株式会社琉球新報社 様
全国の新聞社に先駆け、いち早く「100%無処理化」を達成 現像コスト削減、作業負荷軽減に期待通りの効果

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新聞用完全無処理CTPプレート「SUPERIA ZN」導入事例


 株式会社琉球新報社(本社:沖縄県那覇市天久905、代表取締役社長:富田詢一氏)は、2016年5月から富士フイルムの新聞用完全無処理CTPプレート『SUPERIA ZN』の本格運用を開始し、同年8月には新聞社として初めて100%無処理化を達成した。導入に至った経緯や『SUPERIA ZN』に対する評価などについて、執行役員印刷局長・石堂清彦氏、印刷局付参与・日高均氏に伺った。

■廃液処理コストと自現機洗浄の作業負荷が2大課題

琉球新報社は、1893年(明治26年)、沖縄県初の新聞として隔日刊新聞『琉球新報』を発行して以来、124年もの歴史を持つ新聞社。先進の技術・設備を率先して採り入れる社風があり、1979年8月には、九州・沖縄地区で初の超高速多色カラー・オフセット新聞印刷輪転機を設置。81年12月からは全国初の朝夕刊連日カラー印刷を開始した。近年では、高精細スクリーニングや高濃度インキなどを全国に先駆けて導入している。現在、自社発行の『琉球新報』『新報スポニチ』のほか、『日本経済新聞』などの受託印刷も行なう。

 同社が無処理プレートに着目した背景には、大きく二つの課題があった。一つは、現像廃液の処理コストだ。
「沖縄県内には廃液処理施設がなく、回収された廃液は九州まで運搬して処理することになるため、費用が割高になります。無処理プレートに切り替えることで、この処理コストがゼロになる。同時に、環境負荷の削減にもつながりますから、社会貢献の面でもメリットは大きいと考えたわけです」(石堂局長)
 もう一つの課題は、オペレーターの作業負荷の軽減だ。とくに、自動現像機のメンテナンス作業をなくしてほしいという要望が、現場から上がっていたという。
「現像槽やローラーなどに付着した汚れを洗い落とす作業がけっこうな重労働で、4~5人がかりで半日以上かかっていました。担当者の負担も大きいですし、メンテナンス作業で半日もの時間を取られるという状況は、生産効率の面からも改善の必要があると、以前から感じていました」(日高参与)

 こうした課題の対策を模索する中、2015年7月の『JANPS2015』でFFGSが『SUPERIA ZN』を発表。琉球新報社では、その直後から早速、導入に向けた具体的な検討を始めたという。
「実は、FFGSさんが新聞用の無処理プレートを出すという話は、JANPSの少し前に聞いており、その段階から、ぜひ導入したいと考えていました。ですから、正式発表後すぐにテストを開始しました」(石堂局長)
 この決断と実践の早さは、まさに同社のDNAである「進取の精神」によるところだろう。日高参与はこう語る。
「無処理プレートに限らず、これまでも新しい技術や設備を積極的に採り入れており、CTPの導入や高精細印刷の取り組みも、他社に先駆けて進めてきました。設備の導入は現場主導で進めることが多いのですが、いずれもいい結果につながっています」
 『SUPERIA ZN』のテスト印刷は2015年10月頃から本格的に開始し、ショートラン、ロングランの検証を経て、2016年5月、正式導入に至った。


■有処理プレート同等の網点再現と刷り出しの早さ

 石堂局長によると、導入前には無処理プレートに対して多少不安な点もあったが、テスト時の感触はきわめて良好だったという。
「耐刷性が有処理プレートより下がり、紙面に影響が出ないかどうか、という懸念はありました。コストが削減でき、作業負荷が減っても、商品である新聞がきちんと刷れなければ導入できません。しかしその心配は杞憂でした。実際にテストしてみたところ、耐刷性も紙面品質も従来のプレートと遜色なく、ロングランでも非常に安定していました。ロングのテストを終えた時点で、導入はほぼ即決でしたね」(石堂局長)
 もちろん、費用対効果なども綿密に検証したうえで導入に至ったのだが、「ZNに関しては、検討開始から導入決定までが非常に早く進んだ」と日高参与は振り返る。
「懸念していたような問題が、テスト印刷でまったく出なかったこともありますし、無処理プレートの場合、コスト削減効果などが試算しやすく、メリットがわかりやすいということも、導入がスムーズに進んだ一つの要因ではないかと思います」(日高参与)

 半年余りのテストを経て、2016年5月に、2台あるCTPラインのうち1台を無処理化。3カ月ほどの運用で問題ないことを確認し、同年8月、残り1台も『SUPERIA ZN』へと切り替えた。無処理プレートの既設工場での全面移行は、全国の新聞社で琉球新報社が初めてであった。
 日高参与は、実運用における『SUPERIA ZN』への評価を次のように語る。
「品質・生産性とも申し分ないですね。刷り出しは有処理プレートとほぼ同じ時間で立ち上がります。当初、機上現像のためもう少し時間がかかるかと予想していましたが、ほとんど変わらず、損紙の量も増えていません。高精細の網点再現についても、有処理プレートと同等という印象です。ZNに切り替えてから、紙面品質に対する広告主などからの評価も従来と変わっていませんし、現場で刷りづらいという声もまったく上がっていません」

自現機上にコンベアを設置しプレートを通す。版情報をインクジェットで版面に印字する仕組みを導入し、プレートのセットミスなどのリスクも低減している

■版キズなどのトラブル削減で品質安定化、稼働率アップ

『SUPERIA ZN』の本格運用開始から約1年。石堂局長は「期待通りの効果が得られている」と評価しており、中でもコスト面、作業面での恩恵を強く実感しているという。
「やはり廃液処理費がゼロになったことはありがたいですね。年間ではけっこうな金額になっていましたから。新聞社の印刷局では、どうしても資材に多くのコストがかかるので、少しでも圧縮しようと日頃から努力しているわけですが、ZNの導入は、こうしたコスト削減の取り組みに大きく貢献しています」(石堂局長)
 同社では、高精細スクリーニングや高濃度インキも資材コスト削減の一環として採用しており、実際にこれらの相乗効果でインキ使用量を約30%削減することに成功している。加えて今回、CTPの完全無処理化により、自現機に関わる薬品購入および廃液処理、電力や水の使用量などがすべてゼロになったことで、さらに大幅なコスト削減が実現した。

 一方、作業面の最大のメリットとして石堂局長が挙げるのは、「自現機の洗浄作業から解放されたこと」。
「2~3カ月ごとに行なっていたのですが、これが一切不要になったことは、現場の担当者にとっては大幅な負荷軽減になっていますし、自現機洗浄に費やしていた時間を印刷機の整備に充てるなど、時間をより有効に活用できるようになり、効率アップにもつながっています」
 さらに、自現機の削減によって、品質の安定化も図れているという。従来の有処理システムでは、液の劣化による現像残りなどが発生し、印刷立ち上がりで汚れが出ることがあったが、無処理化によってこうしたトラブルも解消した。

 もう一点、現場のメリットとして日高参与は「版面のキズ耐性の高さも作業性向上に大きく貢献している」と付け加える。
「有処理プレートでは、注意して取り扱っていても、なかなか版キズのトラブルをゼロにすることができませんでした。印刷開始後にキズを発見して輪転機を止めると、再始動の際にまた損紙が出てしまいますし、時間的なロスも大きい。しかしZNは、表面の保護層のおかげでキズがつきにくく、刷版室から輪転機までの運搬時の安心感が違います。実際、ZNに切り替えてから、版キズで輪転機を止めたという報告は一度もありません。プレートの焼き直しが減った分、コスト削減にもつながっています」
 その扱いやすさから、暫定的に1ラインを無処理化した段階で現場からは「もう1ラインも早くZNに移行したい」という声が上がっていたという。

現場では有処理プレート以上の「扱いやすさ」を実感


■社会貢献も意識しながら工程変革に挑み続ける

 業界でいち早く「CTPの完全無処理化」を達成し、安定した運用によってコスト削減、作業効率向上などのさまざまな効果を挙げている琉球新報社。もちろん、このような工程変革は、社内的メリットの追求だけでなく、報道機関として、環境負荷の削減をはじめとする社会貢献も視野に入れたものであり、この姿勢は今後も変わらない。
「環境問題を紙面で取り上げている私たち自身が、環境への配慮を疎かにするわけにはいきません。昔に比べれば薬品の使用量などは確実に少なくなっていますが、まだまだ、有害物質の排出を減らすための継続的な努力は必要です。今後も、無処理プレートのような効果的な新技術を採り入れながら、資材の無駄をなくし、環境保全に貢献していきたいと考えています」(石堂局長)
 現在同社は、那覇市泉崎に、600人収容の大ホールなどを備えた新本社ビルの建設を進めており、2018年春に竣工の予定である。これが完成すると、名実ともに沖縄の最先端の情報発信拠点となる。そしてその情報発信を支える印刷局も、時代の流れを先取りしながら、紙面価値のさらなる向上を目指して不断の変革を続けていく。

※掲載内容は、取材当時のものであり、一部変更が生じている場合がございます。ご了承ください。


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