コラム「ダイレクトメール(DM)で顧客へのリーチが向上、鍵はデジタルメディア連携」では、この10年間において、日本の総広告費の落ち込みに対し、DMの落ち幅が限定的だったという統計結果をご紹介しました。また、富士フイルムの実証実験の報告では、DMとデジタルメディアを連携することで、DMの価値を高められるという具体的な結果を解説しました。これらのことから、今後も販促ツールとしての需要が見込めるDMは、高い販促効果を得られ、ブランドオーナー・クライアントに対して強い訴求力があることをご理解いただけたと思います。
そこで、実際にDM印刷に取り組まれている印刷会社さまご協力のもと、DM印刷で成功する秘訣を探りました。「営業編」と「製造編」の2回に分けてお伝えします。今回は「営業編」です。
コロナ禍でも落ち込みの少ないDMビジネス
特に伸びている業種は?
コロナ禍におけるDMビジネスの影響と、その中でも需要が伸びているDMの業種を印刷会社さまに伺ったところ、以下のポイントがありました。
・これまでメインだった集客目的のイベント案内DMは大幅減。
・在宅時間の増加から、ホームセンター、家電量販店への来店案内DMや会員向けDMが増加。
・密を避ける移動手段として車の需要が増え、新車紹介のDMが増加。
・生活様式の変化に伴う住み替え需要が増え、不動産物件紹介のDMが増加。
・コロナ関連の通知系DM(企業、自治体)は大幅増。
コロナ関連では、全国自治体のコロナワクチン接種券、医療機関宛ての病床数調査のアンケートDMが増加。一般企業においても、業務手続きの変更をお客さまに知らせる「通知系DM」が大幅に増加しています。
また、生活様式の変化に伴う新たなニーズを発掘するため、小売業や不動産業などがDMを活用する事例も増えています。
印刷会社さまからは、「『通知系DM』の大幅増は一過性の可能性があるが、生活様式の変化に伴うDMは今後も増加が見込める」という意見もありました。アフターコロナを見据え、クライアントに対して新しい生活様式に沿うDMビジネスの提案をしていく訴求力が重要だと伺えます。
新規受注できたDMの企画・提案例
ブランドオーナー・クライアントへDMを提案する際には、DMに期待される効果をはっきりと提示することが必要です。各印刷会社さまでDMを新規獲得した際、どのような企画・提案を行ったのかを特別に教えていただきました。
キーワードは、「顧客情報の有効活用」「Webとの連動」「手元に届くタイミング」です。
新規獲得に至った提案事例
・カーディーラー向け新車紹介DM
これまではイベント集客DM中心だったカーディーラーに対し、お客さまの購買履歴などの情報を有効活用したDMを提案。現在の車種から次に購入すると思われる新車を割り出し、車検前のタイミングで新車の写真や特長を入れたDMを制作したことで、お客さまの生活に寄り添った、ライフスタイル提案型のDMにつながった。
・飲食店向け来店案内DM
来店頻度に応じてお客さまをランク分けし、ランクの高いお客さまにはリッチなデザインのDM(紙)を発送し、ランクの低いお客さまには電子メールのDMを送信することを提案。同じDM広告費でも、ランクの高いお客さまの来店率を確実にアップさせる提案が評価された。
・不動産向けWeb連動型広告DM
不動産物件のDMにお客さまごとに個別のバリアブルQRコードを載せて、DMを受けとったお客さまをWebページに誘導。Webページで物件の特長をさらにアピールでき、かつ、アクセスしたお客さまがどこに興味を持たれたかを特定することで、次の営業活動につながることを不動産会社に提案。WebとDMを連動し、それぞれの特長を生かすことで、購買率アップにつなげた。
・家電量販店向けバースデーDM
これまでは、同じ誕生月のお客さまにまとめて来店特典付きのバースデーDMを送っていたが、期待するほど来店率は上がっていなかった。そこで、この家電量販店に対し、お客さまごとに誕生日の前日に届くDMを提案。一人ひとりにタイムリーにDMを届けることで、誕生日プレゼントの購入を目的とした来店率アップにつながった。
「反応・効果を測定できるDM」でDMビジネスを継続受注
お話を伺った印刷会社さまからは、「DMビジネスは1回の発送だけで終わるのではなく、継続受注(リピート)できるジョブとして提案し、成約することが非常に重要」という声が多く聞かれました。「継続受注につながる提案」とは、どのようなものでしょうか。
まず、クライアント側としては、送料も掛かり高価な印刷物であるDMが、実際に適切な効果があったのか、訪問・購買につながったのかを重要視しています。継続的な施策としてDMビジネスを受注する秘訣は、「反応・効果を測定できるDM」を提案することです。具体的な例と共に、以下にご紹介します。
継続受注につながったDM提案例
・「来店時にDMを持参してもらう」「QRコード経由でのアクセス数を測る」など、DM内に反応率が分かる仕組みを持たせ、効果を測定。次回のDM発送において、内容や発送エリアの選定につなげるといったPDCAサイクルをクライアントと一緒に行っている。
・DMによる集客提案の効果を確認するため、実際に会場を訪問し、来場されたお客さまに来場動機のアンケートを実施。
次の課題を発掘し、提案に生かしている。
印刷会社さまに聞いた!
DMビジネスで成功する提案活動のポイント
・アフターコロナを見据え、新しい生活様式に沿ったDMビジネスを訴求する。
・DMに期待される効果と効果を生む手段をクライアントにはっきりと提案する(新規受注)。
・納品して終わりではなく、クライアントと一緒になって次期課題を発掘する(継続受注)。
DMビジネスを開始する際
受注前にクライアントと合意すべきポイント
また、顧客の個人情報を使用し、バリアブルに印刷するDM印刷は、仕事を受注する前にクライアントと入念にコミュニケーションを取り、特に以下の3つのポイントについて、あらかじめ合意しておくことが重要です。
クライアントと合意しておくべき3つのポイント
1. レイアウトや入稿データ項目の仕様
2. 入稿、出稿の手段
3. 個人情報に関する入稿データのチェックおよび取り扱い
特に、ポイント3の「個人情報に関する入稿データのチェックおよび取り扱い」においては、「名前に外字が含まれる」「長すぎる住所が含まれる」「明らかな誤植がある」などのケースがあります。印刷会社さまでどのようなチェック体制を構築し、また、問題となるデータをどのように扱うのかなど、詳細を知りたい方は下記『ダウンロードコンテンツはこちらから』をクリックいただき、詳細コンテンツをダウンロードしてください。
本記事では、DMビジネスで成功されている印刷会社さまから、「DMビジネスが活況な業種」や「クライアントへの提案のポイント」などを教えていただきました。では、実際に新たにDMビジネスを始める場合には、どのような点に気を付けるべきでしょうか。お客さまの個人情報を扱うため、受注時から製造工程、検査工程まで、DMビジネスならではの重要なポイントがあります。DM印刷に取り組む印刷会社さまにお伺いした内容を、第2弾の「製造編」で皆さまへお届けする予定です。
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