中日新聞社 辻町北工場様
合紙レス化と同時に版ズレ効果も得られ、安定運用が実現。優れたエッジ描画性も生産効率向上に寄与

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新聞用完全無処理CTPプレート「SUPERIA ZN-Ⅱ」導入事例


中日新聞社は、2018年夏から、名古屋市の辻町北工場、岐阜県の東濃工場などで、合紙レス新聞用完全無処理CTPプレート『SUPERIA ZN-II』の本格運用を開始した。同社は2015年から『SUPERIA ZN』の導入により無処理化に着手。2018年末までに、半数以上のCTPを無処理に切り替え、2020年には全拠点・すべてのCTPラインを無処理化する計画である。ZNの約3年間の運用を通じたメリットや、今回導入したZN-IIによる新たな効果などについて、中日新聞社技術局印刷技術部・永井達氏、中日新聞印刷株式会社 辻町北工場第一印刷部部長・金入修三氏に伺った。

■ 導入背景|無処理化は手続きの省力化にもつながる

中日新聞社は、2014年、『SUPERIA ZN』の開発段階からパートナーとして性能評価に参画し、辻町北工場では実用化に向けたテストを重ねた後、いち早く本格運用を開始している。さらに、2016年12月に立ち上げた同社の新拠点、浜松都田工場では、工場の設計段階から無処理専用の構造とし、使用プレートを『SUPERIA ZN』に統一して運用を始めた。辻町北工場も、2018年に全面無処理化を達成している。全社を挙げて無処理化を推進する同社だが、これまでの3年あまりの運用で、どのようなメリットが出ているのだろうか。永井氏はこう語る。
現像処理工程がなくなったことで、自現機の清掃や点検整備、液交換などが不要になり、製版関連部門の作業負荷が大幅に軽減されています。もちろん作業面だけでなく、環境負荷の低減、コスト削減、省スペース化にも大きく貢献しています。さらに、現場のオペレーターからは、有処理プレートに比べてキズがつきにくくなったという声を聞いています

また、金入部長は、印刷現場の管理者の立場から、手続き上のメリットも大きいと指摘する。
「設備更新や新工場開設の際、有処理では、自現機や廃液処理設備などの設置のために環境規制や水質汚濁防止などに関する書類を作成し、自治体に届け出なければならず、そのための時間と労力がかかっていました。この書類作成や申請は印刷部門が中心となって行なっていたので、無処理化によってこうした手続きが省けるのは大変助かります。とくに、浜松都田工場のように全面無処理を前提とした工場を新設する場合には、特定施設の対象外となり、手続き上の負担が大幅に軽減されるのです」(金入部長)

また、プレートそのものの性能では、言うまでもなくロングラン印刷に対応する耐刷性が重要な要素の一つだが、4×1型輪転機が主流になりつつある現在では、同じ部数を印刷する場合でも4×2機に比べ2倍の耐刷性が必要になる。この点についても、永井氏は『SUPERIA ZN』に高い信頼を置く。
実際に浜松都田工場では4×1機を使用していますが、ZNでまったく問題なく印刷できています。辻町北工場では、4×2機で中日新聞サンデー版を60万部(14万インプレッション以上)印刷しますが、こちらも有処理の『HN-NⅤ』と同様に安定して印刷でき、充分な耐刷性・再現性を持っていると感じています。これらの性能は、ZN-IIにもしっかりと引き継がれていますね

スポーツ紙の印刷では描画領域が課題に

このように現場から高く評価されている『SUPERIA ZN』だが、一方で改善の要望も出ていた。その一つが、合紙レス化だ。
「ZNでは、セッターへの多重給版防止のために合紙が使われていますが、プレートとの摩擦で静電気が発生したり、ジャンピングによって製版トラブルを引き起こしたりするリスクもあります。ですから、CTPの安定稼働のためには、やはり合紙レスが望ましいと考えていました」(永井氏)
もう一つの課題は、エッジ部の親水化処理の関係で描画領域に制約を受け、紙面によってはプレートの有効面積が足りない場合があること。金入部長はこう説明する。
「スポーツ紙などでは、視覚的効果を狙い、紙面ぎりぎりまで使って文字や写真を入れる場合があります。これには編集サイドのこだわりもあるのですが、そうしたレイアウトの場合、プレートのエッジ付近まで描画することになり、ZNでは対応が難しかったのです」

これらの声に応え、合紙レス化などの改良を図った『SUPERIA ZN-II』。中日新聞社では、昨年12月から、辻町北工場のほか、本社工場、浜松都田工場でも順次テストを開始し、既存設備とのマッチングを含めた検証を進めてきた。今年4月から6月にかけての耐刷テストでは、辻町北工場で最高53万部(13.5万インプレッション)を刷了。耐刷性、印刷品質などに問題がないことを確認し、本格運用に入った。

合紙レス化により、トラブルのリスクが大幅に低減された。


■ 導入効果|裏面のマット加工が版ズレ防止効果を発揮

「SUPERIA ZN-Ⅱ」により、印刷現場での安心感も高まっている

実際に『SUPERIA ZN-II』を使用する中で、ZNからの改良点はどのようなメリットにつながっているのか。金入部長によると、合紙レス化のために投入された新技術が、意外な効果を生んでいるという。
「実は、これまでのZNでは、輪転機上でインプレッションがかかった際に版ズレが起こることがありました。これは紙面品質にも影響するため、プレートを版胴に密着させるために油を塗布するなど、さまざまな対策で何とか防いできました。ところが、ZN-IIに切り替えてから、この版ズレがまったく起きなくなったのです。おそらく、裏面のマット加工の効果だと思いますが、当工場で使用している輪転機の版胴との相性もいいのではないかと感じています。合紙レス化の副次的効果とも言えますが、印刷現場にとっては劇的な改善で、非常に助かっています」(金入部長)
『SUPERIA ZN-II』では、合紙レス化を実現するため、裏面のバックコート層に微小なマット剤を敷設しており(MBW技術)、これが版胴との密着性を高め、版ズレ防止効果も生み出した。

また、エッジ描画性の向上も大きなメリットにつながっている。『SUPERIA ZN-II』は、感光層内部に親水化剤を含ませ、機上現像の過程でエッジ部まで浸透させる方法(DDS技術)で、エッジ汚れの防止と描画領域の拡大を同時に実現した。これにより、製版関連部門での作業負荷の軽減が図れているという。
これまで、文字や画像がエッジ部に寄る場合は、敢えてA1サイズの2段組みで製版するなどの方法で対応していましたが、ZN-IIでエッジ部まで描画が可能になったことで、このような手間をかける必要もなくなりました。エッジ描画性は、従来品にはない優れた点の一つだと思います。おかげで現場の省力化につながっています」(永井氏)

描画領域の拡大により、右写真のようなスポーツ紙のレイアウトにも対応が可能になった。


■ 今後の展望|2020年までに全拠点の無処理化を目指す

着々と『SUPERIA ZN-II』の導入を進め、順調に運用を続ける中日新聞社。スムーズな導入と安定運用の背景として、永井氏は、FFGSのサポート対応を高く評価する。
浜松都田工場の立ち上げの際に、ロングランのテストで版摩耗が発生したことがあったのですが、FFGSさんには、刷版炭素量の調査や印圧チェックなど、迅速な対応を行なっていただきました。結果、プレート自体に問題がないことを確認でき、また、的確なアドバイスのおかげで解決の糸口を見出すことができました。導入後もきめ細かいアフターフォローをご提供いただけるので、安心感が違いますね」(永井氏)
また、金入部長は、富士フイルムの技術力にも期待を寄せる。
「私どもユーザーの声を真摯に受け止めて製品の改良につなげてくださる姿勢と技術力は、非常に心強いものがあります。ZN-IIも、そんな富士フイルムさんだからこそ生み出せたのではないでしょうか。実際にZN-IIを運用してみて、プレートの性能に関しては申し分のない仕上がりだと感じています。そのうえで敢えて要望を申し上げるとすれば、一般的に無処理プレートは有処理プレートに比べて露光感度が低くなる傾向にありますが、これを少しでも上げてほしいということと、版面の画像コントラストをもう少し高くしていただきたい、ということでしょうか。今後の継続的な改良に、大いに期待したいですね」(金入部長)
中日新聞社は、2020年に、愛知県大府市に無処理専用の新工場を開設する予定で、その他の工場についても、同年までに無処理化を進め、「全拠点完全無処理」の体制を実現する計画だ。

※掲載内容は、取材当時のものであり、一部変更が生じている場合がございます。ご了承ください。


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