XMF Remote導入事例
南九州を中心に事業を展開する新生社ホールディングス株式会社(グループ本社:鹿児島県鹿児島市七ツ島 1-1-1、代表取締役:岡崎洋人氏)は、富士フイルムのWebポータルシステム『XMF Remote』を導入、グループ内の制作部門の作業効率アップ・生産性向上を実現するとともに、コロナ禍におけるクライアントの業務負荷削減・働き方改革にも貢献し、営業ツールとして大きな武器となっている。具体的な運用方法や活用成果などについて、新生社ホールディングス株式会社 代表取締役・岡崎洋人氏、同社技術部チーフ・橋本幸輔氏、株式会社鹿児島新生社印刷 営業部課長・二階浩一氏、同社制作部 セールスプロモーター クリエイティブディレクター・萩原博文氏に伺った。
■現場の声が決め手となり導入を決定
新生社グループは鹿児島県鹿屋市で1938年に創業し67年に法人化。南九州を中心に23カ所の事業所を持ち、グループ全体での売上は約40億円、従業員総数は275名である。23拠点のうち支店は6拠点にとどまり、17拠点は(株)鹿児島新生社印刷、(株)宮崎新生社印刷、(株)福岡新生社印刷といった法人となっている。これは、エリアごとに会社を立ち上げて事業を行ない、その地域に貢献するという創業以来のポリシーに基づいた出店方針である。実際、グループ各社は地域のニーズに合わせたサービスを提供しており、所有する設備も事業所ごとに異なっている。
グループ全体としては、様々な商品をワンストップサービスで提供することが特徴の一つになっている。印刷物だけでなく、広告配信・折込手配、のぼりや看板、デジタルコンテンツからノベルティに至るまで自社で製作し、店舗運営や、販売促進などあらゆるビジネスシーンに関わる、豊富なバリエーションの商材をワンストップで提供している。
コロナ禍で既存事業の売上が一部減少する中、当初のスタンスに立ち返り、「お客さまが真に求めるもの」を社員一丸で考え、オリジナルの新商品の開発にも積極的に取り組んでいる。南九州という土地柄、台風に見舞われることも多いことから、避難所でのプライバシーを守るパーティションや、コロナ禍でニーズが高まっている飛沫防止パネルを段ボールで制作し、簡便に利用できる製品として商品化し、提供している。この商品は、十数年前からPOP・サイン事業で蓄積してきた段ボール製品の設計・加工技術を活かして開発したもので、コロナ禍で売上を伸ばしている。
段ボール製のパーティションや飛沫防止パネルなどを独自に開発し売上を伸ばしている
奄美大島や種子島、屋久島などの離島を含む、南九州全域という広域での多店舗展開を行なっている新生社グループが、XMF Remoteの運用で目指した第一の目的は「グループ内でファイルをやり取りする方法を統一すること」にあった。それまでは、制作データ共有のためのワークフローサーバー、ファイル送信サービス、メールでのファイル添付など、さまざまな方法を併用しながらファイルをやり取りしていた。その結果生じていた、「制作作業におけるデータのハンドリングの煩雑さ」や「データの取り違え等によるミスの発生」などを解消することが主たる狙いだった。
導入にあたっては、XMF Remoteだけでなく、様々なメーカーのオンライン校正システムを約5年間に亘って比較検討し、それまで使用してきたワークフローRIPとの親和性を考慮して、同じメーカーの機種を導入する方向となっていたが、最終的には、既に多くの印刷会社が導入して、社内での活用実績と顧客展開の成功事例があり、機能面や操作性を検証した制作現場からも「非常に使い勝手が良い」と評価されたXMF Remoteに機種決定をし、センターRIPをXMFに全面的に移行する決断をした上で、XMF Remoteを導入することになった。グループ全体23事業所という多くの拠点でのスムーズな立ち上げ・運用を実現するためには、「使いやすさ」は最も重要なポイントだった。また、検討段階で4社のXMF Remote導入企業を見学したことも、選定を後押しした。
「とくに、服部プロセスさんやアサプリさんで、XMF Remoteを毎日使われている現場の方々から伺った率直な意見、検版機能などに対する評価の声が決め手になりました。やはり実際に使っていらっしゃる方のお話が一番参考になりましたね」(橋本チーフ)
■大規模拠点から段階的に運用を開始
XMF Remoteの運用は、グループの全拠点の内、比較的規模の大きい4拠点からスタートした。まず、「ファイル転送機能」を活用し、データの受け渡し業務をXMF Remoteに完全に統一した。その上で、制作スタッフが各自の業務の中で、制作データの登録を進めながら、事業所ごとに意見を出し合い徐々に定着を図っていった。事業所ごとにXMF Remoteを操作できる環境を順次用意していき、トレーニングの意味も含めて、段階的に各事業所へと運用を拡大し、制作スタッフに使ってもらうことで、グループ内での運用定着を推進した。
具体的には、各拠点での立ち上げをスムーズに進めるため、橋本チーフと萩原氏を中心に、オペレーター教育の実施や、操作マニュアルを独自に作成して、全事業所に展開するなどして、運用の拡大に取り組んでいる。マニュアルは随時アップデートしており、社内向けだけでなく、クライアント向けにも用意している。
運用開始後、制作スタッフからは「入稿された原稿をすぐに確認でき、校正作業が非常に効率的に行なえる」と、メリットを実感する声が多く聞かれたという。また、校正の進捗状況を関係者間で共有できるようになったことで、コミュニケーションエラーが原因のミスも減った。検版機能を使うことで修正作業の精度を高められたことも、ミスやクレームの減少につながっているという。
現在、XMF Remoteを活用している拠点数は9拠点に増えている。また、グループ全体で制作スタッフは約80名在籍しているが、そのうち50名ほどがXMF Remoteを日常的に使っており、トレーニングを進めながら活用の幅を広げている。現時点では月間約200件のジョブがXMF Remoteで進行しており、データ受け渡しや校正の効率化と同時に、出力の自動化も進めている。とくに、最初にXMF Remoteの運用に取り組んだ4拠点では、鹿児島新生社印刷に設置されているワークフローシステム『XMF』を遠隔で操作し、各拠点のCTPから出力することが可能になっている。
デジタル検版機能を活用することで、修正作業の精度を高めている
■コロナ禍におけるクライアントの働き方改革にも貢献
営業部門においてもXMF Remoteの活用は着実に定着している。すでに運用が進んでいる9拠点では、クライアントとの校正業務の進捗管理で日常的に活用しているほか、営業活動の中で校正のオンライン化を積極的に提案し、採用先を着々と増やしている。とくに、片道1時間以上かかるような比較的遠方のクライアントへの訪問回数を減らすことで、営業効率の向上を図っている。
現在、XMF Remoteを活用しているクライアントの社数はグループ全体で約70社となっており、二階課長によると、新規顧客の獲得にもXMF Remoteが寄与しているという。
「新規のお客さまには、必ずXMF Remoteによるオンライン校正を提案していますが、多くの方が興味を示してくださり、良い手応えが得られます。XMF Remoteは営業面でも非常に有効なツールになっていると感じています」(二階課長)
コロナ禍において、世の中全体で非対面での業務が推奨される中、オンラインで制作進行できるXMF Remoteの重要性が高まっている。同社では新型コロナウイルス感染拡大以降、クライアントからオンライン校正についての相談を受けることが増えているという。
「当社はコロナ以前からXMF Remoteを活用できていたため、非対面型の業務やリモートワークを希望されるお客さまにも、営業が自信を持って提案できています。XMF Remoteは営業ツールとしても非常に大きな武器になっていると思います」(岡崎社長)
実際にXMF Remoteの提案で獲得した新規案件としては、今年4月から始まった官公庁の広報誌の仕事が挙げられる。デザインコンペであったが、鹿児島新生社印刷ではデザイン案と合わせてXMF Remoteの活用による業務効率化も提案。コンペのタイミングで異動してきた若手担当者をはじめ、クライアントからこの提案が高く評価され、年間契約を獲得することができた。
官公庁の広報誌では、校了までに担当者・主管・係長・課長・部長・室長など、多くの関係者による、何段階もの承認が必要になるケースが多い。以前は、複数のキーマンの内の一人の承認をもらうためだけに営業が訪問することもあったというが、校正をオンライン化したことで、承認のプロセスが大幅に効率化できた。
さらに、在宅勤務でも修正の指示や確認が行なえ、自身の広報誌制作業務を「見える化」して周囲と共有することで、負担の軽減につながるといったメリットもあり、XMF Remoteは、クライアント側の担当者の働き方改革にも貢献している。
「クライアント側の担当者も、コロナ禍における働き方改革についてさまざまな角度から検討されており、XMF Remoteによるオンライン校正を採用して本当に良かったというお言葉をいただいています」(二階課長)
XMFをセンターRIPとして運用することで、面付け・出力作業の効率化も実現している
■グループ全体に活用を広げ、会社の成長につなげたい
今後、同社では、XMF Remoteの活用を現在の9拠点からグループ全体へと拡大していく考えだ。その目的の一つは、グループ内での情報共有を進めること。たとえば、ある拠点での成功事例をグループ内で共有する際、これまでは実際の印刷物やレポートを見るしかなかったが、XMF Remoteを使うことで、製造工程の履歴も含む印刷実データをもとに成功事例を横展開することが可能になる。
「XMF Remoteは複数のサイズの印刷物を1つのジョブで表示できるので、発注者がデザインやブランドを統一したい場合、複数アイテムを一度に校正できるメリットも大きいですね。たとえば、あるイベント関連のリーフレットを中心にした制作物全体を受注した場合、そのイベントで使用する『店内ポスター』『リビング広告』『LINEバナー』『ホームページバナー』『ご成約引換券』など様々なコンテンツの制作が同時に進行しますが、このように用途や体裁も異なる様々な制作データ一式を、XMFの1つのジョブ内で確認できるため、お客さまから、『全体像を把握しやすく、イメージの統一が図りやすい』と評価されています」(萩原氏)
こうしたメリットは、同社の強みの一つである「ワンストップサービス」の強化にもつながっている。
また、ミスを減らし作業精度をさらに高めることも目指している。岡崎社長は、「現在生じているミスが半分になるだけでも、損金や時間の削減による大幅な利益アップにつながる」と語る。また、営業本来の目的である受注獲得に集中できる時間を増やすため、営業活動のさらなる効率化にも期待している。
「こうした目的を達成するために、XMF Remoteはなくてはならない存在だと認識しています。このシステムが、今後の当社の飛躍的な成長に貢献してくれることを期待しています」(岡崎社長)
■お客様プロフィール
新生社ホールディングス株式会社
住所:鹿児島県鹿児島市七ツ島1-1-1
URL:https://www.shinsei-p.co.jp/
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