大平印刷株式会社様
意匠性・機能性・情緒性に優れた友禅印刷で、
残したくなる印刷物を実現
オンリーワンの印刷技術で激しい価格競争からの脱却を目指す

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大平印刷株式会社様事例紹介_MV

写真左 代表取締役 水野整 氏
写真右 執行役員 ハイブリッド営業本部長 杉本豊明氏


印刷の価値を追求する企業事例

執行役員 ハイブリッド営業本部長 杉本豊明氏
杉本豊明氏

外観

大平印刷株式会社(本社:京都府京都市伏見区舞台町1番地、代表取締役社長:水野 整氏)は宝ホールディングスを親会社とする、宝酒造、タカラバイオを中心とした宝グループの一員の商業印刷会社である。激しい価格競争からの脱却を目指し、オンリーワンの印刷技術である「友禅印刷」を独自に開発。意匠性・機能性・情緒性に優れた友禅印刷で、捨てられない印刷物・残したくなる印刷物を実現した。友禅印刷の意匠性・機能性・情緒性とは何か。いかにしてそうした特徴を増やしていったか。実際、どのような案件で友禅印刷が採用されたのか。執行役員ハイブリッド営業本部長の杉本豊明氏に、友禅印刷を開発した背景や経緯、その魅力・特徴、実際の採用事例などについて伺った。

■激しい価格競争からの脱却を目指し、オンリーワンの印刷技術を開発

大平印刷株式会社は、1907年にお酒のラベル専門の印刷会社として創業、1957年(昭和32年)に宝酒造の資本が入って大平印刷と社名変更した。現在は、宝ホールディングスを親会社とする、宝グループの一員である。宝グループでは、お酒の箱や贈答用・段ボール箱などのパッケージや広報宣伝用印刷物など、ラベル以外の仕事を順調に広げていく一方、大手アパレルメーカーなど、グループ以外の顧客との取引も増やしていった。

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また、デジタル化への取り組みも早くからスタートしており、印刷以外のビジネスにも早くから積極的に展開、コロナ禍を背景に動画制作やドローン撮影、Webサイト構築などの比率が急速に高まっている。「宝グループや大手メーカーと仕事をしていく中で、お客さまの課題を解決するためには印刷物だけにこだわらず、最適な方法を考えて提案していかないといけないと感じていました。でも新たなビジネスのために人を割くのは難しい。そこでスチルのカメラマンに動画やドローン撮影を、グラフィックデザイナーに映像編集をと、技術の幅を広げてもらい、新たなビジネスでも高い利益率を確保できる体制を作りました。」(杉本役員) 今では“ハイブリッド営業本部”というデジタルと印刷、両方のコミュニケーションツールを提案・制作できる部隊を確立し、顧客の課題を解決するパートナーとしての地位を確立してきている。そんな同社が印刷の新たな手法である『友禅印刷』に取り組んだ経緯はどのようなことだったのだろうか。「10年ほど前からネット印刷が台頭してきて価格では勝負できない厳しい状況になりました。そこで私たちは、ネット印刷では聞かれない、例えば何のために使うのか、どこで誰に配るのかなどをお客さまから聞き出し、本当に必要な印刷とは何か、どうしたら本当に必要な印刷物を作り出せるかを考えるようになりました」(杉本役員)

2011年、同社は“設備に頼らないオンリーワンの印刷技術を開発する”という難解なミッションを、印刷技術に詳しい2名の社員に託した。こうして新たに設置された2名の印刷技術開発部では、材料に色を付けるのがプリントだと考え、染め物など、従来の印刷ではない技術をリストアップして調査するところから始めた。様々な技術を検討した結果、「友禅染の技術を活かし、布を紙に変えて印刷する」という方向性が決まった。そして京友禅染の職人から基礎を学び、友禅糊に粉末にした原料を混ぜ合わせる実験を繰り返し、2013年、友禅印刷用の新たなインキを作るオンリーワンの技術を確立した。


■「意匠性」「機能性」「情緒性」3つの特長を持つ友禅印刷

友禅印刷は、友禅染に使用する糊(バインダー)に、粉状に加工したさまざまな材料を混ぜてインキ化し、スクリーン印刷機で印刷、乾燥させて材料を定着させるという技術。友禅糊が、「粉末を用紙にしっかり定着させる」「乾燥すると透明になるため色表現を邪魔しない」といった特徴を持つため、友禅印刷したものを更に印刷機に通すことができ、フルカラーでの追い刷りも可能。大平印刷では、友禅印刷を「意匠性」「機能性」「情緒性」という3つの特徴で説明している。

「意匠性」「機能性」「情緒性」3つの特長

さて、この新たに開発された友禅印刷を、どのように提案し、広めていったのだろうか。「当時、私を含む営業数名も参加してプロジェクトチームを作り、友禅印刷を使った商材開発や顧客への提案方法についての検討を開始しました。はじめにわかっていたのは、「意匠性」の部分でしたので、この独特の金銀を使って、最初は酒ラベルへの展開を進めました。金はお酒のラベルにたくさん使われていますが、箔メーカーさんやインキメーカーさんから提供されている金の種類は限られていますので、友禅印刷ならではのギラギラの金は非常に喜んでいただけました」(杉本役員)。その後は、金グリッター仕様や発泡仕様など、さまざまな意匠性を活かしてノベルティーやDMなど企業の販促用に活用される事例が増えているという。


■香りや抗菌効果など「機能」を持たせることで新たな販路を開拓

「意匠性」の高さを活かした商材を開発・提案する中、同社はつぎつぎ身近な“粉”を使って新たなインキの開発に挑戦、見た目の美しさや奇抜さだけでなく、友禅印刷では、香りや抗菌といった、インキに混ぜる素材の機能をそのまま維持することが可能だということを発見した。「市販の抹茶を使って友禅印刷のサンプルを作成してみました。抹茶を使ったのは、完全に思いつきでした(笑)」(杉本役員)。しかし、そのサンプルからは本当に自然な、誰もが抹茶の香りだと分かる豊かな香りがし、また抗菌効果も確認できたという。「お茶に抗菌作用があることは知っていましたが、他の素材、お香や炭などでも有効性を確認できましたので、友禅印刷にはこれらの「機能性」があるということがわかりました。どんなお客さまにこの機能を活かしていただけるかを考えて、具体的にどこでどのように使われるものかという印刷物イメージも含めてご提案していきました」(杉本役員)

制作物

これら、意匠性や機能性を持たせた友禅印刷はノベルティやDMなどでのニーズが多く、例えば百貨店では、イベントで配布するコースターやシークレットセールのDMなどで採用された。紅茶メーカーでは、期間限定商品の紅茶の茶葉を友禅印刷したしおりを製作した。大平印刷は、自社の印刷物にも友禅印刷を活用している。2021年の自社年賀状では、意匠性と機能性を併せ持つ「香金(こうきん)印刷」をアピールした。コロナ禍で抗菌対応が進む中、「菌の増殖を防ぐだけでなくて、今は香りで心を休める方が大事なのではないかというところから、香金(香り+金)印刷された年賀状を企画・作成しました」(杉本役員)。同社では、香金印刷された名刺サイズの疫病退散カードも作成・配布している。


■歴史や伝統、文化という情緒性・ストーリー性を付加

意匠性や機能性を持たない粉末を使った友禅印刷の研究から生まれたのが、「情緒性」であった。「香炉に残ったお線香の灰、これも粉末だからインキにできるなと考え試作してみました。こういった、人の思いの通ったもの、でも最後は廃棄するしかないものなんですが、こういうものを何かの形で残したいと思う方はいるのではないかと考えました」(杉本役員)ここから情緒性という発想が生まれたのだという。また、サステナビリティへの注目が高まる中、灰のように通常廃棄されるものをアップサイクルする取り組みも、顧客の企業価値・ブランド力向上に貢献する。同社は、印刷物に情緒性や意味、ストーリー性を持たせることを考え、顧客への提案を進めていった。

杉森常務2

情緒性の高さを活かした友禅印刷物のひとつに「下鴨神社のカレンダー」がある。これは、京都三大祭りのひとつである葵祭で使われた葵の葉で作ったインキで印刷されたカレンダーである。葵祭で使用された葵の葉は終了後に全量廃棄されていたが、大平印刷はその一部を回収し、カレンダーの印刷に使用した。なお、1400年を超える歴史を持つ神事で実際に使われた葵の葉が入ったこのカレンダーは、下鴨神社に寄付をされた方々への返礼品として使われている。

また、黒谷和紙協同組合(京都府・綾部市)の「楮(こうぞ)カレンダー」は、綾部市で生産された楮の皮を使った黒谷和紙に、楮の芯の部分を炭にしてから粉砕し、それを友禅糊に混ぜて作ったインキで印刷されている。文字や周囲の模様など、黒い部分はこのインキ化された「楮の芯の炭」で印刷されている。これまで、和紙作りに使われない楮の芯の部分は全量廃棄されていた。大平印刷はその一部を炭にした上でインキとしてアップサイクルして、カレンダーを印刷した。このインキは「炭を使っているおかげで、本当に黒々と刷れています。オフセットインキではこういう色にはなりません」(杉本役員)このカレンダーが評価されて、綾部市立小中学校の卒業証書は「楮で作った黒谷和紙に楮ので作ったインキで印刷する」手法で制作されている。

■優れた意匠性・機能性・情緒性を持つ友禅印刷で“残したくなる印刷物”を実現

杉森常務3

大平印刷では、さらに新しい情緒性・ストーリー性の開拓も進めている。例えば、「健康」を軸とした情緒性・ストーリー性の開拓である。同社は、大手製薬会社から健康食品の原料となっている“ガゴメ昆布の粉末”を使った友禅印刷のノベルティーの仕事を受注した。希少価値のある原料で製造されるこの健康食品の愛好者にとっては、このノベルティーは特別な意味・価値を持つ。

もう一つは「サステナビリティ」を軸とした情緒性・ストーリー性の開拓。大平印刷の2023年の自社年賀状は、エシカル・スピリッツ社(東京都台東区)社から貰い受けた、廃棄予定のハーブで作ったインキで友禅印刷された。年賀状の表面に見られる黒い粒々が、そのハーブの粉末だという。エシカル・スピリッツは、回収した廃棄予定の古い日本酒やビール、酒粕などからアルコール分を抽出して蒸留酒(クラフトジン)を製造している会社である。年賀状で使用したハーブは、クラフトジンの香り付けとして使われたもので、通常は廃棄されている。その取り組みに共感した大平印刷は、廃棄予定のハーブを貰い受けて年賀状にアップサイクルした。
このように大平印刷は、捨てられない印刷物・残したくなる印刷物づくりに注力している。ごみを減らすことで社会のサステナビリティ向上に貢献でき、同時に印刷物の付加価値を高めることもできるからである。そして、意匠性・機能性・情緒性に優れた友禅印刷は、残したくなる印刷物を実現している。
杉本役員は最後に、「一過性の情報提供のための印刷物と、“残したくなる印刷物”があると思います。写真集や図録などが後者に当てはまると思うのですが、私は全く別ジャンルでも“残したくなる印刷物”を作ることが可能だと考えています。この友禅印刷でその可能性を追求していきたい。印刷の魅力、可能性はまだまだあると感じています」と語った。友禅印刷そして大平印刷のさらなる発展に期待したい。


■お客様プロフィール
大平印刷株式会社
住所:京都府京都市伏見区舞台町1番地
URL:https://www.taihei.co.jp

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