ウェビナー実施レポート
『経営戦略実践セミナー2021』 第一回
「危機からの脱却と成長を見据えて改革のアクションを起こす経営者たち」

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富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ株式会社(FFGS)は2021年8月19日(木)、『経営戦略実践セミナー2021』(全三回)の第一回をウェビナー形式で開催。約600名の方が聴講されました。
今年は、講師に株式会社エクシート 専務取締役 出口 淳氏にご登壇いただき、危機的状況からの脱却を図り、新たな領域へと自社を発展させるための取り組みについてご紹介しています。また、この厳しい時代において改革に取り組む印刷会社の経営者さまをゲスト講師にお招きし、FFGS 営業本部 部長 中林 鉄治の進行のもと、各社の改革について語っていただきます。第一回のゲスト講師には、株式会社ショセキ 代表取締役社長 浜中 豊和氏をお招きしました。

出口氏
株式会社エクシート
専務取締役 出口 淳氏
浜中氏
株式会社ショセキ
代表取締役社長 浜中 豊和氏
中林部長
FFGS 営業本部
部長 中林鉄治

レジュメ画像

■株式会社エクシート 専務取締役 出口 淳氏
テーマ:変革し続ける経営 顧客の発展に貢献する問題解決企業への転身を図る
第1回
変革を起こせる企業体質へ~会社の仕組みを根本的に作り直した10年の取り組み

◎創業から現在までの特長づくり
エクシートでは、1952年の創業から、1990年頃の印刷市場のピークアウトを経る中で、出版事業のスタートや、デザインや企画、ブランディング支援などを手がける企画室を新設し、業容拡大に取り組まれてきました。
出口氏が会社の後継者として帰郷された2007年から現在までの間には、リーマンショック、東日本大震災、コロナショックと経営を揺るがす3度の大きな外的な経済危機の中で、Web制作やマーケティング支援などにも取り組まれました。
これらの印刷・出版・webマーケティング支援が同社の柱になっていると語り、それぞれについて、印刷事業における差別化の取り組み、出版においてはタウン誌『福楽』で2018年に「タウン誌日本一」を受賞し、そのときに獲得したノウハウ、マーケティング支援での顧客との関係構築などをご紹介されました。

株式会社エクシート

◎帰郷後に直面した3つの課題
出口氏が帰郷した際に直面した、3つの課題に対する取り組みを解説されました。
〈3つの課題〉
①製造現場:5Sや教育について
②出版事業:メリットと不採算
③受注:“社長の顔頼み”で受け身の営業

◎3つの「脱・ドンブリ」に挑戦
3つの課題に対する取り組みとして、「ドンブリ勘定、ドンブリ製造、ドンブリ営業」の3つの「脱・ドンブリ」に挑戦されました。

・「ドンブリ製造」:工程を組んでもその通りにつくっていない。ルールもない。
・「ドンブリ勘定」:収益管理ができていない。
・「ドンブリ営業」:お客さまから電話がかかってきたときが営業の仕事という感覚で、アタックリストなどもなく、科学的な分析に基づいて動くこともしていない

5Sでは、社内のコミュニケーションも深まり、人づくりという面でも効果をえられたとのこと。
「脱・ドンブリ製造」ではコンサルタントに入っていただき、5日間製造を止めて皆でディスカッションをしたり、ディスカッションの質を高めるための教育を組み込むことで、社員に気づきを促すことができ、標準化、多能工化にもつながったそうです。

◎退路を断って新しい手法を採り入れる
新しい仕組みを入れても定着しないのは、退路を断っていない、戻れる安全地帯があるためです。そこで、従来の仕組みを完全に廃止して、新しいやり方に移行することにこだわり、「紙の伝票を廃止してMISを導入する」「営業日報を廃止して予材管理のシステムを入れる」「入稿用サーバーを廃止して『XMF Remote』のファイル転送フォルダを使う」など、古いものをきっちり廃止することが、同社の風土改善の取り組みの一つだと述べました。

経営講話の内容

一方で、社員同士の交流を深めるための社内イベントなどを行っています。経営哲学や理念などについて、皆でディスカッションする場を設けることで、自分たちの「在り方」についてもしっかり共有し、価値観のズレを防ぐ取り組みも重要だと語りました。

第一回では、出口氏が帰郷してから10年の間に行ってきたことの概要をご紹介しました。次回(10月15日開催)は、最近の取り組みを中心にお話しいただきます。

■株式会社ショセキ 代表取締役社長 浜中 豊和氏
テーマ:印刷を知らない私が取り組む『勝ち組印刷会社となるための全社的改革』

石川県でナンバーワンの新聞社である北國新聞社は多数のグループ会社を保有し、その中でもショセキは歴史のある会社で、来年で創業75周年を迎えます。新聞印刷のほか、チラシや書籍などの印刷物を手がけており、現在のメインはチラシ印刷です。
浜中氏は、親会社の北國新聞社から3年前に出向という形でショセキに移り、「印刷は知らなかった」としながらも、北國新聞社時代の「長い営業経験で培った営業的感覚」と「ショセキの顧客であったことによる、顧客から見たショセキの印象」をもとに、「勝ち組印刷会社となるため」ショセキという会社をどのように変えていったかを語られました。

◎この会社、もしかして鎖国中?
浜中氏が赴任した当時は、「刷版は目視しないと絶対ダメ」「営業マンはファイルの整理が大事な仕事」と言ったり、校正紙をバタバタやるアオリ校正も日常的で、「デジタル化できないのか」と疑問の声を上げたところ、「印刷会社では常識ですよ」という反応でした。「他の印刷会社でも当たり前なのか」と聞くと、「分かりません」「いままでこのやり方でやってきたから、これでいいんです」と返答され、「外部の情報が入らないこの会社は、いま“鎖国”しているのではないか」と感じられたとのこと。
この状況を打開すべく、FFGSに依頼し、全国のさまざまな印刷会社の見学によって身に着けた知識をもとに、変革を実践されました。

外部の情報が入らないイメージ

◎“身体は大きいが脂肪だらけ”の会社を鍛え直す
一番の問題点は、新聞印刷で利益が出ていたものの、チラシや書籍などの商業印刷で適正利益が取れていなかったことでした。そのため、商業印刷で適正利益が取れる体質にすることを最大の使命とし、変革に取り組まれました。
「身体(工場)は立派。しかし骨(利益)はスカスカ。ただし脂肪(利益の低い売り上げ)はたっぷり」と例えて、この不健康な体を健康体に戻すために、ダイエットになぞらえ、「食事の改善:いいものを食べて栄養をしっかり摂る。」「トレーニング:有酸素と筋肉の2種類」で解説されました。

◎残業時間の管理でコストを大幅削減
「食事の改善」では、栄養価(利益)を把握するためにこれまでの体重(売り上げ)だけが分かる古い体重計(MIS)から、骨量から体脂肪率まで全部分かる新しい体組計(最新のMIS)に入れ替えることで、売り上げと利益の把握が可能になりました。
「有酸素トレーニング」では、仕入れコストの削減、残業時間減、外注費の削減、ペーパーレス化に取り組まれました。
例えば人件費の削減では、他社見学で教えていただいた「ネームホルダーのストラップの色」での管理方法にも触れ、具体的な効果とともに解説されました。

◎工場の自動化・効率化に積極投資
「筋肉トレーニング」は戦略的設備投資と営業戦略上の投資に分け、解説されました。
・戦略的設備投資:「効率化の追求」と「自動化」のための投資と効果
・営業戦略上の投資:「XMF Remote」を使った校正のオンライン化や、社用車を「バン」から「乗用車」に変えることで、営業の「荷物を運ぶからバンでないとだめ」という意識の改革に成功

これからの印刷業は「印刷」だけではだめだという当たり前のことを、社員に理解してもらえたことも大きな変化だと語られました。

営業マン(社員)の意識改革と筋肉トレーニング(戦略的設備投資)とは

◎情報共有化、組織の見直しで良い循環をつくる
最後に、「循環をよくすること」として、2つの取り組みを紹介されました。
Google Workspaceを導入し、情報の共有化を進めました。すべての営業、業務系社員からレポートがダイレクトに上がるため、中間管理職が情報を止めることもなく、社員から改革に対するアイデアの提案を受けるようにもなったとのこと。
もう一つは、「できない」という言葉を排除すること。「できる人がいない」と言われていたWeb制作に関し、製本部門にいた美術系大学出身の社員を登用したWeb制作事業の成功例や、営業部門をセールス/デザイン/デジタル3つの課に分け、セールス課が「セールス特化部隊」で人数は3分の1になったが売り上げは全く変わらなかったという、「全社員で営業するスタイル」による効果などを紹介されました。

浜中氏は、「赴任からの3年間は、用紙の大幅値上げや、コロナ禍でどうやって売り上げ、利益を上げていけばいいんだというくらい大変でした」と振り返りながら、会社のロゴを3年で3回変え、現在のロゴマークは、それまでの青文字から赤文字にし、「いまから攻めていく、ここからが勝負」という意思表示だと語り、3年間の改革についての講演を締めくくられました。


【メインスピーカー プロフィール】
出口 淳 氏
株式会社 エクシート 専務取締役

印刷会社勤務、JAGAT調査研究員などを経て、2007年に株式会社エクシート入社後、既存事業の見直しと、社内のさまざまな改革による収益改善に取り組むとともに、目標達成のための案件の先行管理など、営業部門の改革を実践した。
販売促進、人材採用など顧客支援サービス拡充を図ることで、顧客からさまざまな課題について相談される会社となることを目指している。

【第一回 ゲストスピーカー プロフィール】
浜中 豊和 氏
株式会社ショセキ 代表取締役社長

北國新聞社入社後、広告営業部門、イベント関連部門での勤務経験を経て、2018年に株式会社ショセキ 代表取締役社長に就任。従来の新聞印刷事業への依存体質からの脱却と、商業印刷領域の新規事業の創出にチャレンジ中。MIS更新による見える化と、工場のさまざまな改善活動による生産性向上に取り組み、収益改善を図っている。
また、社内では、旧来の働き方、情報伝達などを改善し、少数精鋭で戦える強い企業体質に改革することを目指している。
前例主義、事なかれ主義の排除、逆張りの発想がビジネスポリシー。

セミナーの詳細なレポートをこちらからダウンロードしてご覧いただけます。

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『経営戦略実践セミナー2021』第二回開催のお知らせ

『経営戦略実践セミナー2021』第二回は、10月15日(金)に株式会社エクシート 専務取締役 出口 淳氏(2回目)と、東洋株式会社(北海道) 専務取締役 井上 雅之氏をお迎えし、ウェビナー形式で開催します。

【日時】
2021年10月15日(金)14:00~15:30

【テーマ】
「変革し続ける経営 顧客の発展に貢献する問題解決企業への転身を図る 第2回
改革を断行した我が社の現在 顧客深耕を目指す、クロスセル戦略と営業改革」
 講師:株式会社エクシート 専務取締役 出口 淳氏

「大転換する東洋株式会社の営業戦略~K字型経済状況において、勝ち組みとなるために~」
 講師:東洋株式会社 専務取締役 井上 雅之氏

【お申し込み締め切り】
2021年10月13日(水)

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