経営セミナー講師に聞く
「我が社の成長戦略ストーリー」 Vol.1

「必勝M&A戦略による服部プロセス成長の方程式」
服部プロセス株式会社 代表取締役 服部晴明氏
第1回:服部プロセスグループの現状と変革の軌跡

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製版の知識を活かし、競争力のあるカラー印刷方法を確立

中林 「業態変革の時代(1993年から2003年頃)」に初めて印刷機を導入されることになったわけですが、新規に参入した印刷の市場で、どのように勝負されたのでしょうか。

服部社長 カラー印刷で自分たちの強みを活かそうと考えました。それは、売上や利益を得るのには、単色の仕事よりも4色の印刷物の方が効率が良いということに気づいたからです。ただ、前工程でのカラー写真の画像処理や制作・製版の業務は時間がかかるので、作業スピードを上げるために、ソフトウェアやネットワークなどの活用を模索しました。
 その最初の成果が、家電量販店のカラーのチラシです。当時、大手印刷会社も含めて、どこの印刷会社もカラーのチラシをDTPではやっていなかった。それを、まだ出始めだったMacを使ってフルデジタルでの制作を実現するフローを確立したのです。これによって、大幅なコストダウンを実現し、関西の主要家電量販店のチラシを軒並み受注することができました。

DTP&サーバー積極活用で新展開

 もう一つ、印刷事業で強みになったのは、製版の知見を活かして「濃度基準印刷」という印刷方法を確立したことです。私どもは製版業時代から色校正の仕事を手がけていたので、濃度を合わせれば効率よく色を合わせることができるということを経験的に知っていました。この知識を活かすことで、従来のように、「色校正に合わせて印刷する」よりも効率的にカラー印刷ができるのではないかと考え、4色機を導入して、すぐにこの印刷方法を確立しました。

中林 色基準を元にしたカラーマネジメントの仕組みを、既にこの時に確立されたのですね。濃度基準印刷によって、具体的にどれほどのメリットが得られるのでしょうか。

服部社長 濃度基準印刷では、印刷機オペレータは4色の濃度が設定値に来るように調整するだけなので、従来15分ほどかかっていた色合わせが、3分でできるようになりました。つまり、刷り出し時間が60%短縮できたわけです。ヤレ紙も、従来は400枚(100枚×4セット)必要だったのが100枚(50枚×2セット)で済むようになり、ヤレ紙も75%削減できました。もちろん、刷り出しの色が校正紙の色と合っているかどうかは確認しますが、校正用のプリンターなどのカラーマッチングは取っていますので、濃度を合わせるだけで、早いタイミングでOKシートが出せるようになりました。

印刷機オペレーターの導入の前後の違い

中林 小ロットの仕事が増えれば増えるほど、メリットも大きくなりますね。

服部社長 そうです。従来1時間~2時間かかっていた1,000~2,000部の仕事が、濃度基準印刷によって、わずか30分で刷了できるようになりました。その分、台数、版数を多くこなせるようにもなりました。たとえば、両面フルカラーの仕事を中心に26台(版数190版)、1日でこなすとします。仮に、刷版料金を1版あたり2,000円、印刷料金を3,500円とすると、印刷機1台で1日あたりの売上は(2,000円+3,500円)×190版=1,045,000円になります。金額ベースで見ると、輪転機を回すよりも効率がいい。ですから、版数の多い仕事をどんどんやっていこう、という考え方になっていきました。
 同時に、カラー印刷の仕事の効率をさらに高めるため、製版業時代に培った画像処理とカラーマネージメント技術をさらに磨き上げました。たとえば、料理の写真を美味しく見せるために、印刷機上でインキの濃度を変えるのではなく、元の画像をレタッチして、版そのものを調整してイメージ通りの色を出す、といった技術を高めていったのです。

印刷台数両面26台で版数190版分を10時間40分で版了しました

中林 制作業務の標準化・効率化にも力を入れていらっしゃいますよね。

服部社長 はい。制作部門では、1人の制作スタッフが自分のMacですべての作業を完了させるというのが一般的だと思います。しかし私どもは、製版会社時代からチラシの制作を手がけていたこともあって、ずっとチーム制で作業していました。例えば、1人でB2のチラシを制作するとかなり時間がかかりますが、それを4分割してB4サイズにして、4名で同時に進行すれば、ほぼ4分の1の時間で完成させることができます。これをDTPでも継承しています。各チームがそれぞれファイルサーバーを立てて、全オペレーターがそこに繋がった状態で作業を進めるというやり方です。チームごとにメンバー全員の制作データが一元管理できますし、修正が入った場合は古いデータを新しいデータで上書きするようにすれば、つねに最新のデータを共有でき、効率的に作業できるわけです。
 また、各チームには、ベテランを最低1人配置するようにしました。指導できるベテランが1人いることで、経験の少ないオペレーターもチームに参加して早く仕事を覚えることができます。また、チーム内で作業効率を高める方法を教え合うことで、チーム全体の生産性も向上していきました。この制作体制は、スピード面でも人材育成の面でも非常に大きな効果があったと思います。

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