刷版現場の「働き方改革」。意外に手作業が多い 刷版工程は、どこまで「省力化」できるのか

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コラム第4回のMV

製版や刷版の工程は、それまで手作業だった版下作成やフィルムの集版などがパソコン作業に置き換わり、さらにCTP化でフィルム出力が不要になるなど、これまでもデジタル化により工数削減や効率化、省力化が進んできました。
しかし、依然として刷版工程に専任オペレーターが複数人いる印刷会社も少なくありません。では、実際にどこに人手がかかっているのか、作業の流れで確認してみましょう。

刷版工程の課題:3つのポイントで
意外に人手がかかっている刷版工程

CTPの出力では、版をプレートセッターに装填する作業に人手が必要です。最新の機種では、120版装填できるカセットを5段搭載しているものもあり、最大で600版を一度に装填できます。CTP版はアルミの板なので、菊全サイズで120版では約80㎏にもなり、サイズによっては2人がかりでの作業となります。1日複数回装填するので、かなりの重労働です。
次に版の現像工程では、薬品の補充や廃液の回収、本体やローラーの清掃といった定期的なメンテナンスが必要になるなど、日常的に人手は必要となっています。
そして版の現像後には、ジョブごとに版を仕分け、印刷する印刷機の仕様に合わせてパンチや版曲げを行い、指示書を付けて印刷工程へ運搬しますが、これらも手作業です。
CTP版を印刷機にかけるまでには、現在でも、これだけの人手がかかっています。また、人手を介する機会が増えるほど、キズ、ヘコみ、汚れといったトラブルのリスクも高まります。

刷版室省力化の課題のイメージをイラストにした画像

最新「刷版室の省力化」実例:
自動化による省力化のほか、人材有効活用の効果も

最近では、こういった刷版現場での手作業を、可能な限り自動化する取り組みが始まっています。CTP版の装填作業では、一度にパレットで1,200枚装填できるシステムの登場により、サイズに関わらず1人でパレットに積まれた版を装填することが可能となりました。現像工程では、完全無処理プレートの採用により、自動現像機に関わる全ての作業が不要となります。また廃液も無くなるなど、効率化だけでなく環境面においても大きなメリットが得られます。最後に、出力された版を自動でベンディング(版曲げ)やパンチを行い、その後印刷機ごとに分けられたストッカーへ、ジョブごとに自動で振り分ける装置が使われ始めています。
こうした刷版工程の自動化により、刷版専任のオペレーターをよりクリエイティブな作業へ配置するなど、人材の有効活用が可能となります。また、キズ、ヘコみ、汚れといった人員的なトラブルも減るので、一層の効率化が実現できます。

無処理CTPを用いたPrepress Factory Automationのイメージをイラストにした画像

今後の展望:完全無処理版や工程のシームレス化で実現する
さらなる省力化・無人化への取り組みとは

今後、自動化がさらに進めば、目指す先は完全無人化となるでしょう。CTP版の装填や、出力後の版を印刷工程に渡す作業は、AGV(AutomaticGuidedVehicle=無人搬送車)を使えば無人化が可能ですし、完全無処理プレートを採用すれば、現像処理に人手はかかりません。ベンディングやパンチ、仕分けはすでに自動化の仕組みがあります。MISなどの基幹システムと製造現場のワークフローが連携し、それぞれの工程がシームレスに流れるフローを構築できれば、刷版現場の完全無人化の実現も可能となるでしょう。

いきなり完全無人化は難しくても、工程ごとに自動化・効率化に取り組むことは可能です。まずはできるところから将来に向けて自動化の取り組みを始めてはいかがでしょうか。

記事公開:2019年7月

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