検討が進む後加工の内製化、
後加工機導入の効果を最大限に発揮するためには

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コラム第6回のMV

印刷製品は単に印刷工程だけでは完結せず、断裁や折り、製本といった加工を経て価値を高め、発注者へ最終製品として提供されています。最近では、後加工を内製化すべく設備投資を検討する印刷会社が増えていますが、その背景や課題はどんなものがあるのでしょうか。今回は後加工分野の現状と展望について考えてみます。


なぜ、後加工の内製化が検討されているのか?

商業印刷や出版印刷など、印刷メディアがデジタルメディアと競合、あるいは共存する分野では、今まで以上に印刷メディアの価値を向上していく必要があります。印刷の発注者や最終消費者にとって、デジタルメディアと比較して価値のある印刷物とは、手に取って感じる質感を含めた、メディアとしての実在感だと考えられています。そのため、印刷とその後加工が一体となった企画が重要となっています。一方で、これまでは対応が難しかった、タイムリーでかつ少量多品種の印刷物製造が、デジタルメディアとの競合の中で必要になってきました。そういった背景から、印刷の後加工についても積極的に内製化し、印刷物の新しい需要開拓を進めようとする取り組みが活発化しているのです。
さらに、印刷会社側の事情でみれば、後加工の外注費を減らして、社内の加工高を上げていきたい、外注先の廃業などで内製化を迫られている、といった背景もあります。

左から本を満足そうに読んでいる女性と印刷物の上に時計があるイラストとプリンタの上にパッケージが枠で囲まれたイラスト

後加工を内製化するうえでの課題とは?
工程間バランスや動線、協力先との連携強化も重要に

最新の後加工機は、自動化、スキルレス化が進み、以前ほどオペレーターの習熟度が必要とされなくなったことも、印刷会社が内製化しやすくなった理由のひとつのようです。では、印刷会社が後加工を内製化する場合には、どんな課題があるでしょうか。

◆印刷から後加工まで、いかに生産効率を上げるか
最新の後加工機は、生産スピードも速く、自動化が進んだことで準備時間も短くなり、生産性が上がっています。しかし、例えば冊子を製造する場合、印刷や折り、製本、三方断裁、梱包、出荷など、複数の工程との連携が必要となりますが、折り機と製本機の生産性にバランスが取れていないと、それぞれの工程で印刷物が滞留するなどのムダが発生してしまいます。「設備の台数や生産性のバランスが取れているか」「人やモノの動線にムダが無い設備の配置か」などの点を十分に検討することも、生産性を上げるためには重要です。また、自動化が進んだといっても、紙厚や紙質、サイズが変わるたびに微調整は必要となります。できるだけ調整が少なく済むように、加工の仕様も考えて仕事の順番を決めるなどの工夫も生産性を上げるには有効となります。

◆外注先との連携も引き続き必要
前述したとおり、消費者の多様なニーズに応えるために、発注者からの後加工に対する要望も多様化し、また、短納期化も進んでいます。自社の設備で全ての要望に短納期で応えることができれば問題ありませんが、実際は全てに対応することは難しいため、外注先の協力が必要となります。後加工を一部外注に出しても小ロットや短納期に十分に対応するには、やり直しや急な仕様変更が起こらないように、仕様の設計段階から外注先と密接に連携することがこれまで以上に重要となります。

後加工内製化の工程をイラストで表現した画像

多品種小ロット化への移行過程を考慮した
新旧の生産設備・工程全体の効率化も大切

デジタルプレスの普及が進み、後加工機もデジタルプレスに対応した自動化、スキルレス化の機種が増えています。しかしデジタルプレスの特徴を活かした小ロット・極小ロットの仕事は、利益率こそ従来のオフセット印刷よりも高いですが、印刷会社の売り上げの柱にするには相当数の仕事を集めなければなりません。受注や生産、配送の仕組みで、小ロットへの対応を可能にする体制を整えるまでの間は、印刷会社の売り上げは、これまでどおり従来のオフセット印刷が中心となります。

後加工の分野においても、当面は、デジタル・オフセットの両方に対応できる体制が求められます。効率的な生産体制を構築するには、単に最新の設備を導入するだけではなく、既存設備も含めた設備の配置、人とモノの・動線、外注先との協力体制など、今後のデジタル化も考えながら生産工程全体で効率化を図ることが重要となるでしょう。

記事公開:2019年8月

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