中日新聞社 浜松都田工場様
完全無処理CTP専用設計の工場を業界に先駆けて実現
有処理同等の高品質・高耐刷性、「自現機・廃液関連設備不要」の効果

記事をシェアする

新聞用完全無処理CTPプレート「SUPERIA ZN」導入事例

(左から) 中日オフセット印刷 取締役 印刷部長 毛利忠司氏、中日新聞社 技術局 印刷技術部 長谷川勇気氏、 中日オフセット印刷 印刷部 課長 佐藤 力男氏、中日オフセット印刷 印刷部 池谷 潤一氏


 富士フイルムの新聞用完全無処理サーマルCTPプレート『SUPERIA ZN』の導入が、全国の新聞社に広がっている。中日新聞社では、2015年から辻町工場(愛知県名古屋市)でいち早く本格採用し、中日新聞サンデー版を皮切りに運用。その実績を踏まえ、2016年12月に立ち上げた新拠点・浜松都田工場(静岡県浜松市)では、設計段階から無処理CTP専用の構造とし、CTPプレートを『SUPERIA ZN』に統一している。完全無処理化のメリットや、プレートに対する評価などについて、中日新聞社 技術局 印刷技術部・長谷川勇気氏と、工場運営会社である中日オフセット印刷株式会社の取締役 印刷部長・毛利忠司氏、印刷部 課長・佐藤力男氏、印刷部・池谷潤一氏に伺った。

■廃液ゼロ化により工場立ち上げがスムーズに

約2万7,000平方メートルの敷地に建てられた浜松都田工場

『SUPERIA ZN』は、富士フイルムが業界で初めて商品化に成功した新聞印刷用の完全無処理CTPプレートである。商業印刷用の『SUPERIA ZP』をベースに、新開発の独自技術により、新聞印刷の過酷な条件に対応する高耐刷性・耐汚れ性を実現している。
中日新聞社では、2014年秋から辻町工場において『SUPERIA ZN』のテスト運用を開始。2015年にかけて段階的に本刷りへの導入を進め、優れた耐刷性や有処理プレートと遜色のない印刷品質や取り扱い性を確認する中で、新工場での全面採用への手応えをつかんだという。
「辻町工場での先行運用で、『SUPERIA ZN』は、サンデー版60万部・15万インプレッションを有処理プレートと同様に安定してこなしていました。ここで耐刷性や品質の高さが実証できたことは、無処理プレート採用拡大への大きな自信になりましたね。さらに、生産効率や作業性などの面でもメリットが確認できていましたから、浜松都田工場においても安心して導入することができたのです」(長谷川氏)

 浜松都田工場は、静岡県内向けの中日新聞および中日スポーツ、愛知県東三河地域向けの中日新聞朝刊の印刷を行なう、同社の最新拠点。40ページ24個面カラー印刷が可能な4×1型輪転機を2セット、完全無処理用CTPを2ライン備え、全工程にわたり省力化・省人化・環境配慮を徹底追求している。無処理CTPを前提とした設計で、製版室の廃液配管設備や集中廃液タンク室は当初から設けていない。
「工場からの排出物を徹底的に減らすには、現像廃液・ガム廃液、自動現像機の洗浄廃液などがすべてゼロになる完全無処理CTPの導入が欠かせませんでした。ですから、『SUPERIA ZN』があったからこそ、この工場が実現したとも言えます」(長谷川氏)
 廃液のゼロ化は、工場の運営面はもちろんだが、立ち上げの際にも大きなメリットをもたらしたという。
「従来の工場では必須であった廃液配管設備や集中タンク室のスペースが不要になったことで、製版室周りをよりシンプルな構造にすることができました。加えて、廃液が発生しないため「特定施設」の対象外となり、水質汚濁防止法や土壌汚染対策法などに関わる自治体との折衝も必要なく、立ち上げの手続きが省力化できたことも大きなメリットです」(長谷川氏)


■印圧高い4×1輪転機でも期待通りの耐刷性を発揮

輪転機へのプレート装着作業。刷版自動着脱装置により効率的に行なえる。

 浜松都田工場は、同社にとって初導入の設備・資材を多く採用しており、CTPの完全無処理化のほかにも、4×1型輪転機、そして高濃度インキの使用も初めての試みである。こうした中で、『SUPERIA ZN』は期待通りの優れた耐刷性・安定性を発揮しているという。毛利取締役はこう評価する 。
「4×1輪転機は、版胴が1ページ周長のため、仮に15万部印刷する場合にはインプレッション数も15万。さらに、印刷機の特性上、印圧も高くなるため、同じ部数を刷る場合、4×2型に比べ、プレートにはより高い耐刷性が要求されます。このような条件の中でも、『SUPERIA ZN』はまったく問題なく運用できています」

完全無処理化された製版室。工場内は白を基調としたクリーンなイメージで統一されている。

 また、現像処理工程がなくなったことなどにより、現場の作業性も大きく向上している。印刷部の佐藤課長は、「とくに自動現像機のメンテナンス、現像液・廃液の管理が不要になったことは非常にありがたい」と語る。
「当社の場合、自現機の清掃・液交換は印刷部門の担当者が行ない、2人がかりで約4時間かかります。液交換の作業は、印刷品質に影響を及ぼさないよう慎重に行なわなければならず、周囲への汚れの付着などにも注意しなければいけません。私がこれまで所属していた工場では、有処理CTPが2ラインあり、印刷機のオペレーションと並行して自現機のメンテナンス作業を行なっていました。新工場ではそれが一切不要になったので、作業負荷が大幅に軽減され、その分、印刷機メンテナンスなどの作業に時間を使えるようになりました」(佐藤課長)

さらに、『SUPERIA ZN』の耐キズ性の高さも、現場にとって大きなメリットになっているという。
「浜松都田工場では、印刷機の前までプレートを自動搬送する装置があるため、運搬時にプレートにキズをつける心配はほとんどないのですが、プレート自体のキズへの耐性が強いことによる、安心感は違いますね」(池谷氏)


■新聞印刷工場の新たなモデルケース目指す

見学者向け展示スペースでは、新聞印刷の仕組みなどをわかりやすく紹介。

同工場は、静岡・三河地域向けの新聞印刷を担う最新拠点として、環境保全や効率化の追求はもちろん、新聞の安定発行のための災害対策にも万全を期している。地上3階建ての工場棟は免震構造を採用。さらには、巻き取り紙を600本備蓄できる大型用紙倉庫、新聞発行を1週間継続できる自家発電機、災害時のネットワークインフラの確保を目的としたヘリポートなどを完備している。また、こうした先進的な設備による新聞発行の流れを、地域住民などにも広く紹介するため、工場見学設備も充実。小中学校からの社会科見学などを積極的に受け入れている。

 そんな同工場の今後の運営について、毛利取締役は次のように語った。
「浜松都田工場は、業界に先駆けてCTPの完全無処理化を実現することで、一歩進んだ環境対応を図ることができました。同時に、毎日途切れることなく決められた時間に、決められた部数を確実に送り出すという、新聞印刷の最大の使命を果たしていかなければなりません。そのために、『SUPERIA ZN』のような資材、印刷機も含めた最新設備のメリットを最大限に活かし、次世代の新聞印刷工場のモデルケースとなれるよう運営していきたいと考えています」

※掲載内容は、取材当時のものであり、一部変更が生じている場合がございます。ご了承ください。


■関連リンク
新聞用完全無処理CTPプレート「SUPERIA ZN-Ⅱ」の詳細はこちら

記事をシェアする

お客様の事例一覧へ戻る