
■「作業ポイント制」でモチベーションアップ
安田 最近は人手不足の中で生産力を確保するために自動化を検討される印刷会社さんが増えていますが、帆風さんではどのような状況ですか?
城所部長 毎年、新入社員を採用していまして、竹橋プリンティングセンターだけでコンスタントに新入社員を採用しています。今年も元気でやる気のある男女の新入社員がオフセット、オンデマンド部門に配属されました。
安田 毎年、若い人材がコンスタントに入ってこられるのはいいですね。定着率も高いと伺っていますが、何かモチベーションを高めるような工夫はされていますか?
城所部長 いろいろな作業を経験させるようにはしています。部門間の異動はそれほど多くないのですが、部門の中で、さまざまな作業を経験してもらいます。また、「生産ポイント」という独自の制度を導入しています。たとえば、オフセット機で1日何台・何通し印刷するという目標を決め、100%達成できたら100ポイントがつく。80%だったら80ポイント。毎月それを評価し、表彰を行っています。
橋本 毎日、各自で何%達成したかという記録をつけるんですか?
城所部長 そうです。手書きの日報ではなく、基幹システム上でスタートとストップを記録するようになっており、そのデータでステータス管理・作業実績管理を行なっています。システム上でストップを押さないと、次の工程に仕事が回らないようになっているんです。その記録によって、自分がその日何件・何通しの作業をしたかがわかるわけです。その実績を考課にも反映させています。
橋本 それは面白いですね。評価に関しても、デジタル化されているんですね。
城所部長 そうですね、手書きでの報告は一切ないです。
■役職者全員、毎月1案ずつ。業務改善提案でミス・ロスを削減
安田 業務改善活動のような取り組みは実施されているのでしょうか。
城所部長 月に1回、分科会というのを実施しており、課長以上の役職者が全員出席します。そこでは、無人化・自動化・効率化についての改善提案を1人1案持って行き、社長にプレゼンするんです。そこで決裁をもらったり、アレンジのアドバイスをもらったりして、実際に現場に導入していきます。1回で決まるものもあれば、継続になるものもあります。社長を納得させるのに半年かかることも(笑)。
安田 1回に何件ぐらいの案が出るんですか。
城所部長 竹橋ですと、部長・次長・課長から10件以上、2時間の会議で、1人ずつ順番に説明します。
安田 それを毎月というのは、なかなか大変ですね(笑)。
城所部長 ですから、課長以上の者はつねにアンテナを張って、メーカーさんや協力会社さんに話を聞いたり、展示会に行って情報収集したりしています。
橋本 テーマとしては、どんなものが多いですか?
城所部長 やはり自動化ですね。
橋本 先ほど、断裁から出荷まで自動化されていると伺いましたが、それでもなお、毎月改善案が出るほど、自動化の課題があると。
城所部長 ありますね。たとえば品質管理や在庫管理などです。
橋本 品質管理の自動化というのは?
城所部長 印刷後の検品作業もその一つですし、出荷の際の仕分けで、絵柄を間違えてしまう、あるいは同じ絵柄で店舗が違う場合にそれを取り違えてしまう、といったミスを、いかに防止するかという課題もあります。たとえば、A4チラシを8面付けしたときに、付け合わせの都合上、8枚とも違う店舗になるということもあるわけです。それが100店舗ぐらいあると、すべて人のチェックに任せるのはリスクが高いので、自動化で事故防止できないかなと。
橋本 確かに、人が介在するとどうしてもミスのリスクは出てきますね。もう一つの課題、在庫管理というのは、用紙の在庫ですか?
城所部長 はい。1日100パレット以上の用紙や資材を入荷するんですが、現状は工場内を人が歩いて目視で確認しているので、これを自動化したいと考えています。発注数と使用量から理論在庫は把握できるんですが、実際の正確な在庫をどう管理するかが課題の一つになっています。メーカーさんにご協力いただき、いろいろなシステムで検証を行なっているところです。

多くの生産現場で課題になっている「工程間のプロセスの自動化」。その実現に向けたソリューションの開発に力を入れています。
――富士フイルムBI 橋本
■前工程の自動化で、デジタル印刷機を1人4台回せる環境へ
安田 デジタル印刷の工程に関しては、『Revoria Press』シリーズを複数台ご活用いただいていますが、先般ご導入いただいた『Revoria XMF PressReady』(以下 PressReady)によって、ジョブの振り分けや面付けなど、入稿から印刷までの自動化・省力化も進められていますね。
城所部長 デジタル印刷機を複数台運用する上では、PressReadyは非常に有効なソフトウェアだと感じています。まだ導入して数カ月なので、メリットを充分に活かすところまでは至っていないのですが、ステータス管理などを行なっている基幹システムに、PressReadyをバックグラウンドで連携させられないかと考えています。竹橋プリンティングセンターでデータを触るのは基本的にプリプレス部門だけで、デジタル機のオペレーターは、Revoriaの前ですべての作業を完結できる体制にしたいんです。PCでデータチェックして出力指示を出してから、Revoriaの前に移動して…ではなく、Revoriaの前にいて基幹システム上のデータを選ぶだけで出力できるという形。PressReadyがジョブ情報をCSVで受け取れるので、その情報をもとに用紙なども自動で選択されるという仕組みが可能になると思います。
橋本 PressReadyは、ワークフローをテンプレート化して登録しておけるので、ミスの防止にも寄与できるのではないかと思います。お客さまによっては、クライアント別にワークフローを登録されているケースもあります。
城所部長 スキルレス化がさらに進められそうですね。デジタル印刷の現場では、1人で4台ぐらいのデジタル機を回せるところまで持って行きたいです。
安田 現状でも、効率化・スキルレス化がかなり進んでいるのではないですか?
城所部長 通常のオペレーションに関しては、スキルレスな環境ができています。ただ、細かい調整やトラブル回避といった部分では、ある程度経験値が必要になるかなと。それはオフセットでも同じですが。
橋本 オフセットの場合、「この機械はあのベテラン機長でないと回せない」というように、属人化してしまっているという話をよく聞きますが、帆風さんではどうですか?
城所部長 幸い、それはないですね。オフセットのメンバーも若い者が多く、毎年、新入社員を入れて、技術を継承するようにしています。
橋本 それができるのは素晴らしいですね。ただ、若い方は、重労働を嫌がるのではないですか?
城所部長 それが、若い人でも「モノづくりがしたい」「印刷機を回したい」と応募してきてくれるんです。面接で、「手は汚れるし、紙は重いし、大変ですよ」という話をしても、「そういう作業が好きなので、ぜひやりたいです」と。女性でも、「スポーツをやっていて体力には自信があるので」と入ってきてくれます。
橋本 多くの印刷会社さんは、そうした重労働を若手がやりたがらない、あるいは若手にやらせたくない、という意識があるようですが、帆風さんの場合は逆なんですね。若い人材が応募してきてくれるのは、帆風さんのブランドイメージによるところもあるのかもしれませんね。





