経営セミナー講師に聞く
「我が社の成長戦略ストーリー」 Vol.1

「必勝M&A戦略による服部プロセス成長の方程式」
服部プロセス株式会社 代表取締役 服部晴明氏
第3回:M&Aでの企業再生の重要なカギは、生産性を高めるための『インフラ』の構築

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経営セミナー第3回コラムMV

シリーズで掲載を行なっている「経営セミナー講師に聞く『我が社の成長戦略ストーリー』Vol.1」の第3回目は、服部プロセス株式会社の代表取締役・服部晴明氏、服部社長と共に同社の様々な改革に取り組んでこられた、制作工務部課長の羽田成樹氏のお二人に話を伺いました。今回からは、同社の成長戦略ストーリーの核心部分となる、M&Aで服部プロセスグループとなった会社を収益性の高い優良企業へと再生を図るための同社固有のインフラ(経営管理の仕組み、MIS、生産システム、社員教育までカバーして、生産性の高い経営を支える基盤となるもの)について、詳細なご紹介をしていただきます。聞き手は富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ株式会社 営業本部 部長・中林鉄治です。

経営セミナー第三回_服部社長
服部社長
羽田課長
羽田課長

服部プロセスのグループ経営を支える「効率化と見える化の『インフラ』」

中林 前回(第2回)は、服部社長がM&Aに取り組み始めたきっかけや、初期のM&Aの詳細についてお伺いしました。今回は、これまでに実施された10件以上のM&Aを全て成功させて、各社共に非常に収益性の高い優良企業へと再生することができた、その秘訣について伺っていきたいと思います。

服部社長 当社のM&Aが成功している要因は、一言でいうと、「効率化と見える化」です。M&Aした会社を再生するにあたっては、まず当社で構築している「効率化と見える化」のための『インフラ』を持って行っています。簡単に言うと、それで事足りています。
 実は、M&Aさせていただく提案をする際には、まず、先方に当社についてプレゼンするのですが、そこで興味を持っていただけるのは「服部プロセスグループの効率化と見える化の『インフラ』を導入して活用することで業績を改善できる」ことがイメージできるという点です。当社の『インフラ』の中身を理解していただけると「この『インフラ』があるから、何社かの候補先の中から、服部プロセスを再生のパートナーとしてグループに入って、立て直しを任せてみようか」と考えていただけます。

中林 服部社長のおっしゃる『インフラ』とは、どういうものなのでしょうか。

服部社長 MISといったシステムやカラーマネージメントなどのノウハウ、社員教育の仕組み、プライバシーマークやISOといった認証など様々なものが含まれます。XMF Remoteも当社では『インフラ』なんです。課題を新しい技術で解決できるスタッフが社内にいることも広い意味では『インフラ』だと思っています。当社ではJavaScriptなどを活用して制作の様々な作業を自動化しているのですが、その実務を行なっているスタッフも「こんな社員がいたら絶対に『インフラ』がもっと強くなる」と考えて、中途採用で入社してもらいました。
 私は、『インフラ』がとても大事だと思っています。例えば、もしライバルの印刷会社が当社の顧客にリモート校正の提案をしてきたとしても、「当社にはXMF Remoteがあります」と言えますからね。プライバシーマークなども同じで、仕事を獲得する際に、そのような条件が必須となった時、それを持っていないと勝負になりません。当社は、日本国内で必要な『インフラ』はグループとして、大体揃っていると思います。だから、常に勝負ができる。土俵にさえ上がることができれば、あとは、技術や価格、スピード、品質などで勝負できます。そのため、とにかく、少なくとも、まず『インフラ』では負けないようにしていこうと考えています。私がやっている仕事は『インフラ』をつくり、日々それを進化させることなんです。
 それから、XMF Remoteもそうなのですが、『インフラ』で大事な要件のひとつに、「グループ内の全員、誰もが使える」と言うことがあります。例えば、営業も『インフラ』を武器として使えるようになっています。私も、『インフラ』を使ってしっかり戦えるように、一生懸命つくっています。みんなが使えるようになっていますから、新しくグループに入った会社の社員とも共有できるのです。
 さらに言うと、M&Aでグループに入ってきた新しい会社にはそれぞれ良さや特徴がありますので、それを取り入れることで、服部プロセスグループの『インフラ』がさらに強化されていきます。実際、新たなM&Aでグループ会社が増える度に、『インフラ』もどんどん強くなっている印象です。

中林 なるほど。服部社長のおっしゃられる『インフラ』というのは、ハードウェア、ソフトウェア、業務のオペレーションや社員教育の部分、各種認証への対応など、印刷物の受注〜生産から経営管理までをカバーする、印刷業経営に関する基盤となるもの全部含めてのシステムなんですね。
 しかし、これまで、たくさんの会社の経営者の方々が服部さんに見学に来られて、その『インフラ』が服部プロセスの競争力の前提になっている事は皆さん大体は理解して帰られるのですが、どこも見学後に服部さんのような仕組みを構築されているわけではありません。これまで多くの事を積み重ねてきて完成してきたものなので、そう簡単には真似できないのでしょうか。

服部社長 皆さん「真似できない」とおっしゃいますが、M&Aでグループに入った企業は1ヶ月くらいで真似できていますよ。これは不思議なことです。

スピードアップや効率化を実現する『制作のインフラ』

中林 『インフラ』づくりを最初に意識されたのはいつ頃ですか?

服部社長 最初から常に意識にしていました。私が印刷の仕事を始めた時代は、もう完全にスピードの勝負でしたから。まず、RIPのスピードや印刷速度がどんどん上がった。その後は、制作のスピード競争になりました。その勝負に勝つために様々なやり方を考えたのですが、その中の一つのアイディアがB2サイズのチラシをB4に4分割して制作する、ということでした。大手印刷会社でもB2のままで制作していたようですが、B2ではプリントアウトにとても時間がかかりました。そんな中、当社のあるスタッフが「B4に4分割した方が時間を短縮できる」ということに気が付いて、B4サイズで制作するようになりました。分割したものを上手く合体するためのレタッチャーもいましたので、瞬発力が増し数倍の効率化が図れました。このノウハウは制作部門での新人教育にも活かしていて、新人には、まずB6で作業をさせて、スピードが上がってきたらB4で作業させるというようにしています。

羽田課長 入社初日に一日かけてB6サイズしか制作できなくて落ち込んで帰ったスタッフもいましたが、当社独自の教育を受けてもらいすぐにノウハウを習得していきましたね。今ではベテランですよ。

中林 御社ではサーバー・クライアントでの運用も早くからずっとやっていて、データを絶対二重管理しないといったルールも決めていますよね。サーバーとローカルのパソコン両方にデータが存在すると取り違えるミスが起こるので、データは完全に一元管理されている。データの管理方法が曖昧でミスをする会社は沢山あります。サーバーで保管すると言いながらローカルのPCにもデータを持っていて取り違えてしまうとか。服部グループ様では、作業をする時にはローカルのパソコンに持って行って、最新版は必ず上書きでサーバーの方に保存するルールになっているとお伺いしています。
 服部社長が『インフラ』とおっしゃっている部分には、このような業務のルールの統一、標準化も含まれているのですね。

制作部門の作業のスピードと標準化

羽田課長 B2をB4に四分割して作業する際には、レイヤーの構造と順番、文字加工の白縁の太さなど、オペレーターそれぞれが自分の好きなようにやると合体できないんです。だから、作業手順を統一せざるを得ないし、逆にいうと、統一しているからこそ出来ています。

服部社長 細かいことでは、拡大・縮小がありますよね。当社では125%拡大が基本なんです。これを80%縮小すると元に戻る。拡大作業は、125%拡大を割り当ててあるボタンを押して拡大する。元に戻すときには、80%縮小を割り当てたボタンを押しています。とても細かいことですが、これは結構大事なんです。みんなが「これは125%が2回分とか3回分大きくなっている」ことが分かるので、誰でも同じ大きさに戻せますから。

羽田課長 家電量販のチラシでは下版直前になってから「プライスを大きくしてほしい」といった指示をいただくこともよくあります。その時、このルールのお陰で素早くスムーズに対処できています。

中林 M&Aした企業にこうしたルールを持ち込んだ際に、これをきちんと定着させて、効率を上げるポイントは何ですか?

服部社長 当社のやり方を実際に見てもらって、「私達は何故こんなに苦労をしていたんだろう」と思ってもらうことです。「早いな」ではなくて。例えば、昨年グループに入ったDOORSという会社では、大手旅行代理店の仕事をしています。そこのデザイナーはIllustratorで作業しているのですが、羽田が「InDesignでやった方が絶対に早い」と指摘しても、何が早いのか分からない。自分達は触ったことがないので。何となく「早いかも知れないな」くらいの感じなんです。そこで、実際にInDesignを使ってみせるんです。そうしたら、全員が「あぁ・・・なるほど」、と瞬時に納得するんです。最近はzoomなども利用して、できるだけ実際に見てもらうようにしています。

中林 目からウロコが落ちる訳ですね。

羽田課長 そうなんです。「何故、こんな簡単にできることを私達はあんなに苦労していたんだろう」と思ったら、誰でも真似したくなりますよね。当社では、JavaScriptを使用して様々な作業の自動化を図っていますので、それらを目の当たりにすると驚く方が多いですね。

服部社長 そうすると、「もっと他にないのか」「こういう作業をJavaScriptでできないか」といった要望も出てくるようになります。自分達が楽できますからね。DTPでは、単純作業の繰り返しが結構多いんですよ。そういった作業は「JavaScriptでできるのではないか」と考えるようになります。実際、そうした作業の多くが自動化できます。そういう成功体験を積み重ねていくと、「旅行代理店の仕事は儲からない」と思っていたデザイナー達が、それを「とても儲かる仕事」だと捉えるようになりました。要はマインドが変わるんです。この旅行代理店の仕事は確かにとてもややこしいのですが、当社は基本的にややこしい仕事が大好きなんです。それを簡単にできたら大きな強み、差別化になりますから。

中林 そのM&A先の企業の制作業務を標準化して効率化された結果、生産性はどのくらいアップしましたか?例えば、旅行パンフレットでは日程表など、色々と自動化できる部分があると思いますが、従来と比較して何倍くらいになったのでしょうか。

羽田課長 大体5倍ぐらいですね。生産性向上によって制作コストが大幅に下がりました。また、遅くまで残業することなく最終下版できるようになりました。

新人を短期間で一人前にする『教育のインフラ』

服部社長 DOORSの残業時間が大幅に減った理由として、これまではグループ外の東京の制作会社へ外注していた仕事を、ネットを活用して、当社の宮崎の事業所で行うようにしたことも挙げられます。宮崎の制作スタッフは全員現地で新規採用したオペレーターになってまだ1年くらいの人達が中心なのですが、本社から制作経験の長い責任者を出向させていて、しっかり教育しましたので、作業スピードがものすごく速いんです。経験がなくても、当社のやり方で教育すれば、手の速いオペレータになると言うことですね。

羽田課長 宮崎事業所は、DTPの制作に関しては全くの未経験者を集めて教育するところから始めました。スタッフは現地で採用したのですが、応募者の中から、以前の制作の経験よりも、理解力の高い方、真面目そうな方を採用しました。
 制作業務経験者も1人採用しました。即戦力で使えるかと思ったのですが、当社の基準では「普通」でしたので、他スタッフと一緒に教育しました。その方はご家庭の事情で先日退職されたのですが、辞められるときに「服部プロセスの教育は本当にすごかったです。ありがとうございました」と感謝されました。実は、その方は当社で採用する前に5社くらい落ちていて、ようやく受かったという状態でした。それが半年くらい教育を受けたことで、再就職先として受けた会社のうち、3社から内定をいただいたとのことでしたが、実技試験の時、オペレーティングのスキルに面接官が驚かれたそうです。
 当社では、新入社員1人に教育係が1人付いて、ルールを教えてスキルを身につけさせます。新人がルールを間違えると教育係が怒られるので教育係は真剣に教えます。教育係が真剣なので新人もどんどん成長します。あわせて他のスタッフからもスキルやノウハウを共有してもらって、さらに成長する。当社にはみんなでより良い方法を考えて、みんなでそれを使うと言った、「共有の文化」みたいなものがあるんです。誰かが良い方法を考えて、自分だけがそれをやっていたりすると、「なんで、みんなに教えへんのや!」と社長に怒られますからね(笑)。

制作部門の作業のスピードと標準化のイメージ図

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