第一印刷株式会社様
設備更新に合わせたCMS再構築により、
意識面も含めた現場改革が実現
品質の安定化のみならず、人材の活性化にも確かな手応え

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GA+Smile+Navi事例_第一印刷様 MV

GA Smile Navi採用事例


第一印刷株式会社_外観愛媛県今治市に本社を置く第一印刷株式会社(本社:愛媛県今治市喜田村1-6-40、代表取締役社長:西原孝太郎氏)は、2020年夏のCTP・印刷設備更新を機にCMSの再構築を図るべく、FFGSの印刷品質管理ソリューション『GA Smile Navi』を採用し、色基準の策定、機器間のカラーマッチングなどを進めている。取り組みのスタートからまだ1年弱だが、すでに、品質の安定化、ヤレ紙の削減、さらには現場の意識改革など、さまざまな効果が表われているという。GA Smile Navi採用の経緯や現時点での具体的な効果などについて、西原孝太郎社長、制作部・上馬場浩部長、製造部・村上嘉一部長に伺った。


CTPと主力印刷機を同時に一新

第一印刷は、1949年の創業以来70年以上にわたり、商業印刷を軸に、地域に密着した印刷事業を展開している。「紙媒体を通じてお客さまの価値を最大化する」という考えのもと、DMや会社案内、カタログ、チラシ、パッケージなど、販売促進関係の印刷物を多く手がけるほか、近年では、強みの一つである企画・デザイン力を活かし、キャラクター開発や、ペーパークラフトをはじめとする各種ノベルティ開発にも力を入れている。同社が生み出したキャラクターとしては、「ゆるキャラグランプリ2012」でグランプリを獲得した今治市のマスコットキャラクター『バリィさん』が有名である。また、ペーパークラフトは、3Dソフトを駆使して制作する“紙製の立体販促物”で、大手航空会社の機内玩具などにも採用されている。
 現在同社は、地元・愛媛県内はもとより、県外からも広く受注を集めているが、販促用途の印刷物が多いだけあって、商品の色味などに対するクライアントの品質要求レベルは高い。そのため、早くから独自にカラーマネージメントシステム(CMS)を構築し、運用してきた。そんな同社が今回、GA Smile Naviを採用した背景には、「大がかりな設備更新を機にCMSを一から見直し、品質の安定化、生産性の向上を図る」という狙いがあった。

販売促進関係の印刷物


「主力の印刷機を油性機からLED-UV機に更新し、同時に、CTPプレートも有処理から無処理へと切り替えました。特殊紙なども含めたさまざまな素材への安定した印刷と、社会的要請である環境対応を両立させるには、『UV印刷+無処理CTP』の選択がベストだと判断したのです。ただ、プレートもインキも一気に変わるため、CMSも一から構築し直さなければなりません。UV機も無処理CTPも初めての導入でしたので、知見豊富なFFGSさんにサポートをお願いしたわけです」(西原社長)
CMSの見直しの必要性は、印刷現場でも、日々の運用の中で感じていたという。
「定期的に色のチェックを行なっていても、調整を繰り返しながら印刷機を回しているうちに、どうしても色が変動してしまいます。その結果、プルーフや本機校正と本刷りの色がなかなか合わず、本刷りの段階でオペレーターが力技で合わせ込むというケースが多くなっていました。このやり方では、刷り出しに時間がかかりますし、オペレーターの負荷も大きく、損紙も増えてしまう。ですから、標準濃度で刷れば色がきちんと合う、という理想的な環境を、あらためて整えたいと考えていたのです」(村上部長)
また、同社の場合、色にシビアなリピートの仕事も多いため、つねに「高い繰り返し再現性」が求められるという事情もある。
「地元の名産品である今治タオルの販促物も多く受注しているのですが、タオルの風合いの再現などは難しいものの一つです。同じ白でも、微妙に赤く転んでしまったり、青味が強くなってしまったり。色基準に基づいた数値管理を行なっていないと、確実に同じ色味を再現することは困難です。また、大手航空会社様の機内玩具などは、数十万ロットを年間数回に分けて製造するというケースもあり、やはり高い安定性が求められます」(上馬場部長)
「リピートの際には、前回の印刷物の色に合わせるよう要望されることが少なくありません。しかし、とくに上質紙やマット系の用紙などは経年劣化によって色が変わっていきますから、リピートのたびに前版に合わせていると、初版の色から離れていってしまいます。しかし、きちんと基準濃度を決めておけば、前回の印刷物の色が変化していても数値で正しい色を出すことができる。その意味でも、新設備に合わせてCMSを見直すことは重要な課題でした」(村上部長)


Japan Colorに準じた新たな色基準を策定

この設備更新では、主力印刷機が油性機からUV機へと切り替わったが、それに伴う品質面の懸念点の一つが、ドライダウンの有無による色再現の違いだった。
「とくに上質系の紙の場合、油性インキでは、印刷後にドライダウンによって色が変化しますが、UVインキの場合はそれがほとんどないため、同じ条件で印刷すると最終的な仕上がりに差が出てしまいます。当社では上質系の特殊紙にカラー印刷する仕事も多いので、この違いを踏まえてどのようにUV機にシフトするかが課題でした」(村上部長)
 色基準の再設定にあたっては、最新LED-UV機の品質性能を最大限に活かすため、「新規ジョブにおける色の標準化」に主眼を置き、リピートものに関してはデータレベルでマッチングを図ることとした。新たな色基準は、Japan Colorをベースとしながら、現場で無理なく維持できる濃度に設定。また、CTPカーブについても、有処理から無処理への切り替えに伴う網点再現の変化を考慮し、微調整を行なった。
「制作側ではそれほど大幅な調整は行ないませんでしたが、印刷機に関しては、ブランケットやインキなどの資材の選定から慎重に進めていく必要がありました。また、テスト印刷で狙った色がなかなか出ないというときに、原因が版にあるのか、水の絞り方なのか、その判断が難しく苦労した部分はありましたね。無処理CTPとUV印刷それぞれの知識がないと、求める品質がなかなか出せないということを実感しました」(上馬場部長)
 複数の設備をまとめて一新したこともあり、問題の原因究明が難しい局面もあったようだ。そんな状況を振り返り、西原社長はFFGSのサポートをこう評価する。
網点の変化、濃度の変化が起きた際、水上がりやニップの調整などを分析したうえで、何が原因で、どのような調整が必要なのか、的確にアドバイスをいただけたのは非常にありがたかったですね。そのおかげで、自分たちでも原因の切り分けや対処が迅速に行なえるようになり、日常の作業でも役立っています。また、メーカーさんとのやり取りに関しても、FFGSさんが間に入って柔軟に動いてくださったので、スムーズに進めることができました

新たな色基準のもとで数値管理を徹底することにより、新設備の性能を最大限に引き出している。

新たな色基準のもとで数値管理を徹底することにより、新設備の性能を最大限に引き出している。


損紙が3~4割減少。メンテナンスに対する姿勢も変わった

今回のCMS再構築の取り組みで、印刷現場にはさまざまな効果が表れているが、その一つが、刷り出しが早くなったことによるヤレ紙の削減だ。
通常、50枚程度のヤレ通しを何回か繰り返して濃度を調整していくのですが、以前に比べると、通す回数が1ジョブあたり2~3回減っています。これは、オペレーターの習熟度が上がってきているということもありますが、新たな色基準を、オペレーターが出しやすい濃度で設定したことが効いていると思います」(村上部長)
 さらに、この点にはUV機ならではのメリットも寄与しているという。
「UV機ではインキが瞬間的に硬化するので、1回通したヤレ紙の裏面をすぐに使うことができます。これらの相乗効果で、トータルの損紙量は3~4割減っているのではないでしょうか」(村上部長)
ヤレ通し回数の削減により、印刷前準備時間も短縮し、生産効率が向上。1日にこなせるジョブ量も確実に増加している。西原社長は「小ロット化に伴い、1ジョブに占める準備時間の割合が多くなる傾向にあるので、このメリットは大きい」と語る。
 さらに、村上部長によると、色の標準化が進み、準備時間の削減が図れたことで、意外な副次的効果も生まれているという。
「これまで、印刷オペレーターは、“色を見る”作業に多くの時間を費やしてきましたが、その労力を他の作業に振り向けることができるようになりました。たとえばページものであれば、面付けが間違っていないかを確認するなど、色以外の品質チェックに時間を割けるようになり、これも生産効率アップにつながっています」
さらに、印刷現場では「オペレーターの考え方も大きく変化した」と村上部長は強調する。
「新しい印刷機では、当然、あらゆる性能が向上しているわけですが、すべての設定を適切な状態に維持できてこそ、簡単に速くいいものができる。そのことを、現場が再認識できたと感じています。最適なコンディションをきちんと維持できていれば、刷り出しも早く、損紙も少なくなるということを、オペレーター自身が実感し、『メンテナンスの頻度を上げることで稼働効率を高める』という考え方になってきました」(村上部長)
 西原社長も「メーカーさんのサービス任せではなく、自分たちで整備しようという意識が以前よりも強くなった」と付け加える。
「結果として、自分で点検・整備できる部分が増え、オペレーターの知識の幅も広がってきていると思います」(西原社長)
 また、西原社長は、CMS構築による刷版・印刷工程の「作業の標準化」が、オペレーターの多能工化推進にも寄与すると期待を込める。
「実は以前から、設備更新と同時に、人材の活性化の必要性も感じていました。従来は、一つの機械を長年担当しているベテランのオペレーターがいて、品質はその人の腕に依存している状況でした。しかし、本人が何らかの事情で休んでしまったりすると、納期に間に合わなくなるなど、弊害が出てくる。そのため、4~5年前から、若手社員を中心に業務のローテーションを実施し、いろいろな工程で成功体験を積ませるようにしています。この数年間かけて取り組んできた社内風土の変革が、今回のCMSの再構築を機に、一気に推し進められそうです」(西原社長)
実際に現場では、自分の担当部分だけでなく、前後の工程まで配慮しながら作業できるオペレーターが増えてきたと感じています。その結果、仕事の流れが明らかにスムーズになりましたね」(村上部長)


■色校正の精度も上がり、クライアントから評価の言葉も

 CTP・印刷設備の更新にCMSの再構築、そして現場の意識変化なども相まって、品質の安定性は確実に向上している。その成果を象徴するエピソードを、西原社長が語ってくれた。
「県外の大手企業様からの仕事で、担当の方が立ち合いに来られたとき、『色校正と本刷りの色がここまでぴったり合う印刷会社さんは珍しい』と、お褒めの言葉をいただいきました。『普段、色のやり取りを4~5回繰り返すことが多いが、1回でOKを出すのは初めてだ』と。今回の取り組みの効果をあらためて実感でき、とても嬉しかったですね」
 品質の安定化が、クライアントからの評価に結び付き、それが現場のモチベーションアップ、さらなる品質向上へとつながる好循環が生まれている。設備と製品(印刷物)、人を含めた現場改革が実現しているのだ。
 もちろん、これで取り組みが終わったわけではない。今後は、現在実施中の「印刷機とプルーフ、POD機とのカラーマッチング」を確立させ、すべての出力機をよりシームレスに運用できる環境を整えていく。
「現状、多くの仕事で本機校正を出しているのですが、これをプルーフに置き換えることができれば、色校正のコストを大幅に削減できますし、印刷機の稼働率も高められ、生産性もさらに向上すると考えています。また、最近はPODの需要も高まっており、オフセット印刷機とPOD機の柔軟な連携運用ができるようになれば、当社にとって大きなメリットになると思います」(村上部長)
 さらに、今回構築したCMSを適切に維持していくために、GA Smile Naviのメニューの一つである定期診断を実施するとともに、「人」の変革にも引き続き取り組んでいく考えだ。
「良い品質を安定して生み出せる状態を保ち続けるためには、設備の状態の定期的なチェックはもちろんですが、制作と製造、営業が、部門を超えてしっかりとコミュニケーションをとることが重要です。基本的なことではありますが、社内コミュニケーションがもっと円滑にできるようになれば、ムダやムラがさらに削減でき、効率化が図れると考えています。すでにその手応えは感じています」(西原社長)

◆GA Smile Navi
品質の「見える化」から維持管理まで、印刷現場の課題解決をきめ細かくサポートするソリューション。品質を見える化する「スタートチェック」、定期的な印刷診断で高い印刷品質を維持する「プリントケア」、CMSの構築により色品質を向上させる「カラーコーディネート」、課題を解決して印刷品質を高める「プリントドック」の4つのメニューをラインアップし、現場の課題に合わせて最適な組み合わせで提供する。


■お客様プロフィール
第一印刷株式会社
住所: 愛媛県今治市喜田村1丁目6番40号
URL: https://www.dp-g.jp/profile

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