身の回りの変化に気づいていますか?
軟包装で使われはじめたデジタル技術

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コラム第10回MV

軟包装印刷市場が直面している課題とは

スマートフォンやタブレット端末といった電子デバイスの普及により、紙媒体の印刷市場規模は縮小傾向にありますが、包装印刷は「商品があれば包装する」ため堅調といわれてきました。
しかし近年、包装印刷にも影響する社会環境の変化として、核家族化や少子化によるライフスタイルの変化、環境意識の高まりといった価値観の変化、ソーシャルメディアの普及に伴う社会とのつながり方の変化が大きく進み、消費者のニーズがますます多様化しています。その結果、プライベートブランドのような低価格の商品が広まる一方で、付加価値重視の商品も需要が伸びるなど購買行動も二極化し、それに応じて市場に投入される商品の種類が増加の一途をたどっているのです。
包装の多くを占める軟包装印刷はグラビア印刷が主流ですが、これは、大ロットを安価に印刷する技術として確立されています。しかし、今後も少量多品種のニーズの増加が見込まれることから、「生産現場はどう対応すればよいのか」という新しい課題が顕在化しています。

グラビア印刷の稼働向上をデジタル印刷で支援し、工場全体の生産性を高める

グラビア印刷では、ジョブの切替えでシリンダーの交換が必要なため、小ロットのジョブが増えるとオフセット印刷以上に印刷機の稼働率が低下します。加えて、短時間のうちに次々と重いシリンダーの交換を行うため、オペレーターに大きな負荷が掛かります。また、小ロットになるほど刷り出し時のロスが増えますし、クライアントの立ち会い回数の増加が一層の稼働率の低下を招きます。

小ロット化の課題のイラスト

そんな中、小ロット需要の増加に対する一つの解決策として、デジタル印刷機の活用が注目されています。一定以上のロットがある仕事はこれまで通りグラビアで印刷し、小ロットのジョブはデジタル印刷機に集約することで、グラビア印刷機の稼働率の低下を防ぐなど、グラビアとデジタルを上手に使い分けることで、売上を維持しつつ、工場全体の生産性を上げることが可能となります。

現場・クライアントの双方の負荷を減らし
ニーズ対応の自由度を高めるデジタル印刷機

デジタル印刷では従来のグラビア印刷と作業工程がどのように変わるのか、工程を比較してみましょう。
グラビア印刷での一般的な作業工程は、①企画・デザイン②データ作成③シリンダー彫刻(製版)④シリンダー交換⑤インキ調色⑥印刷⑦加工⑧出荷です。グラビア印刷はクライアントの印刷立ち会いを行う場合も多く、刷り直しになると、②から⑥を繰り返すことになります。小ロットが増えると印刷の立ち会い頻度や保管するシリンダーの数も増えるため、現場の負荷がさらに増大する要因となります。
一方、デジタル印刷機はデータからそのまま印刷し、③から⑤の工程が無くなりますし、仮に印刷立ち会いで刷り直しとなった場合でも、データの修正だけで対応できるため、現場の負担を大幅に減らすことができます。

工程を比較した図

このようにデジタル印刷機は工程を大幅に短縮することができます。加えて、デジタル印刷機は品質が安定しているので、製品と同じ品質のモックアップをクライアントへ提供することで立ち会いレス化が図れますし、リピート時の色調整などの負荷低減も期待できます。
クライアントにとっても、少ないロットを短納期で発注できるため余分な在庫を持たなくて済みますし、極小ロットでも製造ができるので、複数のアイデアをモックアップで確認・選択してから生産することもできます。

軟包装分野ではデジタル印刷機はまだ発展途上ですが、小ロット化やトレーサビリティといった、新たな課題に対する有力な生産技術と考えられています。
すでに一部では、従来一般的であった「裏刷り+ラミネート」から、UVインクジェットによる「ラミネート済原反へ表刷り」といった新たな試みも始まるなど、今後、軟包装分野でもデジタル印刷の活用がますます広がっていくでしょう。

本コラムのまとめのイラスト

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