静岡新聞社様
合紙レス化・エッジ汚れ解消などにより、現場での安心感が格段に向上。新聞社初のGGP参加で環境貢献の幅をさらに拡大

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新聞用完全無処理CTPプレート「SUPERIA ZN-Ⅱ」導入事例


静岡新聞社は、環境負荷削減、作業負荷軽減、BCP対策などの目的で、2016年から新聞用完全無処理CTPプレート『SUPERIA ZN』を導入し、5ラインあるCTPのうち2ラインで運用してきたが、このほど、改良版である『SUPERIA ZN-II』への移行を開始。また、富士フイルムが展開する環境貢献プロジェクト『Green Graphic Project』(GGP)に、新聞社として初めて参加した。無処理化による効果や、ZN-IIで新たに得られたメリット、GGP参加を決めた背景などについて、株式会社静岡新聞総合印刷の代表取締役社長・大石信吉氏、管理部長・青木伸人氏、管理部・井口七月氏に伺った。

■ 導入背景|2年間の『SUPERIA ZN』運用で無処理化のメリットを実感

静岡新聞社では、「カラーの静岡新聞」として培った技術力を基盤として紙面品質向上を追求するとともに、「環境対応は報道機関としての使命」という考えのもと、製作工程の環境負荷低減に取り組んでいる。CTPについては、アルミのクローズドループリサイクルシステム『PLATE to PLATE』にいち早く参加しているほか、有処理のラインでは自動現像機ロングライフ化キット『LL-6KIT』、現像廃液削減装置『XR-5000』の導入により現像廃液の削減を図っている。そして2016年6月に2ラインを有処理プレート『HN-NⅤ』から『SUPERIA ZN』に切り替え、無処理化を推進してきた。
「新聞製作の過程では、さまざまな生産ゴミが発生します。その大部分は資源としてリサイクルできますが、現像廃液だけは、産業廃棄物として処理に出さなければなりませんでした。ですから、廃棄物削減、そして処理コスト削減のためにも、現像をなくしたいという思いがあったのです。無処理化には不安もありましたが、メリットへの期待の方が大きかったので、導入を決断しました」(大石社長)

『SUPERIA ZN』の導入から2年あまり。無処理化のメリットはさまざまな形で表われているという。
無処理ラインでは、自現機での処理が不要になったことで、廃液がゼロになりましたし、メンテナンスにかかわる作業負荷や、薬品の購入コストの削減にもつながっています。また、CTPライン上で版情報をインクジェット印字する仕組みを併せて導入したことにより、輪転機での版掛けミスの防止も徹底でき、作業面でも無駄が削減できました」(青木部長)

また、静岡新聞社では、CTPの無処理化を地震対策の一環としても捉えている。自家発電設備で発電した電気を有効活用するためには、無処理の方が望ましいという。
自現機を立ち上げる際には、現像液の液温を約30度まで上げる必要がありますが、そのために電気を使うことはできるだけ避けたい。また、揺れによって現像槽の薬品が混濁してしまい、仕込み直しを余儀なくされる可能性もあり、そうなれば機動性を損なうことになりかねません。無処理化は、こうしたリスクを回避する意味でも有効だと考えています」(大石社長)


■ 導入効果|エッジ汚れと版ズレが見事に解消し、より安定した運用が可能に

一方、『SUPERIA ZN』を運用する中で、課題も浮かび上がってきた。一つは、版エッジ汚れが有処理に比べて発生しやすくなったこと。通常の印刷では問題ないが、印刷条件が変わると汚れが出やすくなるため、有処理プレートよりもシビアな管理が求められたという。もう一つは、印刷中に版下フィルムのズレが生じてしまうこと。これは、有処理の『HN-NⅤ』が、自動現像機内で裏面にガムを塗布していたのに対し、『SUPERIA ZN』ではそれがなくなったため、版胴との摩擦が低下したことによるものと見られた。
「新しい技術は、最初から完成されたものだとは思っていません。メリットと同時に、必ずいくつかの課題が出てきます。そうした課題を経験することも、私どもにとっては勉強であり、会社としての財産になると考えています。ZNに関しても、現場から上がってきた課題をFFGSさんと共有し、改善策を検討しながら運用を進めていきました」(大石社長)

こうして実運用の中で生まれた課題は、改良版である『SUPERIA ZN-II』でどのように改善されたのか。同社では、2018年5月から『SUPERIA ZN-II』の検証を開始し、7月からロングランテストに入った。その結果、エッジ汚れ、版下フィルムのズレはいずれも確実に改善され、問題なく印刷できることが確認できたため、短期間のテストで『SUPERIA ZN』からの移行を決定したという。
委託元の担当者にも刷り上がりをチェックしていただき、これなら問題ないと、OKをいただきました。これで受託紙も含めて安心して無処理化を進めることができます。また、将来的に輪転機を4×1に更新し、パノラマ印刷を行なう可能性も考え、描画領域についても検証を行ない、ZN-IIでは版エッジぎりぎりまできちんと描画できることを確認しました」(青木部長)
また、大石社長は、『SUPERIA ZN-II』の性能だけでなく、課題に対する富士フイルムの対応力も高く評価する。
「こちらからお伝えした要望に対し、すぐに改良版の開発に着手していただき、わずかな期間でZN-IIをリリースされました。この技術力の高さには驚かされましたね」(大石社長)

『SUPERIA ZN』から『SUPERIA ZN-II』への移行にあたっては、セッターでZN-II用の版種登録を行なった程度で、露光条件や印刷条件などの変更はせず、『SUPERIA ZN』と同様の環境のまま運用している。ドットゲインなどの変化もなく、印刷現場では切り替えを意識せずに使えているという。そのうえで、『SUPERIA ZN-II』ならではのメリットも生まれている。青木部長はこう語る。
ZNの課題であったエッジ汚れと版下フィルムのズレは見事に解消しました。とくに版下フィルムズレの抑制効果は、他社の無処理プレートよりも優れており、印刷オペレーターにとっては安心感につながっています。また、合紙がなくなったことも大きいですね。給版時のトラブルのリスクが削減できますし、これから有処理のラインを無処理化する際、合紙除去機構の設置が不要になりますから、設備投資も抑えられます
さらに、ZN、ZN-IIに共通する無処理プレートの長所として、青木部長は「キズのつきにくさ」を挙げる。
ZNを導入してから、キズの発生は格段に減っています。これは、プレートの焼き直しや、版替えのための印刷機停止といったロスの削減につながる大きなメリットで、ZN-IIにもしっかり引き継がれています

「SUPERIA ZN-Ⅱ」の導入によって現場での安心感が高まった


新聞社で初めてGreen Graphic Project (GGP)に参加

カーボン・オフセット証書を手にする井口氏

静岡新聞社は、『SUPERIA ZN-II』の導入とともに、富士フイルムがカーボン・オフセット制度を活用して展開している環境貢献活動『Green Graphic Project』(GGP)への参加を決めた。新聞社として初の参加となる。その経緯について、大石社長はこう語る。
「私どもは、情報発信の役割を担う新聞社として、環境保全に貢献したいという意識を強く持っており、また、SDGs達成に向けた活動を積極的に推進していきたいと考えています。具体的な活動の一つとして、クローズドループリサイクルシステム『PLATE to PLATE』にも、スタート当初から参加しています。GGPについては、今年の2月頃に業界紙の記事で知り、すぐにFFGSさんに『ぜひ参加したい』と申し出たのです。その時点では、まだ新聞社向けの体制が整っていなかったようなのですが、担当営業の方がご尽力くださり、いち早く参加することができました」
GGPについては、静岡新聞総合印刷が毎月発行している社内向け広報紙で紹介し、プロジェクトの仕組みや意義などの周知を図った。その紙面では、GGPへの参加が開発途上国支援への貢献につながっていることや、具体的なCO2削減量などをわかりやすく説明している。入社2年目で広報紙の編集を担当している管理部の井口氏は、「刷版は毎日使う重要な資材。そんな身近なところから環境貢献ができるのは素晴らしいことだと思う」と話す。

静岡新聞総合印刷が発行する広報誌『MIRUI』

「静岡新聞総合印刷は日々印刷の仕事に携わっていますが、他のグループ会社の方は、印刷に関して知らないこともたくさんあると思います。でも、せっかく新聞社で働いているわけですから、少しでも印刷のことを知っていただければと、そんな思いでこの広報紙をつくっています。記事を書くためにはきちんと理解しないといけないので、取り上げるテーマについて自分自身も勉強しながら書いています。GGPに関しても、FFGSさんにいろいろと教えていただきながら仕組みなどを理解していきました」(井口氏)
記事は社内ポータルサイトにも掲載され、実際に印刷以外の部門でもGGPに対する関心が高まっているという。


■ 今後の展望|来春目処に全面無処理化へ

『SUPERIA ZN』で無処理化のメリットを実感し、『SUPERIA ZN-II』によってさらに安定した運用が可能になったと評価する静岡新聞社。2019年春を目処に、5ラインすべてを無処理化する計画だ。大石社長は「これにより製版現場のさらなる作業性向上が実現する」と語る。
現像工程がなくなることで、製版に関してはケミカル的な管理が一切不要になり、端末上のオペレーションのみでプレート出力の業務をこなせるようになります。経験の浅い若い人や女性でも製版オペレーターが務まるようになり、昨今厳しさが増している人材確保の面でもメリットが出てくるのではないかと考えています」(大石社長)

また、青木部長は、今後のCTPプレートの進化、そしてFFGSのサポートにも期待を寄せる。
「今回、ZNからZN-IIへの改良で、確実に性能が向上しましたが、CTPプレートはこの先もまだまだ進化していくのではないでしょうか。FFGSさんとは、定期的にミーティングの場を設けて課題を共有しており、現場の声も丁寧に聞いていただいています。そして、私どもの要望をしっかりと製品に反映していただけるので、非常にありがたいですね。今後も引き続きこのような形で、きめ細かい対応をお願いできればと思います」(青木部長)
静岡新聞社では、環境対応、品質、スピードとさまざまな要素が求められる中、紙媒体としての新聞の価値をさらに高めていくため、時代のニーズを見極めながら新技術を積極的に採り入れていく方針だ。

※掲載内容は、取材当時のものであり、一部変更が生じている場合がございます。ご了承ください。


■お客様プロフィール
静岡新聞社
所在地:(本社)静岡県静岡市駿河区登呂3-1-1

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