対面営業はなく、Webでの受注および電子メール・電話での対応を行っていることも特徴として挙げられます。そのWebサイトはドイツ語に加えて、英語やフランス語表示にも変更できることから、広範囲から仕事を受注していると考えられます。
Straub社(ドイツ)は19のWeb to Printサイトを活用し、年間およそ100万ジョブを受注する印刷通販会社です(年商約21億円、従業員140名)。富士フイルムのJet Pres 720S 2台とJet Press 750S 1台、オフセット機1台(菊全5色機)などを所有しており、デジタル印刷比率は80%となっています。また、積極的に(紙以外も含む)付加価値の高い商材を開発したり、作業伝票ではなくQRコードでデジタル印刷の仕事を効率的に管理したりすることで、粗利益率70%を実現しています。
今後は、日本国内、北米のデジタルプレス導入企業も視察する予定です。その成果をご報告する場もまた設けたいと思います。

セッション1の会場の様子

セッション2:東洋印刷『Toyo Online System(TOS)』のご紹介

東洋印刷株式会社 加藤部長代理東洋印刷は、創立昭和29年・設立昭和39年で、北海道・帯広に本社を置き、札幌・旭川・釧路に支店、東京に営業所を構えています。売上高は約32億円(2019年3月期)、社員数は184名(2019年3月末)で、北海道で4番目に大きな印刷会社です。
東洋印刷では、富士フイルムのWebポータルシステム「XMF Remote」を「Toyo Online System(TOS)」として導入・活用しています。TOSは、紙で行なっている校正作業を、インターネットを使ってパソコンやタブレットで行うことができる電子校正システムです。「効率化による時間の創出」「DTP業務等でのデータ起因の印刷事故削減」「事業所をまたいでのDTP業務の平準化」「顧客への価値提供による他社との差別化」などを目的に導入・活用しています。
例えば、札幌市のある食品スーパーの折り込みチラシの仕事では、校正業務にTOSを活用することで、チラシ1本あたりの営業の業務時間を5時間40分削減できました。月4本だと22時間40分の削減です。これは主に、営業の移動時間および打ち合わせ時間の削減で実現しました。

セッション2の会場内の様子また、地方自治体の広報誌の仕事ではTOSにより、制作の営業待ちによる実質的に業務を行っていない時間がなくなり、その結果、制作の年間残業時間が8,000時間削減されました。人件費を1時間あたり3,500円で換算すると、2,800万円分の労務費削減に当たります。
TOSはお客様の働き方改革にも貢献できます。釧路市のある食品スーパーには、折込チラシの校正担当者が7名いらっしゃいます。TOS導入前には、折込チラシの校正のために、7名の打ち合わせの時間と場所が拘束されるという課題がありました。しかし、空いた時間に校正できるTOSを導入することで、仕事の手を止めなくても良くなり、自宅や出張先でも校正できるようになりました。間もなく第5世代移動通信システム、いわゆる5Gのサービスが開始されます。5Gサービスが開始されると、インターネットを活用した事業は確実に活性化されます。インターネットをさらに活用することで、皆さんと一緒に印刷業界も活性化させていけたらと考えています。


今後もFFGSでは、ワールドワイドで活気のある印刷会社様の新たな取り組みやビジネスモデルを、セミナーやWEBサイトを通じて皆さまにご紹介していきたいと考えています。

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