ジョブプランニング&面付けソフトウェア tilia phoenix導入事例
同人誌印刷や各種グッズ製作を手がける大阪印刷株式会社(本社:大阪府大阪市此花区常吉1-1-60、代表:根田貴裕氏)は、工程自動化の一環としてジョブプランニング・面付けソフトウェア『tilia phoenix』を導入し、人手に頼っていたアクリルグッズなどのグルーピング・面付け作業の大幅な効率化を実現。強みの一つである小ロット・多品種への対応力に一段と磨きをかけている。導入の経緯や具体的な効果などについて、同社の緒方人志氏、長江優花氏に伺った。
同人誌・関連グッズの小ロットニーズに応える
大阪印刷は、漫画やアニメの同人誌および関連グッズの製作を手がける印刷会社。2012年、同人誌の委託販売書店兼漫画喫茶という業態で創業し、2016年にPOD・無線綴じ製本ラインを導入して以降、着々と設備を拡充しながら、印刷・製本加工を主体とする現在の業態へとシフトしてきた。顧客の9割近くが個人顧客となり、受注はすべて『OTACLUB』というWebサイト経由でオーダーを受けているため、同社は営業部門を設けていない。売上については、全体の約3分の2が、冊子や名刺、ポストカードなどの紙製品で、3分の1がノベルティグッズとなっている。
大阪印刷の強みの一つは、商品開発力。メインターゲット層のニーズを的確に捉え、社内でアイデアを出し合って独自の商品を生み出していく。そのラインアップは、冊子からクリアファイル、シール・ステッカー、カレンダー、アクリルグッズ、缶バッジ、パッケージ、ステーショナリー、バッグ、食器類まで、多岐にわたる。
「印刷用の商材を購入し、それに印刷してお渡しするという形ではなく、もっと広い視野で商品づくりに取り組んでいます。ありものの商材に印刷するのであれば、どの印刷会社でもできると思いますが、当社は一からモノを創り出すことにこだわっており、お客さまにはその点でご支持いただいているのではないかと思っています」(緒方氏)
もう一つの強みは、小ロット・多品種に柔軟に対応できる機動力。デジタル印刷機や各種加工設備を充実させ、外注に出さず内製にこだわることで、高品質・短納期での商品提供を実現している。
「小ロットで高品質なものを安く・速く提供できる体制を確立することで、同人誌やグッズづくりにチャレンジする方の登竜門的な存在になりたいと思っています。初めて印刷を頼もうというお客さまにとって、その第一歩が大阪印刷になるように。そのために“少ない数で、きれいに安くつくる”ということに、熱意をもって取り組んでいます」(緒方氏)
200種以上のアクリル板に、いかに効率よく面付けするか
日々入ってくる膨大な種類・件数の小ロットのオーダーに、効率よく、間違いなく対応するため、同社は工程の自動化にも力を入れている。とくに重点的に進めているのが、入稿から製造(印刷・加工)までの上流工程の自動化だ。たとえば、入稿データのファイル名や解像度などをチェックし、自動で修正・警告を行なう仕組みを、社内で独自に開発。発注者とのやり取りを極力減らすとともに、データ作成ミスによって“意図しない仕上がり”になってしまうことを防いでいる。
「注文件数は、多いときで月に1万8,000件ほど。1日約600件。これだけのオーダーに対し、入稿データのチェックは基本的に1人で行なっています。また、ファイル名などの大枠のチェックを終えてから、白版やモアレなどの詳細なデータチェックを行なう工程があり、その部隊が6名。1人あたり60件から100件ほどのペースになります。自動化の仕組みがなければ、この量をこなすことはできません。多くの商品を安く短納期で提供するには、自動化が必須になるわけです」(緒方氏)
今回、tilia phoenixを導入したのも、こうした自動化の取り組みの一環だ。面付け工程も、人の判断を必要とし、作業負荷が大きくミスも起こりやすかった。
「面付けの自動化については、冊子類のフローを先行して、別のツールを使って進めていました。紙製品は面付けがパターン化しやすく、効果をすぐに実感できると考えたからです。実際、明確な効果が得られたため、次のステップとして、ノベルティグッズの面付け自動化に着手したわけです。そのためのツールとして着目したのがtilia phoenixでした」(緒方氏)
ノベルティグッズの中で、まず自動化対象として考えたのが、アクリルキーホルダー、アクリルスタンドなどのアクリル商品だ。月に1,500件ほど、個数にして約8万個のオーダーが入る。ほとんどが小ロットで、納期(発送希望日)も発注者によってまちまち。冊子のような定型物とは違い、サイズや形状もさまざまだ。しかも、使用するアクリル板には、なんと200種類以上ものカラーバリエーションがある。これは発注側にとっては大きな魅力だが、製作側においては、多種多様なオーダーをいかに効率よく仕分け、面付けするかが大きな課題となる。
「小ロットのものが多いので、1枚のアクリル板に複数のオーダーを付け合せて印刷することになります。膨大な種類のアクリル板に、納期別に付け合せていかなければならないので、そのグルーピングが大変でした。板の種類ごとにクリアファイルを用意して、そこに紙の発注書を入れていき、その中で納期の近いオーダーを組み合わせる…といったやり方をしていたのですが、慣れるまでは付け合わせの判断にすごく時間がかかっていました」(長江氏)
■「人の判断」を自動化したことで、1日にこなせる件数が数倍に
そんな面付け作業を自動化するツールとして、同社は2つの製品を検討。最終的にtilia phoenixを選んだ理由について、緒方氏はこう語る。
「このようなツールを自社のフローに組み込んで運用するには、細かいカスタマイズが必要になるので、社員が自分たちで勉強し、楽しみながら構築していけるものが望ましいと考えています。その点、tilia phoenixは、他のシステムとの連携なども含めた自由度が高く、そこが魅力的でした。もう一つのツールは、金額的に合わなかったということもありますが、カスタマイズをベンダー側に任せることになる点が、当社にはマッチしなかったのです」(緒方氏)
大阪印刷には、システム開発を手がけるSEが在籍しており、さまざまな自動化システムを自社で構築している。長江氏もそのメンバーの一人だ。tilia phoenix導入に際しては、すでに運用していたRPAツールと連携させ、自動で最適な面付けを行なうフローを、自らの手でつくり上げた。
「基幹システムから書き出された受注情報と面付け条件が書かれたCSV、そして入稿された印刷用データを、特定のフォルダに入れるだけで、アクリル板の種類や納期を考慮した最も効率的な面付け結果が得られるようになりました」(長江氏)
SEの視点から見たtilia phoenixについて、長江氏は「概要を一度理解してしまえば、非常に使いやすいツール」と評価する。実際、同社では、FFGSから半日間のトレーニングを1回受けただけでtilia phoenixを使いこなし、短期間のうちに自動化フローを組み上げてしまった。
これにより、面付け担当者の負荷が大幅に軽減されただけでなく、生産効率が格段に向上したことは言うまでもない。
「カラーアクリルの商品に関しては、以前は1日に10件ほどしか処理できませんでしたが、tilia phoenixでは何十件もまとめて処理できるようになっています。私自身、手動での面付けを経験しているので、自動化の効果の大きさは身をもって実感しています」(長江氏)
また、tilia phoenixによる自動化は、人的ミスの削減にも寄与しているという。
「カラーアクリル板には似たような色名があり、発注書を人の目で確認していたときには、指定されたカラーを見間違えるなどのミスが起きていましたが、自動化によりそのリスクがなくなりました。これは、アクリルの廃棄率の低減にもつながっています」(緒方氏)
魅力的な商品を、フットワークよく提供し続けるために
緒方氏は、「tilia phoenixの活用範囲はもっと広げていける」と手応えを感じている。
「アクリル商品の他にも、紙コースターやダイカットシールなどにも活用を始めていますし、今後、缶バッジの面付けもtilia phoenixで自動化したいと考えています。面付けからプリント、カットまで自動化し、生産能力をさらに高めていく計画です」
小ロットに特化し、品質とスピードにこだわり、魅力的な商品を次々と生み出し続ける大阪印刷。現時点でも圧倒的なバリエーションを誇る商品ラインアップは、今後もまだまだ拡充していくという。工程の自動化は、そのための重要な基盤づくりなのだ。
「小ロットの商品を求められるお客さまに対して、フットワークよく高品質な商品を提供できることが当社の最大の強みだと思っています。この強みをさらに伸ばしていくために、もっと改善したいところもありますし、システムを一から組み直したいところもある。自動化の取り組みはこれからも続けていくことになると思います」(緒方氏)
■お客さまプロフィール
大阪印刷株式会社
所在地:〒554-0052大阪府大阪市此花区常吉1-1-60テクノパーク常吉8号地
URL :https://otaclub.jp/
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