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描画領域拡大と合紙レス化で、無処理化効果が一段と向上。現場の作業効率が高まり、いっそうの機動力アップに

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新聞用完全無処理CTPプレート「SUPERIA ZN-Ⅱ」導入事例


■無処理化で大きなメリットが得られたが、運用上の課題も

 琉球新報社は、1893年(明治26年)に沖縄県初の新聞として隔日刊新聞『琉球新報』を発行して以来、126年もの歴史を持つ。新しい技術・設備を率先して採り入れる社風が大きな特色で、近年では高精細スクリーニングや高濃度インキなどを全国に先駆けて導入している。現在、自社発行の『琉球新報』『新報スポニチ』のほか、『日本経済新聞』『日本農業新聞』の受託印刷も行なう。2018年5月には、沖縄県庁や那覇市役所などが集まる県の中枢部、那覇市泉崎に新本社ビルが完成し、沖縄の新たな情報発信拠点として稼働を開始した。
 製造現場においては、2016年5月から『SUPERIA ZN』を導入。同年夏には新聞社として初めてCTPの完全無処理化を達成した。その背景には、「廃液処理コストの削減」と「自動現像機に関わる作業負荷の軽減」という2つの目的があった。
「沖縄県内には廃液処理施設がなく、回収された廃液は九州まで運搬して処理しなければならないため、本州に比べて費用が割高になります。無処理プレートに切り替えることで、この処理コストを削減し、同時に環境負荷の削減も図ろうと考えたのです」(稲福局長)
 作業面では、自現機のメンテナンスが現場のオペレーターにとって大きな負担になっていたという。
とくに、自現機の清掃作業が大変でしたね。2~3カ月ごとに行なっていたのですが、4~5人がかりで半日以上かかっていました。薬品のにおいもきつく、オペレーターの健康面を考えても、無処理化は必要だと感じていました」(豊嶋部長)
  ZNの導入により、自現機に関わる作業負荷や廃液処理コストはゼロになった。さらに、再現品質・耐刷性などについても従来の有処理プレートと同等の性能が発揮され、現像処理がなくなったことにより品質の安定化も図れるなど、「期待通りの導入効果が得られた」と稲福局長は評価する。
  一方で、運用上の課題もあった。一つは、描画領域の制約だ。ZNは、エッジ汚れ対策のための親水化処理の関係で、エッジから3mmの範囲は描画ができなかった。スポーツ紙の一部紙面では、プレート幅ぎりぎりまで使うケースがあるため、同社は、紙面データをわずかに見開き内側に寄せてCTP出力することで、この課題に対応していた。
「現場のアイデアで、媒体ごとに出力位置を調整していたのです。設定作業自体はそれほど負担になるものではありませんが、スポーツ紙の出力の際には毎回設定を変えないといけなかったので、ミスが起こるリスクもありましたし、紙面のバランスを考えても、やはり標準設定のまま出力できるに越したことはありません」(稲福局長)
  もう一つの課題は、合紙によるトラブルのリスク。給版の際、合紙は自動で除去されるが、まれに合紙詰まりなどのトラブルが発生し、機械の停止を余儀なくされたという。そのため、現場からは合紙レス化を望む声が上がっていた。


 ■トラブルのリスクが低減し、作業時の安心感が向上

CTP現場の画像こうした経緯から、同社は2018年6月、正式発売前の段階から『SUPERIA ZN-II』のテストを開始。ZNで課題となっていた描画領域などを中心に、半年ほどかけて検証を行なった。ZN-IIでは、親水化剤を感光層内部に含ませ、機上現像の過程でエッジ部まで浸透させる新技術を投入することで、エッジ汚れの防止と描画領域の最大化を同時に実現しており、その効果が焦点となった。

スポーツ紙でも紙面の両端まで描画できることが確認できました。網点再現性、耐刷性も含め、テスト中に問題になることはありませんでしたね。露光条件や印刷条件などの変更もなく、スムーズに本格運用に入ることができました。」(伊元次長)
 2台あるCTPのうち、2018年12月に1号機を、2019年3月に2号機をそれぞれZN-IIに切り替え、全面移行が完了した。ZN-IIの導入効果について、稲福局長はこう語る。
現場のメリットとしては、合紙レスになったことが大きいですね。当社では1日あたり150版ほど出力するため、合紙の回収作業が1日1~2回の割合で発生していました。これがまったく必要なくなったわけです。当然、合紙詰まりのトラブルの心配もありません。CTP周りの作業としては、プレートの装填のみで済むようになりました
  また、豊嶋部長は、作業性に直結するもう一つのメリットとして「キズのつきにくさ」を挙げる。
「ZNでも有処理プレートに比べてキズがつきにくくなったことは実感していましたが、ZN-IIでは、さらに“キズに強くなった”と感じます。もちろんプレートの取り扱いにはつねに細心の注意を払っていますが、ZN-IIによってキズ発生のリスクはかなり減っているのではないでしょうか。作業時の安心感が違いますね。さらに、紙面の見当ズレが減少しました。合紙レスにするため版裏面に新たな処理が施されていると聞きます。そのため版胴と版の密着度が増したためでしょう」
  一方、ZNから引き継がれている特長として、稲福局長が高く評価するのが耐刷性だ。
「昨年9月の安室奈美恵さん引退特集では、『琉球新報』の本紙を増刷して約19万部印刷しましたが、それでもプレート交換なしで問題なく刷了しました。この信頼性の高さは、従来版にも共通する、大きな魅力ですね」

現場では、品質・耐刷性・取り扱い性のすべてにおいて、『SUPERIA ZN-II』を高く評価。

■グローバルな環境貢献のためGGPに参加

昨年5月に竣工した新本社ビル

 また、環境対応とともに同社が重視しているのが、地域社会への貢献だ。昨年5月に竣工した新本社ビルは、その象徴的存在でもある。「沖縄の情報発信拠点」「伝統文化・芸能の継承・発展」「感動の架け橋」を3大コンセプトとし、606名収容の大ホールや、メインストリート「国際通り」を一望できる屋上庭園など、地域住民のためのスペースも充実している。
「最先端の情報発信拠点というだけでなく、地域の皆さまに喜んでいただける場にしていきたいですね。実際に、物産展などのイベントや、商品のプロモーションなど、企業や自治体の方々にさまざまな形で活用していただいています。大ホールは、当社が長年支援してきた琉球舞踊などの伝統芸能を未来に伝えていくという大切な役割も担っています」(伊元次長)
  情報・文化の発信を支える印刷局も、変革に向けて動き出している。ともに沖縄県の新聞業界を支えてきた沖縄タイムス社との間で、最新輪転機の共同購入・運用の計画が進行しているという。
「両社とも、現在使用している輪転機が間もなく更新の時期を迎えるため、これを機に、お互いの経営基盤強化、新聞の持続的発行のため、印刷業務の協業に向けた協議を続けている。これからの輪転機は4×1型になる予定ですので、CTPセッターなども併せて更新が必要になります。FFGSさんにもご協力いただきながら、時代に合った、より効率的な設備環境をつくっていきたいと考えています」(稲福局長)
  沖縄で生まれようとしている“新聞印刷の新たな形”に、業界内外から熱い注目が集まっている。

※掲載内容は、取材当時のものであり、一部変更が生じている場合がございます。ご了承ください。


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