株式会社城野印刷所様
色安定化と、色基準の策定により、刷り出し時間を大幅に短縮
オフセット印刷機とJet Press 750の共存運用で、より柔軟な小ロット対応が可能に

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株式会社城野印刷所様_事例紹介MV

GA Smile Navi採用事例


創業から100余年、地域と共に歩み時代と共に進化を続けてきた九州の老舗印刷会社・城野印刷所(本社:熊本県上益城郡益城町広崎1630-1/代表取締役社長:城野斉氏)は、2020年に導入した『Jet Press 750S』とオフセット印刷機との効率的な共存運用を実現すべく、FFGSの印刷品質管理ソリューション『GA Smile Navi』により、色基準の策定やオフセットの印刷品質を安定化させ、CMSの再構築を実施。小ロットジョブのJet Pressへの移行を進めるとともに、オフセット印刷機における刷り出し時間短縮、作業負荷軽減を図っている。これらの取り組みの経緯や具体的な効果などについて、代表取締役社長・城野斉氏、生産部兼生産管理部部長・今村真一氏に伺った。

■オフセットとJet Press印刷機のカラーマッチングが課題だった

 城野印刷所は、1916年(大正5年)にコロタイプ印刷専業社として創業して以来、本拠地である熊本に誇りと愛着を持って成長を続けてきた老舗印刷会社である。一般商業印刷とアルバム印刷を柱に、企画提案から映像制作まで幅広く手がけ、「自分たちを育ててくれた地域への恩返しをしたい」という思いから、地元の企業や学生を支援する独自のサービス・商品を展開している。
 コロタイプ時代から一貫して事業の柱になっている学校アルバム(卒業アルバム)では、熊本県内の学校はもちろん、北は東北、南は沖縄まで、ときには海外の日本人学校からの受注もあるという。多くの場合、学校との直取引ではなく、写真館からの受注となる。長年の実績を持ち、とくに品質の高さで定評のあるアルバム印刷事業だが、近年では少子化に伴い、商業印刷物と同様、小ロット化が急速に進んでいる。
「平均すると120~130部ぐらい。 100部以下も珍しくなく、中には卒業生が数人という学校もあります。ここまで小ロット化すると、オフセット印刷機では厳しい。そこで、高い品質を保ちながら小ロットに対応できる環境を整えるため、さまざまなデジタル印刷機を検討し、2020年にJet Press 750Sを導入しました。インラインのニスコーターも装備し、こちらをアルバムの主力機にしようと考えたのです」(城野社長)
 色再現性の高さを評価して導入したJet Press 750Sだが、新たな課題も出てきたという。
「実際にJet Press 750Sで印刷したものを見ると、当社のどのオフセット印刷機よりも発色が良い。そのため、オフセット印刷機で刷る大部数の卒業アルバムが見劣りしてしまうということになる。ロットの大小によって品質に差が出てしまうのはまずいので、Jet Press 750Sとオフセット印刷機の色を合わせる必要がありました。そこでオフセット印刷とデジタル印刷の双方の品質に詳しいFFGSさんにそのサポートをお願いしたわけです」(城野社長)
 もともとオフセット印刷のみでアルバムを印刷していたときにも、カラーマッチングには苦労していたという。
「刷版を焼いて印刷現場に渡す際に一応プルーフを付けますが、実際には、前年の同じ学校のアルバムを色見本にして、オフセット印刷機の機長が職人技で色を合わせ込んでいました。明確な色基準がなく、お客様(写真館・カメラマン)の好みに合わせてその都度、色を調整するというやり方です。また、Jet Pressとオフセット印刷機の仕上がりを揃えるのはなおさら難しい。この問題を解決するため、まずは色基準を策定してオフセット印刷機の色の安定化を図り、その上で2021年末からJet Pressとのマッチングに取り組み始めた、というのがこれまでの大きな流れです」

Jet Press 750S
現在、卒業アルバムの約7割をJet Press 750Sで印刷している

■色に対する意識が変わり、オペレーター成長のきっかけに

 スタートはオフセット印刷機の現状を把握するため、GA Smile Naviのメニューにある印刷診断から行った。
「ハイライト側にもシャドウ側にも再現しきれていない部分があり、中間調では、ドットゲインカーブの凹みが大きいことがわかりました。確かに、CTPのカーブは導入時からあまりシビアにチェックしていませんでしたし、印刷機の状態も、必ずしも充分ではなかったかもしれません。それらをしっかり見直す必要があるという診断結果が出たので、ローラー交換やブランケットのメンテナンスなど細かいところまで徹底的にチェックし、刷版カーブを変えながら印刷の色を見て、また改善をする。そうした作業を何度か繰り返しました」
 特に苦労したのは「UV印刷機のコンディションづくりだった」という。
「一般商業印刷物にもアルバムにも併用できるということで、Jet Press 750Sと色を合わせる印刷機はUV機1台に絞っていたのですが、当社が初めてUV印刷機を導入したのは2018年のこと。まだ試行錯誤で運用していたため、リピート物で印刷機が変わると色がなかなか合わないなど、油性印刷機とUV機のカラーマッチングも大きな課題になっていました。そんな中で、印刷診断と改善を繰り返し、オフセット印刷機の安定化を達成させました。その後、色基準づくり(GA Smile Naviのカラーコーディネート)を進めました。現場もかなり大変だったと思います」(今村部長)
 今回のCMSサポートを印刷機メーカーに依頼するという選択肢はなかったのだろうか。
「まったく考えませんでした。スタートがJet Press 750Sだったから、というのが大きいですね。UV印刷機にはメーカー独自の高度なカラーシミュレーターが搭載されていますが、色基準であるJapan Colorをより高精度に再現するには、それに頼って社内だけで取り組むのではなく、FFGSさんのように工程全体に精通しているメーカーに見ていただかないとだめだろうと。また、当社はワークフローシステムにXMFを、刷版も富士フイルム製を使用しているので、トータルで考えればFFGSさんにお願いするのがベストだろうと判断しました」(城野社長)
 CMSの見直しからおよそ1年が経過。Japan Color準拠の色基準が確立したことで印刷品質の目標が明確になり、UVオフセット印刷機とJet Press 750Sとのマッチングもほぼ完了した。B2輪転機、枚葉8色機および4色UV機、そして最新戦力のJet Press 750S、さらには各種製本加工設備も揃える“総合印刷会社としての対応力”が、一段と高まったのである。
 社内的な評価はどうなのか。現場での変化についてこう話す。
「意外だったのは、オペレーターの意識が変わったことです。UV機を導入する際、当社も初めてのことでしたので、あえて若い機長を抜擢したのですが、今回の一連の取り組みの中で、色の見方や色品質管理に対する考え方など学ぶことも多く、それが成長のきっかけになっていると感じます。機長だけではありません。印刷課の課長を中心に皆が“気づき”を共有することで現場全体の意識改革が進みました。これは、数字には表れませんが当社にとって大きな成果の一つです」(今村部長)

オフセット印刷現場
オフセット印刷現場では、刷り出し時間短縮および作業負荷軽減、損紙削減などの効果が出ている

■小ロットジョブをJet Pressへ積極的に移行できる環境が整った

 もちろん、GA Smile Naviによる効果は数字にもはっきりと表れている。
誰の目にも明らかなのが、色合わせの時間短縮効果です。刷り出し時間のデータを見ると、UV機を導入した2018年当時は23~24分かかっていたのが、最近は平均17分程度。これは1台目、つまりその日の最初のジョブの時間なので、一度色が決まれば2台目以降はもっと短時間で刷り出せるわけです。明確な色基準がない状態で機長が見本を見ながら慎重に色を合わせていたときに比べると、作業負荷自体もかなり軽減されました。
小ロットでジョブ数が増えるほど、稼働時間に対して準備時間が占める割合が大きくなるので、刷り出しが早まればその分、生産効率は確実にアップします。現場のオペレーターはその効果を肌で感じているのではないかと思います」(今村部長)
 短い期間に受注が集中し、しかも肌色などの再現性に気を使う品質重視の卒業アルバムの仕事では、部数や納期によって最適な印刷機を使い分けることが重要になってくる。「だからこそ、CMS再構築の意義は大きい」と城野社長は強調する。
「今後は卒業アルバムに限らず、たとえばOne to Oneのページ物など、表紙をJet Pressで、本文をオフセット印刷で刷るようなケースも増えてくると思います。そんなとき、オフセット印刷機とJet Pressの品質が揃っていて臨機応変に使い分けられる環境は、大きな強みになると考えています。いままで苦心してオフセット印刷機でこなしてきた小ロットのジョブを積極的にJet Pressへ移行できるわけで、これは本当に心強いです」
 今後は基準機となったUVの4色機と、油性の両面8色機とのカラーマッチングも図ることで、より柔軟な印刷機の運用を可能にし、オフセットジョブの機動力アップにつなげていく考えだ。さらに、同社は社内のCMS再構築にとどまらず、その先の展開も見据えている。
「これはまだアイデアレベルの話ですが、同業他社とのカラーマッチングが実現できればと考えています。コロナ禍になってから少なくなったとは言え、仕事が集中したときに、他の印刷会社さんにお願いするケースがしばしばあります。当社が外注することもあれば、受けることもある。そのときに、常に同じ仕上がりになるような環境が構築できれば、もっと色々なことができるのではないかと思います。パイの食い合いではなく、力を合わせて一緒にやりましょうと」
 城野社長はさらに続ける。
「当社だけでなく熊本県内の他社さんも、オペレーターの高齢化が進み、若い人がなかなか入ってこないという、人材確保の問題を抱えているはずです。そんな中、“目と腕で色を合わせる”という職人技をいつまで続けていられるか。そう考えると、必然的にスキルレスの方向に進んでいかざるを得ない。そしてスキルレス化と同時に、同業他社さんと協力関係を築いてお互いの弱いところを補完し合える新たなネットワークづくりも、今後ますます重要になってくるでしょう。今回の取り組みは、そうした構想に向けた第一歩と言えると思います」(城野社長)
 100年以上の歴史の中で培ってきた技術力によって、常に高い品質を追求し、クライアントの期待に応え続ける城野印刷所。より徹底された品質管理体制、より柔軟かつ効率的な生産環境を確立し、次の100年への新たなスタートを切った。


■お客様プロフィール
株式会社 城野印刷所
住所:熊本県 上益城郡益城町広崎1630-1
URL: https://www.jono.co.jp/

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