印刷物生産の小ロット・多品種・短納期ニーズへの対応が求められていますが、工務部門が行う版面設計の工程では、熟練者の経験が必要なため自動化に踏み切れず、多くの人手を掛けて作業しているのではないでしょうか?今回は、こうした熟練者の存在に匹敵するまでに進化した、「版面設計の自動化」の最新動向をご紹介します。
版面設計の課題:多数のパラメータを加味できる
高度なスキルと経験が必要で、作業負荷が高い
インターネットやSNSの普及により、顧客の要望が複雑化・多様化し、小ロット・多品種・短納期への対応が必要不可欠になりました。この状況で利益を最大化するためには、リードタイムの短縮や製造コストの最適化、製造でのミスやロスの削減が重要となります。
その一つの鍵として、版面設計の自動化によるコストダウン・効率化が注目されています。特に、付け合わせ可能なジョブが多いほどコストダウンが期待できますが、単に印刷紙面の無駄を減らすだけではなく、加工や配送まで考慮した上で、最小限のコストとなる付け合わせを自動で設計する仕組みが求められているのです。
しかし版面設計は、付け合わせを設計・決定するためのパラメータが非常に多く、高いスキルと経験が必要になります。また、従来の付け合わせのシミュレーションは手作業が多く、時間を要します。さらに、紙器パッケージの設計では、CADソフトを扱える技術者の作業も必要です。
版面設計の作業効率化のソフトを導入している会社でも、自動化はあくまでオペレータの指示に基づく面付けレイアウト作成にとどまり、ジョブの組み合わせや印刷機選定に関しては、従来どおりオペレータがコスト計算の上、手作業で行っているのが実情でした。
現在の「版面設計の自動化」実例:
印刷や加工、配送まで含めたコストの最小化が自動で実現
製造業全体で人材確保が厳しくなる中、AIや、パソコンで行われる業務プロセスを人に代わり自動化するRPA(Robotic Process Automation)を活用した業務効率化が進んでいます。
これに伴い、版面設計のソフトの機能も拡大してきました。印刷機や加工機の仕様、配送順までも考慮し、最適な付け合わせとコストシミュレーションを自動化したソフトがすでに登場しています。こうしたソフトでは版面設計において、自動化による業務効率化と短納期化やスキルの標準化を実現します。さらに、版面設計を担当していた熟練オペレータを、より生産性向上に寄与する部署に配置するなど、最適な組織体制の見直しも可能になります。
実際にソフトを導入した企業では、付け合わせにかかる時間を従来の10分の1以下まで削減でき、専任者も4人/日から、2人/日まで省力化できたという例もあります。また、一歩進んだ取り組みとして、版面設計のソフトとMISやプリプレス、プレスを連携させ、受注から印刷・加工データ出力までをフルオートメーション化し、面付・版面設計工程の無人化をさせている会社もあります。これにより、工場全体の稼働率が向上し、さらなる納期短縮、コストダウンが可能になります。
今後の展望:MIS等と連携した版面設計の自動化で
不測の事態にも柔軟に対応、さらなるコストダウンへ
印刷会社の生産システムには、ロット数に関わらず、最小のリードタイムで製造できるシステムがこれから一層求められます。しかも、製造効率を最大化させ、どのようなプロダクトミックスであっても、利益を出せるということが重要です。また、大ロットから極小ロットまでを効率的に大量製造するには、ジョブに応じてデジタル印刷機とオフセット印刷機を使い分け、工程全体の稼働率を上げる必要があります。
そのために、版面設計を一つの工程と区切って考えずに、MISと連携させ、製造工程全体の連携を図ることが重要になります。工程間連携の仕組みをしっかり作っておくことで、機器の故障などのイレギュラーな事態が発生した場合でも、柔軟に最適な再計画が行えるため、今以上に時間効率化やコストダウンの実現につながっていきます。
記事公開:2019年7月