経営セミナー講師に聞く
「我が社の成長戦略ストーリー」Vol.1

必勝M&A戦略による服部プロセス成長の方程式
服部プロセス株式会社 代表取締役 服部晴明氏
第4回:「MISによる見える化」で高生産性・高利益率を維持する経営

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第4回経営セミナー講師に聞く

シリーズで掲載を行なっている「経営セミナー講師に聞く『我が社の成長戦略ストーリー』Vol.1」の第4回目も、服部プロセス株式会社の代表取締役・服部晴明氏(写真右)、服部社長と共に同社の様々な改革に取り組んでこられた制作工務部課長の羽田成樹氏(写真左)のお二人に話を伺いました。今回は、M&Aで服部プロセスグループとなった会社の生産性向上、そして高収益化を支える中心的な『インフラ』である自社開発の『MIS』について詳細にお話しいただきます。聞き手は富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ株式会社 営業本部 部長・中林鉄治です。

服部社長と羽田課長

100%満足できるMISを自社で開発・運用

中林 前回は服部プロセスグループ様の特徴である「効率化と見える化」を支え、またM&Aで新たにグループに入った企業の短期間での生産性向上と収益改善を実現する『インフラ』についての考え方や重要性についてお話しいただきました。今回は、そのインフラの中でも特に重要な役割を果たしている『MIS』について、詳しくお伺いしていきます。
 多くの印刷会社では、ジョブ単位の売上や付加価値(限界利益)は見ていても、個々の詳細な原価や利益までは厳密には把握できていないように見受けられます。それは、印刷物の製造工程における所要時間がジョブ毎に大きく変動すると共に、工程毎にそのジョブを製造するのに要した時間を正確に把握、管理する仕組みが構築されていないことに起因しています。
 それに対して服部プロセスでは、自社開発の『MIS』をグループ全体で活用することで制作、印刷、後加工など各工程の作業時間を計測して、そのジョブの製造に要した工程毎の原価を算出しています。つまり、人件費や減価償却費などの固定費を変動費化して管理することにより、ジョブごとの損益を把握しています。御社が『MIS』を自社で開発したのはいつ頃だったのでしょうか?

服部社長 製版の仕事が中心だった20数年前ですね。最初は、レタッチの時間を管理するために、確か3ヶ月くらいで開発したと思います。その後、会社としてDTPに取り組んだり印刷も始めたりする中で、機能をどんどん追加して、時間や損益の「見える化」ができるようにしました。現在も、ほぼ毎日進化しているんですよ。M&Aで新しい会社が入れば進化しますし、新しい課題が出てきたらそれにも対応しますから。継ぎ足しではありますが、その時々においては100%満足できるものができています。
 重要なことは自社開発しているという点です。自社にMISを開発できるSEがいるというのは本当に大きい。0か100かくらい違います。要は、カスタマイズできるかどうかなんです。カスタマイズができなかったら、最終的に満足できるものになりません。100%満足できるものは、日々使って、改良していかないと絶対にできません。使いやすいようにカスタマイズしながら100%に持っていく。そのためには、やはり開発スタッフが社内にいることが不可欠です。社内にいることで開発費用を気にすることなく、様々な要求をどんどん出すことができますから。

中林 MISの機能への改善の要求・要望は、社員の皆様から上がってくるのでしょうか?

服部社長 そうですね、社員から出てきます。

羽田課長 たまに、社長室の方から天の声が舞い降りたりもします(笑)。

中林 MISを自社で開発して、運用していく中で意識してきたこと、重要視していることがありましたら教えてください。

服部社長 当社のMISは、既存のデータベースソフトがベースになっています。このソフトは本当に良くできているのですが、市販のソフトなので妥協が必要な点も多々あります。私達は「足りない機能は運用でうまくカバーする」、という考えなので、SEも作りやすいと思います。こちらも「このソフトで出来る事・出来ない事」が大体分かっていますし。
 印刷会社さんの中には、MISを発注するにあたり、システム開発会社さんに無茶なことを言っているところが少なくないように思います。

制作部門でのMIS利用状況

制作部門でのMIS利用状況

自社に合ったカスタマイズの要件定義を行う中で、「明らかにお金かかる要求」と「簡単にできる要求」を分けずに、どんどん依頼をするので、とても高額なシステムになることが多い。当社ではMISをカスタマイズしたい時に、私が必ずSEに確認するのは「工数をかけずに簡単にできるかどうか」です。

中林 確かに、MISを検討、導入される多くの企業では、かなりのカスマイズ費用がかかったと言う話をよくお聞きしますし、自社に必要な機能や要求を上げることはしても、画面のデザインや配置、操作性にまで落とし込み切れないことも多く、使いにくくなってしまうことも多いようです。ソフトウェア開発における要件定義の難しいところですね。

服部社長 最初に細かいことを言い出したら非常に大変だと思います。まずは「使い勝手が良ければOK」というところから始めることが大切です。

営業が使いやすい画面デザインで、MISへの入力を促進

中林 MISをきちんと活用するためには、必要な情報を全て漏れなく入力することが大切だと思います。営業さんがMISへの入力をきちんと行うようにするために、どんな工夫をされているのでしょうか。

服部社長 当社のMISは、入力画面を作業伝票の形式にすることで、営業が使い易いものにしています。お得意先様、品名、大きさ、納期、数量など、印刷営業の経験があれば、誰でも短時間に入力できる画面デザインになっています。外注先や紙の仕入値などを入力する項目もあります。

作業伝票

自社開発MIS 作業伝票入力

 全ての伝票には、それぞれユニークな6桁の伝票番号が割り当てられています。この伝票番号も含めてデータベース化されるので、伝票番号からジョブを簡単に見つけることができます。
 見積書を作業伝票の前に作成する場合もあります。見積書も多少形式は違っても入力する情報は同じです。そのため、見積書を作成した後は、ボタンひとつで、自動的にMISのデータが生成できるようになっています。こういったシンプルなところも当社MISの特徴だと思っています。

中林 営業さんはかなり早い段階で、全項目の入力を完了する必要があるのでしょうか。

服部社長 「印刷枚数や納期が決まるのは最後」という仕事もよくありますので、途中で入力したり更新したりもできるようになっています。通し枚数が見積もりの段階では1万枚だったのが8,000枚に変わったりした場合には、決まり次第変更します。実際、どんどん更新されています。

中林 もし、失注した場合、その作業伝票や入力した情報はどうするのでしょうか?

服部社長 その作業伝票に割り当てられた受注番号を、そのまま「空き番号」にしています。この「空き番号OK」というのはとても大きなポイントです。「空き番号がダメ」となったら、なかなか入力してもらえませんから。このルールのお陰で、営業に入力を習慣付けることができました。
 また、受注番号はグループ全体で(「空き番号」も含めて)連番になっています。受注番号はあくまでも受注番号でしかありません。各社は自社分をデータベース内で検索できますから。要は、納品書と請求書の発行漏れさえなければいい。こうした「空き番号OK」は、データベースだからできることです。普通の紙の伝票を切っていたらできません。

中林 なるほど、その受注番号の仕事は実際には存在しない、ということは特に問題にはなりませんからね。御社のMISは、経理のシステムともつながっているのでしょうか。

服部社長 はい、MISに入力されているデータが、そのまま納品書や請求書の発行にも使われます。経理と共有するMIS情報には、外注先へお支払いする金額なども含まれます。MIS情報を組み合わせることで経理上の指標、管理会計ではなくて財務会計の数字も自動的に計算されます。こうした指標は、営業会議資料などにも使われます。
 ところで、市販のMISを採用される場合、MISの入口(入力画面)をカスタマイズして、失敗する印刷会社様が多いように感じます。入口をカスタマイズしてしまうと、MIS全体をチェックして、ソフトウェアを変更しないといけなくなるので、開発費用もかかるし、後々とても難しくなるんです。これを理解されていない方が多いように思います。
 当社は入口はとてもシンプルにしています。もともと使っていた作業伝票の形式ですから。社員には「これに自分達の体を合わせろ」と言っています。出口=アウトプットは計算の仕方と表示を変えるだけなので、入力画面、入力項目さえ統一されていたら、どんな形にでも簡単にデータの加工ができるんですよ。10年後も当社の入力画面はほとんど変わっていないと思います。入力画面をシンプルにすることはとても大事だと思います。

自社開発MIS 個別ジョブ売上情報

自社開発MIS 個別ジョブ売上情報

MISでジョブごとの制作コストをリアルタイムに「見える化」

中林 営業さんが全ての確定受注情報をMISに入力し終わる前に、制作に必要な情報が揃うケースもあると思います。その場合、制作は早い段階から作業をスタートされるのでしょうか。

羽田課長 はい、開始します。印刷納期が決まっていなくても、制作納期が決まっていたら伝票を発行できます。伝票が発行されたら、制作はそれを受けて作業を開始します。
あと当社の運用では、その際、その伝票番号がXMFのジョブ管理IDになります。サーバーにある制作データのフォルダー名なども全て伝票番号です。伝票番号はユニークなので、伝票番号を統一して使うことで、間違えにくくなりますし、また検索し易くなります。

中林 次に見える化についてお聞きします。御社のMISには、ジョブ単位の制作作業時間や制作コストを管理できる「仕事メーター」というのが付いているとお伺いしています。

羽田課長 はい。「仕事メーター」は、あるジョブに掛かった制作の作業時間を計測して「見える化」する機能です。当社では制作の時間単価を4,000円に設定しているのですが、計測された作業時間に、この時間単価を掛けることで、ジョブの制作コストも「見える化」できます。例えば、制作に10時間掛かったジョブの制作部門コストは40,000円です。
 この仕事メーターは、制作スタッフの仕事量の把握や作業時間の平準化にも活用しています。制作のリーダーは「仕事メーター」を見れば、誰がどんな作業を、どの位の時間でやっているかをリアルタイムに確認できるからです。

自社開発MIS 仕事メーター

自社開発MIS 仕事メーター

服部社長 制作部門はオペレータ一人ひとりの力量が分かっていれば「AさんからBさんに仕事を振り替える」という業務の組み替えが一番やり易いんですよ。それは、宮崎と神戸など場所が離れていても同じです。制作の仕事量はどうしても想定に対して凸凹が大きくなってしまうのですが、それをMISである程度埋めて平準化しています。

中林 実際の仕事量の凸凹は、どのように把握しているのでしょうか。

羽田課長 受注後、まず制作のリーダーが仕事内容から判断して、作業の「目標時間」を設定します。たとえば、目標時間が8時間の仕事を2人に4時間ずつ渡した場合には、それぞれの1日の作業時間8時間の中に、その4時間が反映されます。この目標時間もMISに入力されます。そうする事により、割り振られた業務の目標時間が多くなってしまうスタッフがいれば、事前に他のスタッフに業務を振り替えることができます。
それから、作業の進捗は「仕事メーター」でリアルタイムに把握できますので、同じように振り分けたつもりの仕事が、実際には1人の作業が遅れていると分かった時には、手伝いなどフォローに入ったりもします。もちろん、目標時間に対する達成度もMISで確認できますので、それらのデータをもとに、達成度を高める取り組みも行なっています。

中林 例えば、あるジョブの仕事を10人に割り振った時、全体(10人分)の合計作業時間や進捗状況はどのように把握されているのでしょうか。

羽田課長 そのジョブの受注番号のところに、10人分の時間が丸々足し算で入ってきます。作業の完了はMISでも分かりますが、当社では、XMF Remoteで制作データを見ています。当社は全ジョブ運用をしているので、制作作業が終わって校正に回す時には、XMFに上げて出力しますから。

中林 MISでジョブ毎の作業の進捗を把握しながら、実際の制作データの完成状況はXMF Remoteで確認する。XMF Remoteは制作の進捗管理でもお役に立っているのですね。これも見える化ですね。あと、ジョブごとの損益をリアルタイムに把握できる機能などもあるのでしょうか。

羽田課長 MISの「時間チェッカー」という機能を使えば、作業時間に時間コストを掛け合わせた社内コストをリアルタイムに把握できます。制作予算100万円のあるジョブのコストが、40万円まできているとか100万円を超えそうとか。時間チェッカーは、営業など制作以外のスタッフも見ることができます。

XMF Remote利用状況

制作部門でのXMF Remote利用状況
(全ジョブ運用)

自社開発MIS 制作時間チェッカー

自社開発MIS 制作時間チェッカー

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