ウェビナー実施レポート
「経営戦略実践セミナー2023」
九州の注目企業2社が講演、延べ1,200名が聴講
厳しい環境でも会社を伸ばし続ける独自の成長戦略に関心集まる

記事をシェアする

2023経営戦略セミナーレポート_コラム

 長く続くコロナ禍に加え、世界情勢の先行きが見通せない状況も続く中、FFGSでは印刷業の経営層に向けて、戦略策定のヒントとなる実践的な情報を提供するべく、「経営戦略実践セミナー2023」を開催。1月26日・3月16日の2回にわたり、ウェビナー形式で行われたセミナーは、それぞれ約600名、延べ約1,200名が聴講されました。
 テーマは、「新規事業開発と強い営業力で発展し続ける、九州の注目企業2社の経営戦略を探る」。コロナ禍の中でもたゆまず改革に取り組み続け、独自の戦略で成長を遂げている、新生社ホールディングス株式会社(鹿児島県鹿児島市)代表取締役社長 岡崎 洋人氏・アド印刷株式会社(福岡県福岡市)代表取締役社長 古賀 照也氏のお二人に講師としてお話しいただきました。新生社ホールディングスとアド印刷に共通するのは、①新規事業に積極的に取り組んでいる、②営業力が非常に強い、ということ。そんな両社が、厳しい市場環境の中でどのような成長戦略を展開しているのか、その講演概要を紹介します。

▽第1部
「広域で展開する地域密着営業と豊富な商品展開で戦う企業軍団」
新生社ホールディングス株式会社 代表取締役社長 岡崎 洋人氏

新生社HD 岡崎社長

 新生社は1938年に鹿児島県鹿屋市にて創業し、1967年に有限会社新生社印刷として法人化、2019年に新生社ホールディングス株式会社が設立されました。企画・デザインから印刷、製本、加工、施工、設置までを一貫して行い、グループの総年商は約40億円。岡崎社長は1988年に新生社印刷に入社、写植、製版、DTPなどの現場を経て営業も経験し、2008年に新生社グループ代表取締役社長に就任。2019年には新生社ホールディングスを設立して代表取締役社長に就任しました。「経営者はつねに創業者たれ」という先代の教えを受け、三代目創業者として改革を進める岡崎社長は、九州の4県に地域密着拠点として22事業所を展開し、独立経営で競わせながら、生産体制は共有するという独自の組織体系を構築。これにより、グループ全体の対応力強化と合理化を同時に実現しています。
 2020年、コロナ禍で全てのイベントが中止される中、8,000社の休眠顧客の見直しを行うとともに、全社員で新しい販促案や新商品の創出に取り組み、営業力の強化に注力。数々の成果を挙げてきました。中でも飛沫防止パネル「ECOBO(エコボ)」といったコロナ対策アイテムや、避難所での生活を支援する段ボール製パーティションなど、社員の発想から新たに開発した新商材は南日本新聞でも紹介され、顧客や社会に信頼される企業として認知を上げていきました。そのほか木製スマートフォン用スピーカー「MOKU-ON(モクオン)」など、この3年の間に200以上の新しい販促・新製品を開発しました。
 このようにさまざまな商材開発を行う一方で、インターネット事業の拡充を積極的に推進し、新たな販売方法として、厚盛ニス商品専門の印刷通販サービス「Pressbee Plus(プレスビープラス)」や鹿児島県のグルメ通販サービス「鹿児島ここまる」といった新サービスもスタートさせ、好評を博しています。
 講演では、「1つのお客さまの売上構成比は6%以上にしない」「自社受注を中心にする」「社長自ら毎月売掛金チェックを行う」「売上ではなく利益を重視する」といった管理・運営方針も紹介。あわせて、市場環境が厳しい現在、経営幹部・管理職は利益を出すために各案件を細かく管理しており、成績が芳しくないグループ会社にはグループ全体で支援していることなども詳しく説明されました。
 岡崎社長は最後に、「事業でも人生でも失敗は付き物なので、失敗を恐れることはない。失敗を猛省して対策すれば成功に近づき、喜びにつながる。失敗を乗り越え、笑って話せる人が一流だ」という考えや、2022年のFIFAワールドカップの際に長友佑都選手がSNSに投稿した「成功は人の表面を飾り、失敗は内面を豊かにする」という言葉を紹介しました。

▽第2部
「時代の変化を見据えて新商品・新サービスを開発し続け、放牧営業でさらなる成長を目指す」
アド印刷株式会社 代表取締役社長 古賀 照也氏

アド印刷 古賀社長

 アド印刷は1978年創業。年間のダイレクトメール取り扱い数3,500万通以上(2018年度実績)、DMで多くの受賞歴を持つ、ダイレクトマーケティングを強みとする企業です。古賀社長はWEB事業部長・取締役を経て、2022年に代表取締役に就任しています。同社では創業者・田平会長の時代に、売上の8割を占めていたクライアントの仕事がゼロになるという危機を全営業の新規開拓で乗り越えた経験から、新規開拓・事業拡大のための施策・投資に果敢にチャレンジしていく企業文化が醸成されてきました。
 演題にも入っている「放牧営業」とは、放任主義ではなく、使命感・行動の原点(行動規範)・基本21則(行動指針)といった「理念」と「経営方針」でアド印刷としての枠を定めた上で、社員に権限移譲して事業を進めるという考え方で、営業は「どの業種」に「どんなツール」を使った「どんな提案」をすれば顧客の課題を解決できるか、一人ひとりその枠内で自由に考えることを意識して積極的に活動しています。
 同社の果敢なチャレンジの事例として、さまざまな非印刷事業に取り組んだ軌跡も紹介されました。2008年にDMの発送代行、2011年には健康食品の通信販売に取り組みましたが、両事業とも計画通りに立ち上がらず閉鎖。しかし、2012年に3名の営業で立ち上げたWEBソリューションは大きな成功を収め、現在ではWEBプロモーションやランディングページ制作、CM・動画コンテンツ制作、LINE・アプリ施策など、さまざまなサービスを提供する年商6億5,000万円(2022年度)の事業へと成長しました。このWEBソリューション事業もスタート当初は苦戦していました。印刷で取り込めていない店舗系企業の獲得を目指して、メルマガシステムやWEBサイト受託業務、WEB販売支援などにチャレンジしましたが、どれもうまくいかずに撤退を余儀なくされました。その後2015年に、東京支社で取引があった通信販売会社のWEB部門立ち上げに参画し実績を作ると、状況は一変しました。それからはオンライン販売を強化するべく、情報収集のため多くのWEB企業へアプローチ、またWEB広告の運用の内製化を進め、LAP(現LINE広告)の取り扱いを開始するなど広告の強化を図りました。またWEB事業に欠かせない動画事業をスタート、WEB営業・WEBサイトディレクターの採用などを積極的に行うことで事業は急速に拡大しました。
 この成功の要因について古賀社長は、「自社の強みに戻って、事業展開を考え直したこと」「失敗した事業からいろいろとノウハウを吸収し、生かしたこと」「大量行動し、さまざまな企業と関係性を深めたこと」としています。
 古賀社長は最後に、今期からWEB事業部と印刷部門を統合した体制とすることで、全営業が企業の課題解決のために、(オンライン・オフラインを含めた)全てのメディアの中から最適なプランを提供できる、お客さまの「成長を促進する」企業を目指すことを力強く語りました。

記事をシェアする

イベントレポート一覧へ戻る