欧州のオンラインプリントサービス最新事情

記事をシェアする

欧州では、オンラインサービスを提供している企業は各社とも、工程全体で省人化・自動化を進めることで売上が伸びており、成長傾向にあります。今回はその中でも欧州で最大手の企業の取り組みについてご紹介します。
この企業は、2・3・4番手の企業の売上合計とほぼ同額の売上があります。ジョブの約70%が印刷会社からの受託で、複数の工場を保有し、例えば名刺印刷専門、封筒印刷専門といったように、それぞれの工場で生産するジョブが決まっており、生産の効率化が図られています。

工場の画像

印刷工程全体の最適化を担う社内SEを配置

各工程においても徹底した効率化、自動化が図られています。刷版工程は完全無処理化が進み、印刷工程では、保有する複数台の大型(Very Large Format=VLF)枚葉印刷機で、面付けやギャンギングにより最大で約150のジョブを付け合わせて印刷しています。ジョブの付け合わせは後工程の状況も加味して自動化されており、お客様がオンラインで発注した数分後には、版面設計が完了し刷版が出力されています。この企業では約200人のSEを抱え、付け合わせを自動処理する仕組みだけでなく、お客様とのインターフェースから配送に至るまで、工程全体にわたり最適化を図る仕組みを構築しています。現在でもSEは増え続け、新たな雇用も生み出しているそうです。

デジタル印刷機も複数台保有しており、印刷機の稼働状況にもよりますが、おおよそ100部以下はデジタル印刷機で、100部以上はオフセット印刷機で印刷を行っています。オフセット印刷機とデジタル印刷機とのカラーマッチングを取っているため、お客様はデジタル印刷機で印刷されているか、オフセット印刷機で印刷されるかは特に意識はしていません。

セットアップ時間「0」で、製造コスト削減・受注数増の好循環へ

加工工程では、常に「Job change to zero」を目指しています。加工工程でのジョブチェンジのセットアップ時間は「ロス」と考えており、例えば2種類の加工が必要であれば2台同じ加工機を導入して、それぞれ加工の仕様を替えた専用ラインとすることで、ジョブチェンジのセットアップ時間を無くし効率化を図っています。ただそうは言っても、多少のジョブチェンジは残っているため、加工機の選定ではセットアップ時間の早い機器を選定しているようです。

工場内部の画像

ここまでご紹介した通り、この企業では、受注する仕事内容により、受注から製版・印刷・配送までの全工程で「Process Management」を意識しながら最適化を図っています。特に機器のセットアップ時間が最小となるように工程管理を行えば、製造コストは下がっていき、最終的にお客様へ低コストの印刷物を提供できるようになります。
受注する仕事内容を選定しながらジョブごとに工程の最適化を図り、製造コストを下げることで低コストの印刷物を提供し、さらに受注を増やすといった循環を、全体最適を図りながら進めています。

欧州の印刷市場は10~15%がオンラインプリントの売上ですが、製造のコストダウン、短納期対応により今後は印刷会社からの受注も増加していくと予想されています。今後は、箔押しやニス加工といった付加価値の高い印刷を増やして受注単価を上げていく方向を考えているそうです。


ここがポイントのアイコン

印刷工程全体のスペシャリストを配置。SEが自社内の全工程を最適化

・入稿から配送まで独自の社内システムで運用。自社SEが社内システムを構築。
・お客様から入稿後、数分で版面設計を終了。数秒の目視確認後にCTP出力。
・国内なら、午後4時までに注文が入れば、翌日の昼12時までに納品している。

機器の最高稼働率を常に追求している

・加工機のセットアップ時間は「0」を心がけている。
・異なるセットアップが必要な場合、同じ加工機を複数台保有し、セットアップ時間を極力無くしている。
・歩留まりを無くすことで常に競合に負けない最低コストを実現している。
・工場毎に印刷物を変えている。(ex.名刺印刷工場、封筒印刷工場 など)

付加価値印刷(UV spot varnishing)は今後カギとなる

・印刷物の単価を上げるためにUV varnishingを拡大している。
・2008年スポットUV Inkjet Varnishingの初期型を導入(52x74cm。1,000枚/時)以降、付加価値印刷の仕事が拡大。およそ2年ごとに最新の設備に更新している。
ー2014年スポットUV Inkjet Varnishingの次世代型(106x75cm。9,000枚/時)
ー2019年スポットUV Inkjet Varnishing+UV glue and Hotfoilの最新設備( 106x75cm。9,000枚/時)
・デジタルバーニッシュは今後の印刷ビジネスのカギと認識。付加価値印刷を追加することで利益を上げていく。

記事をシェアする

コラム一覧へ戻る