営業との連携や場所の制約など、課題が多い
プリプレス効率化のカギは「自動化・省人化」
「小ロット・多品種への対応」や「人材確保」が課題となっているプリプレス工程では、さらなる効率化が必要になってきています。しかし、制作現場では、「営業が帰社しないと仕事が進まない」「会社でしか業務ができず、介護や育児との両立が難しい」といった悩みを抱える方も多いことでしょう。
今回は、これらの課題に対応し、「クライアントの満足」と「売上と利益の確保」を両立していくための、プリプレス工程における「自動化・省人化」の取り組み事例と、今後の展望をご紹介します。
現在の「自動化・省人化」実例:
クライアントの囲い込みも可能なWeb受注・オンライン校正
プリプレス工程では、社内の業務効率化だけでなく、クライアントへのサービス向上にもつながる、インターネットを活用した「自動化・省人化」への取り組みが進んでいます。
その一つが「Web受注」。「すでに取り組み始めている」、または「検討している」印刷会社も多いのではないでしょうか。Web受注で追求すべきは、「受け取ったデータ内容の確認とクライアントへの校正確認をいかに効率化し、少ない工数で受注するか」です。クライアントに、「いつでも、どこでも、簡単に印刷物を注文できる環境」を提供できることは、受注数アップやサービス向上だけでなく、営業活動の省力化や制作負荷の低減などにつながり、事業の効率化と利益率の向上が期待できます。
また以下の例のように、クライアントの囲い込みにもつながる、進化したWeb受注システムも出てきています。
また、インターネットを活用した「自動化・省人化」は、校正プロセスでも進んでいます。入稿データの確認から、修正の指示や内容の確認、校了までを、Webポータル上で行えるようにすることで、場所や時間の制約なしに校正業務を進めることができるようになります。営業は、外出先でもクライアントからの修正指示の確認や、制作への指示出しができるようになり、「モバイル営業」が実現できます。また制作も、営業の帰社を待たずにオンラインで指示内容を確認して作業を進められるので、結果として残業削減などの働き方改革につながります。校正作業がWebでできるということは、校正作業にできるだけ手間をかけたくないクライアントにとっても、校正紙の回覧や校正内容のとりまとめの手間が減り喜ばしいことです。実際に、クライアントから高く評価されている事例が多数あがっています。
ほかにも、ある印刷会社では、専任者が刷版室内で行っていた刷版出力作業を、制作担当者が自分のパソコンから出力指示できる運用に変えました。これにより、従来の専任者を他工程へ配置転換して多能工化し、人材配置の最適化、他部署での知見活用につなげるなど、多くの波及効果が生まれています。
今後の展望:スケジューリングからの自動化や
スキルレス化、場所を問わないワークスタイルが実現
次にプリプレス工程の未来に目を向けると、将来的にはIoTやAIの進化とともに「スマートファトリー」化していくと考えられますが、近い未来はどうなるのでしょうか。
まず、さらなる小ロット・多品種化が進み、今より何倍もの量のジョブを、今以上に短納期で処理することが求められるでしょう。そのためにプリプレス工程では、これまで手作業で行っていたジョブのグルーピングやスケジューリングを自動化するシステムが必要となります。さらに、ジョブに必要なデータや情報が揃えば、自動で仕事が流れていく「ファクトリーオートメーション」が、多くの印刷物生産工程で実現していくでしょう。
また、「人材確保」という課題については、今後の労働人口減少も踏まえ、時短勤務やテレワークによる在宅勤務など、時間や場所にとらわれないフレキシブルな働き方の実現が、会社規模を問わず必須になってくると考えられます。プリプレス工程においては、現在の「Web受注」や「オンライン校正」といった取り組みがさらに広がるのに加え、AIを活用した自動レイアウトシステムの進化などにより、作業の効率化・スキルレス化が進むでしょう。また、通信速度やセキュリティなどのインターネット環境が進歩することで、在宅でも社内の環境と同じように仕事ができるようになると考えられます。
記事公開:2019年6月